第41話 ミストリア・クロエ・ジョーヌ

「ふぁぁ、眠い」


 早朝、登校。


 メルヘンボスを倒したあとの美琴は嬉しそうだった。

 なぜか俺の血が欲しいと言ってきたので医療機関を介して採血したが、一体何に使うつもりだろう。


 それにしても不死身のクマさんか。


 ……ちょっとうらやましいな。


 見た目はカラフルだが、よく考えればそれもそれで闇っぽい。


 羨ましいブラック。だがギルドの強化と考えれば問題ない。

 そもそも俺たちはSを目指しているのだ。


 Bクラスの申請も無事終わり、無事に通れば上がるだろう。

 世界最速らしいが、それよりもみんなで楽しく攻略できていることが嬉しかった。


 本来、ダンジョンに怪我はつきものだ。

 だがみんなのおかげで五体満足ブラック。


 仲間って、いいものだなぁ……。


「よろしいか、ブラック殿」

「ローザ?」


 曲がり角を曲がった後、右手を顔面に乗せているローザが立っていた。


「いつからそうしてたの?」

「一時間前だ」

「他の人に見られなかった?」

「もちろん見られていた」


 会話は通じているみたいだが、本当の意味では通じていないだろう。

 とにかく話があるとのことだった。


 学校をサボるなんて俺のキャラじゃないと思ったが、それはそれで厨二病っぽくていいかもしれない。


 あいつ休み? さぼりじゃねえのか? なわけないよな、あはは。

 みたいな会話が広げられている裏では、異世界人と戦ったり、謎の組織と翻弄


 うん、いいじゃないか。まあ、そんなことはないが。


「あそこに座ろうではないか」

「ああ」


 公園まで移動し、湖を見ていたら、スッとお弁当が差し出される。

 疑問はさておいてパカッと開ける。桜でんぶがふんだんに使われていた。


「す、すごい」

「だろう?」


 ちなみに俺のお弁当はイカ墨と黒いふりかけだ。

 一口食べると、桜でんぶの味が広がっていく。

 

 うん、おいしい。桜でんぶ。

 

「それで、話ってなんだ?」

「大変なことが起きました」


 突然の変化に驚くが、裏ローザ、いやこちらが表だが、真面目なのだ。

 能力を最大化まで上げる為に厨二っぽく喋っているらしい。

 後は、好きらしい。


「ジョーヌさんが日本に来たらしいらしいです」

「え、マジ……? な、なんで?」

「そんなの決まってるじゃないですか」


 過去を思い出す。

 ……え、なんかあったっけ?


「わからない」

「ほんとあなたは、戦闘以外は鈍感ですね」

「どういう――」


「黒斗……様!」


 その時、後ろから声がした。

 振り返ると、立っていたのは艶やかな金髪、たゆんたゆんの豊満な胸、スタイルが強調されている洋服だ。

 まるで外人、いや外人、青い瞳、え、誰?


「え、もしかして――」

「黒斗様あああああああ」


 その風貌に覚えはない。

 だが、その声に聞き覚えはあった。


 だが俺が知っているのは、全く違う。


 もっと、小さかった。

 もっと――ツルペタだった。


「もしかして……イエロー?」

「はい、黒斗様!」


 うーん、大変なことになったな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る