第48話 それぞれの日常。

 美琴の部屋。

 実に女の子らしいふわふわのぬいぐるみが沢山飾られている。

 その中の一つ、クマのぬいぐるみの綿を採取した後、白衣の恰好のままシリンダーに詰める。


『ご主人様、綿を何するクマ?』

「んー、成分を調べてるのよ。不死身の再生能力は、永遠の命に近いからね」

『ふうん、そうなんだクマ』

「そういえば、調伏ってされる前の記憶はあるの?」

『あるクマ。でも、生まれたときからあそこにいたクマ。今は解き放たれた気分クマね』

「……そうなんだね。ありがとうクマちゃん。随分と研究も捗ったわ。今日は一緒にお風呂入る?」

『入るクマー!』


  ◇


 風華の部屋。

 まるでデイトレーダーのような机と椅子。

 キーボートとマウスカチカチしながら、海外のオークションサイトを眺めていた。


「漆黒の黒いコート、二億円か……。でも、おそろそいもいいなあ。貯金を切り崩して落札しようかな……」


 ああでもない、こうでもないといいながら、残高を確認する。


「うーん、でも大勢で暮らすことも考えたら、使いたくないなあ。……みんな、いい人だもんなあ」


 ブラック、美琴、ローザ、ジョーヌの顔を浮かべながら、静かにサイトを閉じる。


「よしっ。今日も稼ぐぞ」


 配信ボタンを再生すると、満面の笑みを浮かべた。


「みんなの天使、風華でーす! 今日もスパチャよろしくねー!」


 ”いつもの挨拶キター”

 ”隠さないところ好きです”

 ”風華ちゃーん!”

 ”こんばんブラック!”


  ◇


 ローザの部屋。

 いたるところにアニメのポスターが張られている。


 パソコンは三台並んでおり、ゲーミングチェアの上で、アニメを鑑賞していた。


「ぬおおお、なるほど、こうなるのか!? ぬおおおおおおおお、激熱だああああああああ」


 興奮気味に声をあげ、涙を流し、怒り、そして静かに背中にもたれかかる。


「凄いのう。やはり、友情、努力、中二病じゃ……」


 しかしこれは――訓練である。


 ふうとため息を吐いたローザは、右手で髪をかき上げた。


「ふう、能力を高める為に毎日アニメの鑑賞、面白いけど疲れる時もあるわね」


 そのままイイ女風にシャワーまで歩く。

 服を脱ぎ、ピンクの肌着がはらりと落ちる。


みんな・・・元気してるかな」


   ◇


 ジョーヌの部屋。

 ではなく、ネカフェ。


 彼女はまだ、家がないのである。


 現在、家探し中。


「2LDKでも良さそうですねえ。でも、できるだけブラック様に近い家が……あ、ここなんていいかも」


 カチカチカチカチ。

 そのとき、扉がトントンと叩かれる。


「お待たせしました。大森カツカレーと大盛ラーメンと大盛フライドポテトと枝豆とコーラです」

「ありがとうございます。ご丁寧に感謝します。いつも美味しくて素敵ですわ」

「え、い、いやとんでもない!? ごゆっくりどうぞ」


 扉を閉めた後は、両手を合わせていただきます。


「でもここのシェフ・・・の料理はたまりません。飲み放題、漫画も見放題、もう少しだけここにいようかしら。んーっカレーも絶品ですわ」


 その後、冷凍なんだけどなあと、ぼやきが聞こえたのだった。


  ◆


 ブラックこと、黒羽黒斗の部屋。

 ローザと同じようにアニメのポスターだらけだが、筋トレグッズも置いている。


 もちろん全て黒を基調としており、光を嫌っているので、遮光カーテンは欠かせない。


「魔眼を見るたびおもいだせ! ……んーなんかしっくりこないな。 ――魔眼の力を舐めるなよ! ……いいかも」


 配信のことを常に考えているため、練習は欠かせない。

 最近はローザのほうがかっこいい台詞を言うので、怯えもあるのだ。


「よし、今日はここまでだ」


 ベッドに横になり、真っ暗の天井を眺める。


「最近、楽しいな……。でもみんな……なにしてる……んだろう」


 寝つきのいいブラックは、すぐに寝るブラック。


 それゆけブラック、いけいけブラック。


 そしてすぐに暗黒の世界にいざなわれるのだった。



――――――――――――――――――――――――――――



 【大事なお願いです】


「面白い」」

「この話の続きが気になる!」

「良いブラック!」


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