第5話 解決話
皆様、"読者への挑戦"には挑戦されましたでしょうか?挑戦して、コメント欄にも書いて頂いた皆様、本当にありがとうございました。そして、いつものことながら、更新が遅くなってしまい、申し訳ございません。
今回は、解決話をお送りします。舞美の推理とは一体……?
福島警察署からほど少し歩いた先、幹線道路の下高架下にキープアウトのロープが張ってある区画があった。まだ、鑑識もまだ引き上げでないらしく、野次馬も多数いる。
「ここが現場です」
櫻井刑事が黄色いロープの前で止まる。という、見ればそうかな、って判るし。そんなどドヤ顔で言われても困るって……。
「はぁ、ここが現場なんですね!」
おや?胡桃はもしや知らんかったんか?
「私、初現場なんですよ。結構いいとこなんですね!」
と、胡桃は大きく息を吸う。いやそんな山奥に来て、「空気が美味しい!」みたいな感じで言うなよ。不謹慎やで。
っていうかここのどこがいいとこなんや?私は周りを見ながら思う。少し横を見ればホームレスの家("家"っていうのはおかしいか。家がないからホームレスな訳だから)があるし、頭上を車が通るから騒音も相当なものだろう。
まあ、そんなことはさておき、今は前嶋社長の容疑を晴らすのに集中しなくちゃ。さっき気になった何かが事件を解く鍵になりそうな気がするし……。
「現場にも入られますよね?鑑識さんからも許可が出ましたし」
と櫻井刑事。
「はい!もちろんお願いします!」
胡桃……、なぜお前が答える?確かに現場に入らせてもらう予定ではあったけれども……!
「じゃ、こっちに」
ほら、櫻井刑事も苦笑してるやん。てか何で胡桃はそんなに嬉しそうなの?
制服警官は私達がくぐりやすいようにロープを持ち上げでくれた。私達は警官じゃないから敬礼はいらなかったのに……。
地面の上にはチョークで書かれた人の跡があった。それと少しばかりの血の跡。確かに、この血の量じゃ遺体は移動させられたと考えるのが自然だわな。これ以外にも紫斑とか服の傷みとか見れば判るだろうが。
「あそこのホームレスさん達にも話は訊いたんですよね?」
胡桃……、やる気満々やな。
「ああ、でも何もいい情報は得れなかったよ」
「ああ!やっぱりそうですか……。でも、今回の事件って何か判りそんなんですよね。決め手が足りないっていうか、何ていうか……。普通に考えれば、角田さんとか怪しいんですけど……」
確かにそうだ。社長が犯人でないと仮定した場合、楠本課長の部下だった永井さんは鉄壁とも言えるアリバイがあるから普通に考えれば、角田が怪しい(自分で言っておきながら角田となぜ呼び捨て?!)。でも、金銭トラブルというのも眉唾もん。となると、もしかしたら最初から角田は疑われていなかったかもしれない訳で……。
いや、でも普通に考えてもいいんじゃないか?
その時、私は何か頭の中を一筋の光が通った様に感じた。見た目は子供、中身はおっさん……じゃなくて大人の某探偵漫画なら眼鏡が光っていたと思う。実際は私はコンタクトなのだけれども。
でも、そういうことだったのか。この事件は何も難しいことなかったのだ。
小一時間後、私達は角田さんの工場の前にいた。すいませ~ん、と胡桃がよく通る声で呼ぶと中から頭にタオルを巻いた一人の青年が出てきた。テロっと出た前髪が金髪だったことから、描いていた人物像が間違いでなかったと決めつける。
「ああ、朝の刑事さんと誰?」
「福谷法律事務所の浜元と……」
「中元です!」
胡桃はいつも元気がいい。
「あ、そう。で何の用?」
「すいません、少しお訊きしたいことがございまして」
「あなたは昨日の午後3時から5時、つまり、楠本さんの死亡推定時刻の間整備が終わった車を点検がてら走らしていたんですよね?」
「ああ、そうやけど?それがどうかした?その車は昨日の夜、届けに行ってもうないけどな。もともとはもっと先の予定やったのに、なんか近々車が入り用の用事があるから持ってこれるかって。素直に持って来いっていえばええのに!だから昨日は忙しいかったんや!ああ、今日も忙しいんやけどな。定期的にあんたらが邪魔するし。あの客、ホンマに苛つく!」
「後半部分はさておき……」
「気持ちは判りますけどね」
胡桃、邪魔はするな。
「午後3時から5時の間あなたは大川沿いに車を走らしていた。間違い無いですね?」
「ああ、もう何回言わせるんや?」
「じゃあ……」
「犯人はお前だな角田!!」
っとお~い、急に何か横から来たし。胡桃、邪魔するな言うたやろ。いいとこだけ取っていきやがって。てかお前誰?
「ハ!何の冗談や、それ。忙しい言うたやろ、冗談言うてる時間ないんや!」
「え〜、話聞いてくださいよ〜」
いや、キャラの変わるスピードの早さよ。
「しゃ〜ないな、少しだけやで」
いや、ええんかよ!そこで私は気付いた。男はやはり若くて可愛い女子の前ではだらしなくなる。私みたいなアラサーでは駄目だ。
「じゃ、先輩あとは宜しくお願いします。ペコリ」
匙投げ出す早さよ。そして、最後の"ペコリ"いらん!緊張感のなさ半端ないやん。
「何や、そっちのおばはんが話すんかいな」
何やと、角田。私を指さしておばはんやと!?お前と大して年齢変わらんやろが!!
と私は内心かなり怒る。自分では自覚していてもやはり他人に言われるというのは、気分が悪い。名誉毀損で訴えてやろうか。無駄だからしないが。
そんなことはおくびにも出さず、私は至って冷静に話し出す。
「なぜなら、あの日大川沿いは整備が終わった車を走らせるのには全く向いていなかったから」
「はあ?何を言ってるんや。ここからも近いし、あんなに向いたとこないやろが!」
とほざいているが、私は余裕をかました笑みを浮かべて言う。
「なぜなら、昨日大川沿いは人でいっぱいだったから。大川に流れ着いた"大ちゃん"を見ようとした野次馬によってあの狭い道路はいっぱいだった。だから、車をましてや整備が終わりたての車を走らせるなんて、出来たもんじゃなかった。人を轢いてしまうかもしれへんから。
しかし、こんな嘘、普通なら犯人でもつかへん。ついても、アリバイが証明される訳とちゃうから意味がない。でも、あなたは違った。そりゃなぜか。あなたは大川に"大ちゃん"がいるという情報を知り得なかった。なぜなら、昨日、今日とあなたは忙しく、テレビを見る暇もない。そして、なぜか今朝の朝刊は入っていなかった。だから、あなたは"大ちゃん"のことを知りたくても知れなかったのですよ。違いますか?」
「仮にそうだとして……、そうだとしてだ、俺がやったっていう証拠はないだろ!そうだろ!」
角田は辛うじて威勢を保とうとしていたが、かなりの焦燥が見られた。しかし、どこが勝ち誇ったような顔をしているのも見て、確信する。
「昨日、あなたが整備を終えたという車。それが証拠となるんじゃないですか?おそらく、それを使ってあなたは
この場合、自分の車など使う必要はない。もうすぐ自分の手元から離れる車があるんですから。」
そう言い終えて私は角田を見る。もう、言い逃れをしそうな雰囲気ではなかった。
「あの馬鹿が悪いんだ。俺の要求に従っておけばええのに、録音なんか姑息な真似で逆に脅そうとしてくるから……」
どうやら、こういうことらしい。金に困っていた角田は楠本課長の何かしらの秘密で強請っていた。だから、昨日昼の足取りが判らなかったんや。バレへんようにきたから。そして、角田の方は方で取引先の会社との打ち合わせの時間が変わって楠本課長を待たせるかもしれんかったから、急いで戻った。この辺は変に忠実に答えてたんやな。
しかし、逆に脅され、殺した。
ある意味、近所のおばちゃんが証言したという金銭トラブル説も間違いではなかったんやな。
「では、詳しい話は署の方で」
そう櫻井刑事が言い終えるが早いが、角田は胡桃を引き寄せてその首にナイフを当てた。
「ハ、素直にするわけ無いやろ!」
しまった。呑気に事件の整理なんてしてる暇なかった!もっと角田の動きを見てくべきだった。
「キャー、先輩、櫻井刑事助けて下さい!離して〜」
「暴れるな、自分から刺さりにいくことになってもええんか!」
ということは、角田は胡桃を今は殺す気はないのか……。
「おい、そこのバンドのボーカルみたいな刑事!まずはそこのおばはんの手首と足首をガムテで固定して手錠の片方を自分の片方の手に通して片方はパイプ管に通せ」
ほう、角田はサクライと音を聞けば四人組のあのバンドが出てくるのか……。
と呑気なことを考えている間も私の足は固定されてゆく。どうやら、このか弱そうな子犬系男子にはもう一人殺してる犯人に抗おうという気はないらしい。
ここまで、お読み下さり、ありがとうございます!とりあえず、読者への挑戦の答えは出た形です。すいません、下手な答えで。
そして、見事犯人を当てていたあなたは舞美よりも名弁護士です!
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