第3話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜隣人 802号室 side〜



 最上階…

 ベランダに出て空を見上げる



 "高層マンションよりは低めだけど

 眺めは良いから

 物思いにふけたい時

 ちょうどいいかもよ!"


 じんが 言ってた



 早速 ふけてみる…


「ん〜( ̄-  ̄ ) …どうするかな〜」


 大方出来上がっていた曲を

 何度も流してみる



 ♪。.:*・゜♪。.:*・゜

 ⁡。・:*:・゚♪,。・:*:・゚

 .: ♬.*゚・:* ..: ♬.*゚・:* ..: ♬.*゚・:* .



 "もうちょっと…こう…アクセント的な…"


 偉そうに…何が、足りないって?


「文句言うなら 最初から俺に頼むなよ…」




 …カラカラカラ



 隣からベランダの窓を開ける音がした


 隔て板があるから 当たり前だけど

 どんな人かは わからない…



『そういえば、仁が言ってたなぁ…

 綺麗なお姉さんって…』



「ん〜〜!!…はぁ〜…」



 想像するに…

 伸びをして

 息を吐き出したんだろう…

 疲れてんのかな?


『お疲れ様です、お姉さん…』


 心の中で話しかけ 部屋に戻った



 。゜⋆。゜⋆



 何気なく

 冷蔵庫から飲み物を取り出し

 渇いた体内に水分を流し込む


 ……ゴクゴク…ッ…


 ん?



 ── 息を吐き出す ──



 ため息……



「・・・・あ〜っ!あの部分に・・・」


 急いでミキサーに向かい

 曲の中に音を入れてみる



 "はぁ〜"

 女性のため息



「おっとぉ?…キタんじゃない?これ!」


 ゚+。:.゚(º∀º )ファー.:。+゚



 人気の女性アイドルグループが

 歌う予定の"失恋ソング"…

 修正作業は、夜な夜な続いた




 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 〜803 side〜


 気怠い朝…


 アラームを止めて

 ムクっと起き上がると

 いつものルーティン…


 "ジジイ"モーニングコール



 *・゚・*:.。.*.。.:



「生きてる?」


 ──「おぅ!生ちてた!ボハハハ…

 今日も元気げんちに行ってこい」


「今日から 会議が続いて

 帰り遅いから 顔出せないけど

 何かあったら連絡ちょうだいね!

 じゃあ、行って来ます!」



 *・゚・*:.。.*.。.:



 会社に着くと まっすぐ会議室へ


 メンズ化粧品の新作企画

 今は、男性も お肌に気を使う時代



 企画開発課 マネージャーのしゅん

 率先してモニターを買って出た


「この化粧水と乳液、

 今日で2週間使ってるんだけど

 ハリが出てきたような…」


 頬をぷにぷにと指で押しながら

 話している



「緑茶成分か…それにヒアルロン酸と…

 コラーゲン…フムフム…無香料ね…」


 配合の割合等、パソコンで

 数字を見ながらうな


「ちょっと待って…」


 会議に参加してる さきっちょが

 俊に近づいた


 両手で俊の頬を挟んで…


「ん〜…使ってるのは 朝と寝る前?…」

 難しい顔をしながら、ぺたぺたと

 俊を触る


「そ、そうだけど…」

 俊の顔色が どんどん変わっていく




「・・・・・・」



 俊マネ…赤いぞ…(*°∀°)・∴ブハッ!!w



 さきっちょが俊の頬から手を離すと

 今度は俊を抱きしめて

 頬と頬を密着させた



 私は、飲んでたお茶を

 吹き出しそうになり

 むせ返る


「ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...」


「ちょっと!咲!…何してんだっ!」

 俊も慌てて さきっちょから離れた


 会議に参加してる他のメンバーも

 冷やかしの口笛を吹いたり

 ヤジを飛ばす中


「例えば…よ?

 一緒にいる彼女が

 毎日くっつきたくなるぐらいの

 お肌になるといいよねぇ〜」



【あぁ〜…】


 賛同の声が会議室に響いた


 "それなら…"

 手を挙げて言ってみる


「原材料そのままで…

 微香料にしてみる?

 彼女が、彼に近づいて

 スンスン嗅ぎたくなるような…」



【おぉ〜…】



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 まずは男性社員が普段愛用している

 香水やアロマ等

 調査開始…


 ウッド、シトラス、ムスク…

 スパイス系、ハーブ系、柑橘系…


 女性もまた

 香りの好みは 人それぞれで…



 香水やアロマの販売店にも

 足を運んだ



 色んな香りを嗅ぎすぎて

 酔った状態で帰路に着く


『うっ…気持ち悪い(||´Д`)』


 遅い時間の電車内は、

 疲れきったサラリーマンの

 汗の匂いも混ざって さらに具合が悪い


 最寄りの駅で降りて

 マンションに向かう


 人通りが少なくなったと思ったら

 後ろから足音が聞こえてきた



 ん?



 ずっと…



 いて…きてる?…



 少し足早に歩いて距離を…


『嫌〜!Σ( ̄□ ̄;

 後ろも歩くの早くなってんじゃん!』



 "どうしよう…部屋に行くより

 ジジイの所に避難する?"


 腕時計を覗く…


 いや、この時間は

 ジジイは すでに夢の中だ



『ついてこないどぇぇぇ!』


 護身術でも覚えておくんだったぁぁ!

 ≡┏( `Д´)┛



 誰だ?誰だ?

 誰でぃゃぉぅ…!!!??



 …てか、私を

 尾けてるって証拠もないか…

 考えすぎよね…ヽ(*´∀`)ノアハハハハ…


 でも…

 ついてくるのよ!


 急いで鍵を出して

 マンションのエントランスに入った


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

 こ──わ──い──

 ギャーギャー。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。


 エレベーターは、

 ちょうど1階にいた!!


 早く閉まれ閉まれ!


 エレベーターの中に入り

 "閉"を勢いよく連打…


 上へ参りま〜す!

 ε-ε=(ノo`・∀・)ノ イケイケゴーゴー!!!!


 8階…


「はぁ(。´-д-)…めっちゃ怖かっ…た…?」



 聞こえる 軽快な足音…


 か、階段で上がってきたっ!!!????

 まさか この階まで…


(((;°Д°;))))ギャーッ



 鍵、鍵?エントランスに入って…

 アレ?さっき…どこに入れたっけ?



 こ、こっちに来る…

 見ない見ない…:( ´◦ω◦`):


 あった、鍵っ!

 震えた手で鍵穴にっ…



「あのっ…」



「ぎゃ──────っっ!!!!!」



「あ、え?…大丈夫ですか?」


「…へっ?」


「隣に越してきた者です…」


「うわ…ぁぁ…

 な、なんだ…お隣さん…でしたか…」


 へなへな…と座り込んだ…



 そうだった…

 隣人の存在…忘れてたわ…


 恥ずかし…顔をあげられないわ


「ごめんなさい、

 驚かせちゃって…」


 と言って、

 スっと手を差し伸べてくれた


「こちらこそ ごめんなさいね…」


 手を借りて立ち上がり

 お隣さんの顔を見た




( ˙ㅿ˙ )…ん?


「……カマキリ?」


「はい?」



 ごついヘッドフォンに

 大きなグラサン…

 おまけに蛇腹の不織布マスク

 どう見ても、昆虫…

 …バッタと言った方が良かったか?


「カ、カマキリって…(´・ω・):;*。':;ブッ

 。゚(゚ノ∀`゚)゚。アヒャヒャ…腹痛いっ!」


 大笑いされた



「こ、こんな夜更けに

 そんな格好で外歩いて!

 逆に怪しまれないのが

 おかしいじゃないですかっ!

 暗いのに グラサンしながら歩いて

 足元見えるんですか?!?!

 …うぇぁ??」


「(ノ∀≦。)ノ…カマキリって…ククククククッ…ぶはっ!!!」


 語尾に、

 ちょっとジジイが入ってしまったが…

 大笑いされて、恥ずかしくて

 まくし立てた



「はぁ〜久しぶりに笑った!

 僕、ちょっと訳ありで

 顔を見せられないんですよ」




 顔を見せられない…って…( ˙꒳˙ )??!!



 何だか、とんでもない人が

 隣に引っ越してきたらしい…?!

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