第一章 第8話 荒野からの脱出③

 さて、交易都市の情報を得る事にしよう。




 「・・・交易都市に近づいて来たので、相談したいことがあるのです、よろしいでしょうか・・・?」




 「・・・実は、私達も【ヴァン】殿にお願いがあるのです、こちらからもお願いします・・・」


 


 【アンジー】殿からも相談事があるようなので、先ずはアンジー殿からの話しを聞こうと、促そうとすると、[ヘルメス]から警戒警報アラートが発せられた!




 (何事だ!)




 《警戒して下さい! 森林地帯でまばらに動いていた、馬に乗った一団が明らかにマスター達目指して移動して来ます。


 何かの意図が窺えますので、どうかお気を付けて下さい!》




 (・・・了解した・・・)




 そう脳内でやり取りをしていると、突然押し黙った自分に違和感を抱いたのだろう、アンジー殿が聞いて来る。




 「・・・ヴァン殿、どうかなさいましたか・・・?」




 「・・・はい、実はこの道具の機能で、何者かの一団が此処を目指してやって来るのが判明しました・・・、只、私には心当たりが無いので、もしかするとアンジー殿には心当たりが有るのでは? と思いまして」




 と尋ねると、アンジー殿はあからさまに顔色を青褪めさせて、警戒し始める。




 「・・・どうしてその様な事が判るのですか・・・?」




 と尋ねられたので、ポケットに入れていた通信機コミュニケーターを出して、説明した。




 「この道具は、ある程度の範囲且つある程度の集団であれば、警戒を発してくれるのですよ。


 但し、あくまでも此の場の様に、人の殆どいない場所でこそ反応しません。


 何故なら、人の多い場所では反応し過ぎてしまいますから」




 そう答えると、




 「・・・そんな【魔導具】が存在するのですね・・・、とすると迫ってくる一団は、私達のキャラバン隊を襲った野盗達か、ヴァン殿達を襲った盗賊達かも知れませんね・・・」




 「成る程・・・、その可能性もありますね・・・、それでは此の道具を使用しましょう」




 そう言って、俺は亜空間ゲートをかなり小さく開けてから、其処に手を突っ込んで折り畳まれた隠蔽(インビジブル)シートを取り出して見せた。




 「それはなんですか?」




 アンジー殿は、亜空間ゲートには違和感を持たず、かなり小さく折り畳まれた隠蔽(インビジブル)シートに疑問を持ったようだ。


 やはり、順次送られてくる此の惑星の情報通り、ある程度のポケットスペースを利用する文明が、魔法技術として存在するらしいので亜空間ゲートには違和感を持たず、この程度の亜空間利用ならば問題無いらしい。


 なので隠蔽(インビジブル)シートの説明をする事にした・・・


 


 「この道具は、隠蔽(インビジブル)シートと言いまして、姿と音を消す能力が有ります。


 此れを、我々の周囲10メートル範囲で囲み、相手から見つからずにして、様子を窺いましょう」




 「・・・それは凄い【魔導具】だ! ・・・そうですね、姿と音を消していれば、我々は見つからずに相手が何者か判別出来るでしょう・・・」




 相談し終えて、直ちに高さ3メートル・周囲10メートル範囲で、我々の周囲を隠蔽(インビジブル)シートで囲み、準備を終えて迫ってくる一団を待つ・・・。




 やがて見えて来た一団は、30名に及ぶ馬に乗った一団が、森林地帯の比較的に開けた場所から姿を現した。


 ただ、異様な事に2人の人間が縄で縛られていて、馬の後部座席に横倒しで載せられている。




 然も、我々の近くまで来たら、何故か周囲を縛られていない全員で警戒し始めた。




 (・・・? もしかして、この辺りに我々が存在している事が、把握されているのか?)




 理由は判らないが、明らかに我々が存在している事が把握されているし、一団の服装や装備を観察していると、過去の【アース】での資料にあった山賊や盗賊には思えない。




 (寧ろ、前期中世時代の騎士や軍人に見えるな・・・)




 そんな事を思いながら、アンジー殿を横目で窺うと、明らかに顔を青褪めさせて、手がブルブルと震えている。




 隠蔽インビジブルシートのお陰で、音は遮断されているのでアンジー殿に声を掛ける。




 「・・・どうされたんです? もしかするとアンジー殿のお知り合いですか?」




 「・・・いえ、そうでは無いのですが・・・」




 そう応じてくれたが、アンジー殿は今にも飛び出しそうな程に前のめりになっている。


 すると、馬に乗った一団の長と思われる人物が大声を上げた。




 「このあたりに潜伏しているのは解っているぞ、【紅の公女将軍】よ!」




 そう周囲に響く大声に、アンジー殿は唇を噛み締めている。


 その反応に、俺は色々と想定される自体に反応するべく、[ヘルメス]に命令し【隠蔽モード】で滞空させている降下艇に、バリア・バルーンを発射準備させておく。




 我々が出てこないので、馬に乗った一団の長と思われる人物は、縄で縛られている人物の首に剣をあてて、大声で呼びかけてくる。




 「【紅の公女将軍】よ! 出てこないのであれば、お前の部下である親衛隊の命は無いぞ!


 王国軍に投降するのであれば、全員の命は保証するが、隠れたままならばどうなるかは判るな!」




 そう言うと、長と思われる人物は徐ろに剣を振りかぶったのだ!




 「やめろーー!」




 そう叫ぶと、アンジー殿は隠蔽(インビジブル)シートを跳ね上げると、奴らの前に飛び出して行った。

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