喪失

@kana-hana-miya

第1話

新しい朝が来て

相変わらずな日々が始まるのに

私のそばに彼女だけが居ない

私よりずっと早い心音の

私の膝に収まるぬくもりの

彼女だけが居ない


昨日私の胸の上で

苦しそうな吐息を

それでも一生懸命に繰り返していた

私は何も出来ずに

ただそんな彼女を抱き締めていた


分かってたよ

私よりずっと早く逝くことを

知ってたよ

貴女が私を置いていくことを


なのに

今こんなにも哀しい

泣いても泣いても

涙が尽きない


掌に乗るほどの小さな体で

私の膝によじ登り

他の兄弟よりも

私を選べと主張した

私の愛しいお姫様


喪失感を抱き締めて

けれども生きていくために

私は通勤電車に揺られているのだ


今までありがとう

幸せだったよの言葉と

私を選んでくれてありがとう

って

貴女に囁きながら

貴女の呼吸が止まるのを

無力な私は

ただ見つめていた


当たり前すぎて

幸せだったことにも気付かなかった

バカな私は

真夜中の貴女のお腹がすいた

と起こされた時間に

同じように起きて

貴女が居ないことをまた思い出す


寂しいよ

哀しいよ

貴女が居ないことがこんなにも

苦しいよ

息ができないよ

貴女のだみ声が聞こえないだけで


小さな体で

全身で愛情を訴えていた

ただ甘えてそれを享受していた

愚かな私は

亡くしたものの大きさに

打ちのめされてる


それでも朝が来て

普通の生活が始まる

私にとっては

ひどい喪失感の朝なのに

貴女の居場所だったあの場所は

ぽっかりと空いたままなのに


愛されていた

貴女に

私は本当に愛されてたね


私の愛しいお姫様

貴女が居ないことが

本当に哀しい

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