第24話 紅魔の誓い



 順調にレベルを上げているアラシ達のパーティー


 今日も朝からモンスターを討伐に里の外れの森に行くつもりだったが……あいにく、その日は雨だった。


 今日はどうしようか?

 アラシがベッドの中で考えていると、ドアがノックされる。隣に裸で寝ているめぐみんを一瞥してから、廊下の向こうに答えた。


「おはよう、どうした?」


「あっ、アラシは起きてるようだね

 私は先に起きたから、 朝食の支度しようかと思ったんだけど……めぐみんはまだ寝てるのかな?」


 気配が無く、クリスの隠密スキルが働いたようだ。

 それに、アラシが答えようとしたら、何時の間にか下着を装備した、めぐみんが後ろに立っていた。


「無用ですよ !

 雨のため今日は森での訓練は中止にしますから

 支度したら、隣にいって御馳走になりましょう」


 結局、ゆっくり着替えてから爆裂娘と暗殺少女は、隣家の食堂で座って待っているのだが、さすがに手伝いもしないで食事ができるのをじっと待っているのは、クリスには居心地が悪かったようだ。


「ねえ、めぐみん !

 朝の挨拶もそこそこに、ご飯をたかるなんて、気不味いよ。」


「何を言うのですか?

 ウチの食卓には、こめっこ達も押し掛けるのです

 問題ありません !」


 朝食を、めぐみんの母である、ゆいゆいが並べ終えると各自席についた、そして 遅れていたアラシが姿を見せた。


「おはようごさいます

 ひょいざぶろうさん、勝手口に一撃グマを置いておいたんで後で解体してください 」


「いつもすまないね、ユウヤ君」


「お兄ちゃん、ウサギは?」


「今日は、ウサギを見つけられなくてな、偶然居たレッドボアで我慢してくれ」


 会話を聞いていたクリスは驚いてしまった。

 起きてから一時間ほどしか経過していないのに、この黒髪の少年は、狂暴な一撃熊とレッドブルを狩ってきているのだ、それも複数を。


「めぐみん、残りは時間がないから血抜きだけしてうちの地下にあるからな !

 食事の後に処理しよう」


「そうですね、どちらも食材に使用できますから !

 換金するのは、肉を取り除いてからにしましょうか」


「アラシさん、今日は一日里にいるのかしら?」


 ゆいゆいが問いかけるのを思案顔でアラシは答えた。


「そうですね……

 一度アクセルに行きますが、向こうも雨が降っていたら今日は、こちらで過ごそうかと思います」


「それなら、アーネスさんに会ってきたらどうかしら?

 なんでも、外から来た人から噂話を聞いたそうよ」


「分かりました」



 ◇◇◇◇


 朝食を済ませた後、三人で熊と猪の肉の処理を済ませて使える材料を換金したアラシは訪ねて来た、あるえ と ねりまきも加わって猫耳神社に来ていた。


「なぜ、こめっこも一緒なんですか?」


「ホーストと遊ぶ約束がある!」


 神社に近づくと何やら作業をしている巨大な翼を備えた悪魔に、こめっこが突進した。


「ホースト遊びに来たよ!」


「おう、こめっこ !いつもより早いじゃねえか?」


「今日は、姉ちゃん達も一緒。」


 言われて悪魔がこちらを見る。


「よう、小僧に姉に……

 こいつぁ、驚いた !

 小娘の中にいるのは随分とまぶしいな?」


 そう言ってホーストは、ニタニタと笑った


 不気味な笑みを浮かべたホーストに対してクリスは戦闘体制を取り、本来地上では長時間活動できないエリスも出現したが、片手を上げてアラシがそれを制した。

 指差したのは、ホーストが腕に巻いているブレスレッドだった。


「あれは、ホーストがこの紅魔の里の所属だと言うことが記してある。

 悪魔と言うのは、上級に成る程自身の行動理念と言うものが決まっているんだ。

 そして、ホーストとアーネスは、女神ウォルバクの配下で、ウォルバク先生がこの里で気楽に過ごしていることを喜んでいるんだ」


 アラシの発言を肯定するようにホーストは無防備に立っているだけで行動をおこさない。


 その脚から、ヨジヨジとこめっこが背中に登り、肩車されていた。いつの間にか、来ていたアーネスも面白いものを見るように口角を上げていた。


「別にあたしらは、飲み食いしなくとも行動できるけどね、ウォルバク様がここで生活されてるんだから、何もしないのも暇だからね」


 そう言うアーネスの腕にもホーストと同じブレスレッドを装着していた。


 前線でも一進一退だと言う話だよ。

 だとすれば、ベルゼルグの弱点を突こうとするのは考えられる話だよ」


「それは、食糧や資金面から、首を絞めていこうって話か?」


「どうやら、敵にも策士がいるようですね。

 どうするのですか、アラシ?」


「ベルゼルグがどうなろうとかまわない。

 けれどそれによって、この紅魔の里に不利益になるのは困るな」


「でも、エルロードやブライドルが墜ちればベルゼルグも戦えなくなるよ。

 経済面は、両国に頼ってるからね。

 ベルゼルグが滅びれば、ここも、孤立だよ」


 「なら、エルロードとブライドルを俺達で獲ろう。

 そして、アクセルまで繋げれば、ベルゼルグが滅びても俺達、紅魔族が戦える」


 宣言したアラシの目は深紅に輝いていた。

 そこには、アラシのパーティーの紅魔族の少女達、アサシンに女神、更には、悪魔二体、猫耳神社に集った面々の誓いは、かなり後まで秘密に成っていた。

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