第56話 ブチ切れて組織を辞めるという事

 どうもツイッター監視員です。世間的には過去の話題となりつつありますが、吉本芸人がツイッターでブチ切れて解雇になった話をひとつ。

 その岩橋という人はちょっと前から業界の人間から暴行を受けたという事を実名暴露し始めて、一度は事務所の説得に応じて呟きを消去したものの、実名暴露が次々と止まらず事務所を解雇になった。というのがツイッターで観測できる全てです。私はこの人のことが気になってしょうがなかったんです。なぜなら昔の私の行動とそっくりだったから。

 私のことを話すと、働いている中で多少不愉快なことをされても言われてもそれなりに我慢はできます。でもそれが積もり積もって「自分は不当に扱われている」というのが核心に変わった時、ブチ切れます。そうなると誰の話も聞こえてきません。昔、契約社員として入社していずれは正社員にといわれて入社したのに、正社員になれた人は非正規で10年以上働いていた人だけだったいう事を知った時(つまりほぼいない)、本当にやる気がなくなりました。それでも数年真面目に働いてましたが、色々あってある日突然ブチ切れました。なにが切っ掛けだったのかはもう忘れましたが、結局のところ私の怒りの源は「このまま何年働いたって私の給料は300万を超えることはないんだろ!」でした。あと社内ヒエラルキーの最底辺にいたのはまあ仕方ない事とは思ってましたが、そこから這い上がりたいという気持ちをずっと鼻で笑われてたことも嫌でしたね。一言でいえば「なんでこんなに馬鹿にされなきゃいけないんだ」ってことです。

 話をプラス・マイナス岩橋という人に戻しましょう。この人は吉本所属の漫才師です。10年以上前の私の印象ではキワモノ芸人でした。正直面白いとは思わなかったです。なのでどんな活躍をしていたのか全然知らないのですが、2018 M-1敗者復活戦で久々に漫才を見たらとても面白かった。以前の面白い時は面白いけど、滑った時はなにもかも滅茶苦茶にして去っていくという不安定さは消え、安定した漫才でした。これって相当努力したんだと思うんですよね。ちなみに2018はプラスマイナスのラストイヤーでしたが、決勝に行ったのはミキでした。会場でうけてたのはプラマイの方だったのに投票はミキの方が多かった、面白さじゃなく人気がある方が勝ったんだと遺恨を残す結果となりました。とはいえこの件については岩橋は気にしてないんじゃないかと思います。なぜならこの年は仕上がりまくった和牛が準優勝だったので。私はこの時の和牛のゾンビのネタが大好きなんですよ。ちなみに優勝は霜降り明星でした。

 岩橋は自分が「強迫性障害」だという事を公表しています。もしそれがなければ、彼はただの明るくてガッツのあるお笑い大好き野郎なのかもしれません。ただいじられキャラなのは変わらなかったんじゃないかな・・・とも想像します。吉本で言えば「あほの坂田」「ジミー大西」「山崎方正」あたりの並びですよね。そしてこの三人の中でずっとやられキャラを受け止めて貫き通したのは「あほの坂田」だけだと思います。他の二人は画家になったり学生になって噺家になったりして芸人をしばらく退いたりしてます。なにが言いたいかというと、何十年も「いじり」という名の元にイジメに近いようなことをされ、芸人同士ならともかく本気で馬鹿にしてくるような人間に囲まれて人はどこまでまともでいられるかってことです。

 人間関係にマウンティングは付き物ですが、ずっと「お前は格下(だから何をしても良い)」という態度をとってくる人間が近くにいると病みます。だって相手は本気でこちらを傷つける権利があると思ってるんだから。その相手が複数になってくるとだんだん自分が間違っているような気もしてきます、つまりまともな判断ができなくなります。距離を取れとか自分を大事にしてくれる人を見つけろとか言われますが、それと怒りや恨みの感情はまったくの別と考える人もいます。私です。そして岩橋もたぶんそうです。そしてこれは特性だと思います。

 これは賭けてもいいですが、岩橋は数か月後か数年後か知りませんが必ず「漫才がしたい」と言いだします。何故なら彼は漫才が大好きだからです。そして相方はこれまで通り兼光を指名するはずです。彼は一方的にコンビを解消したようですが、相方は絶対に許してくれると思っています。なぜなら何十回も相方は自分の我儘を許してくれたからです。そうじゃないととっくの昔に解散してるでしょう。

 今回の件で岩橋に怒っている人は沢山いて、大体3パターンに別れる気がします。

 その一、岩橋に悪行を一方的に暴露された本人、その身内、ファン

 その二、岩橋のやり方はいい歳の社会人がやることではない。ルール違反と思う人

 その三、相方・兼光に対して思いやりがなさすぎると思う人

 私は正直③なんです。でも岩橋は兼光に対して思いやりはあると思います。なんなら一番信頼している相手かもしれません。本来は傷つけたくない相手だと思うんですが、ではなぜ20年連れ沿った相手を一方的に切り離したか。相手が困る事、怒る事、悲しむことはわかっていたはずです。そこには甘えはあってもマウンティングはありません。ただ単に岩橋の中では「それとこれとは別」だっただけです。

 これは病気なんですかね? 私も似たような思考回路を持っているのでよくわかりません。「こんな馬鹿にされた芸人人生は嫌だ」と「漫才を一生やりたい」が矛盾してることから目を反らしてキレて舞台を降りた筈です。癇癪を起して暴れる子供と同じです。誰も止められないし、疲れて眠るのを待つしかない。

 ただこの人の場合は沢山の人が復帰を呼び掛けてくれてるみたいだから大丈夫なんでしょうね。羨ましい。吉本に復帰は無理でもどうにかして芸人には戻るんでしょう。それが本人だけじゃなく周りも幸せになる道だと思う(色んな意味で)。

 それにしても組織の中に尊敬する先輩がいるっていいですよね。私が最後に人を尊敬したのっていつだろう。大昔に働いてた会社にはいたな。転勤でどっか行っちゃったけど。そうか、私のような人間が長く組織で働くには尊敬する上司に可愛がられる事が必須なのか。無理じゃね? 会える気がしないわ。悲しくなってきたので終わり。

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