すれ違い、濃恋来い。
雛奈.
第1話 僕には夢があった…
僕には夢があった...
小説家になるという夢...憧れの僕に希望をくれた小説のように
僕も誰かの希望になるような感動を与えられるそんな...
でも、僕には無理だった...
中学の頃、休みの時間は誰とも打ち解けずただひたすらに書いた...
小説があれば僕はそれでよかった...
付き合い悪いとかキモイとか暗いだとか そんなこと言われても...
だけどある時、僕は恋をしてしまった...
僕と同じで小説に没頭する同じクラスの女子に...
同じ匂いがした...彼女なら僕のことをわかってくれる気がしていた...
だから、勇気をだして声をかけた
「あの、小説...好きなの?」
彼女は驚いた顔でこちらを見ていた...はっとし微笑みかけ
「えぇ、好きよ...あなたも?」
その表情に僕は安堵し口を開く...
「うん、読むのも好きだけど 僕はどちらかと言えば書く方がね」
「すごい、物語を書けるのね 」
その言葉 声 表情に僕はより惹き込まれていった...
「これ、僕が書いたんだけど...よ、よかったら...」
気づけばそんなことを言って1冊のノートを差し出していた...
「いいの?」
僕はゆっくりと首を縦に振ると 彼女はそっとノートを開く...
彼女は瞳を輝かせノートを開いたが数ページめくったところで手が止まりそっとノートを閉じた...
「えっと...まだ続きがあるのだけれど...」
「つまらない...」
「え...」
僕は動揺が隠せなかった...いま、つまらないって言ったのか?
いや、そんなわけがない、僕の気の所為に決まっている。
「聞こえなかったかしら?つまらないって言ったのよ」
つまらない?いま、彼女はそう言ったのか?
「えっと...いま、つまらないって言ったのかな?」
「はぁ...まったく、正直に言わないとわからないみたいね...」
「えっと...その...」
彼女の表情が一変した、僕は言葉がつまった...何も言えなかった...
一言で言い表すならそう...鬼の形相...そのものだった。
「あなたの作品はつまらない...いいえ、作品と呼ぶのもおこがましいくらいね。書く方が好き?いい、寝言は寝て言うものよ」
僕は何も言い返せなかった...
一刻も早くこの場を離れたかった...これ以上はここにいてはいけない
そう言われているようだったから...
だけど、離れたくともそうさせてはくれなかった...
「ねぇ、あなた...」
「な、なんでしょうか...」
僕は立ち止まり、振り返らずに返事をする...
「あなた、夢とかあるのかしら?」
急な問にかけに言葉がつまる僕...
「ゆ、夢...ですか...」
「そうよ、夢よ あなたにだって夢くらいあるでしょ?あなたにだって…」
あるにはある…だけどこの人には言ってはいけない…そんな気がしていた…
心ではそう思っていた…だけど、この人に逆らうと何されるのかわからない…そんな恐怖に怯えていた…
「しょ…」
「しょ?」
うまく言葉にできない...口元が...いや、全身が震えこわばってしまっていた、だけど必死に、この人は本当はいい人で冗談であんなことを言ったんだと思って声にしようとした
「しょ、しょう...」
だけど、僕の思いは届かなかった...いや、はじめから届いていなかったのだろう...
「もしかして、あなた小説家になろうなんて思っているの?」
僕は必死に涙をこらえゆっくりと首を縦に振る...
「...」
彼女は何も言わず僕のノートを破いた...
ただひたすらに1枚...また1枚と破られていった...
僕は恐怖でなにも出来なかった...ただ、ただ破られていくノートを見ていることしかできなかった...
最後の1枚を破り終えた彼女は甲高くどこまでも響くような声で笑い
「さようなら、無価値で無様な小説もどきと君w」
そう言い放つと教室を出ていった...
それからというもの僕は学校に行くことができず...
とうとう卒業の日まで学校へは行かなかった、卒業式当日も保健室にいるだけだった...見たくも会いたくもなかった。
でも、今日でこの生活も終わりなんだ...
次からは誰も知る人のいない高校生活が始まる...
僕はこの時胸躍らせていた...高校こそは友達を...
いや、充実した高校生ライフを!!!
すれ違い、濃恋来い。 雛奈. @hinarita053
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