第37話 モンスターサファリパーク

 B級ダンジョンは、今までと違ってモンスターレベルの平均値が高い。

 ゆえにソロでの入場は危険視されているし、ギルドで行く場合は分断を考慮して平均的に強くなければならない。


 俺は何度か行ったことあるが、確かに死の宣告のカウントが10秒ではなく11秒だった。

 

 そして、今も――。


「そして闇が動き出す――」


 デカい熊が、ぐるうと叫び声をあげながら倒れこんだ。


 ”今の魔物って、出会ったら最後って言われてるデスベアーだよな?”

 ”ブラックの死の宣告ってマジでボス以外には容赦がない”

 ”本来盾とかと相性いいよね。待てばいいし。ごんぞうー!”

 ”待たなくても一撃で葬り去ることもできるだろうけどなw”


「相変わらず規格外ブラックですね」

「ブラック様といると表情筋が鍛えられます」

「我でも今のは12秒かかったかもしれぬな」


 美琴と風華さんとローザの反応を見ても、やはり俺は少しおかしいらしい。

 

 といっても、ついさっき大勢の魔物に襲われたときは、みんなも凄かった。

 強くなっている証拠だ。

 

「にしても、ダンジョンの中とは思えないな」


 空を見上げると、青空が広がっていた。

 疑似的な太陽も感じられる。


 ダンジョンは入場のたびに変わるのもあるが、おそらくここはそうだろう。


 まるで異世界。


 ――ブラック的には暗いほうがいいが、これもまた良しブラック。


「公園みたいで、ピクニックもできそうだ」


 ”この草原、めちゃヤバい場所って言われてますよw”

 ”周り見てますか?w”

 ”魔物がうようよしてますけどw”

 ”自然にしか目がいってないw”


 コメントの読み上げ通り、確かに左右を見てみると大勢の魔物がいる。


 なんというか、例えるなら動物園みたいな感じだ。

 柵のないところに放り込まれたみたいな。


 魔物サファリパークみたいな。


 いいなあ。のびのびとしてる魔物ってあんまり見ることがない。


 あ、あのオオカミ、家族連れだー。


「グルーヴデスオオカミです。別名、死の集団……こっちへ来ますよ!」

「そんな……みんな、武器を構えて!」

「我でもあれは、苦労しそうじゃ」


「モンスターでも家族団らんってのは、良いブラックだ」


 ”1人だけ会話がかみ合ってないw”

 ”めちゃくちゃオオカミが牙向けて来てますけど!”

 ”やべえってまじでやべえ!”

 ”ブラアアアアアアアアアク”


「――私が、止めます!」


 ほのぼのしていると、美琴が前に出る。

 腕輪が光り輝いて、デカい斧が出現。


 牙を受け止めているところを守るかのように風華さんが前に出た。


「――光の聖剣ホーリーソード


 手には、ピカピカと光る剣を持っている。

 ブラックに光量は合わないが、心は大いにくすぐられる。


 実は光の戦士、ライトマンというのも候補にあったのだ。

 流石に俺自身が黒すぎて断念したが。


 ”ブラック動いて!”

 ”すげえことなってるよ!”

 ”考えごとブラック!” 


「我に任せよ! 想像を創造思いつき――闇のおもちゃダークトイザラス


 ローザの手のひらから、黒いボールが出現した。

 それを一つ地面に投げる。


「ぐるぅ!」


 ”食いついてるww”

 ”意外にもww”

 ”オオカミとはいえ犬、習性を利用した素晴らしい攻撃だ”


「ふ、また魔物を手懐けてしまったか」

「ローザさん、でもまだまだいっぱいいる! ああ、耐え切れない!」

「――ブラック様、まだですか!?」


 気づけばオオカミ50体くらいに囲まれていた。

 すごい、本当にサファリパークみたいだ。


 それが、一斉に襲い掛かってくる。


 ”やべえ”

 ”うわああああああああああ”

 ”画面が覆いつくされるううううううう”


「――『お・す・わ・り』」


 次の瞬間、オオカミたちはビシっと地面に叩きつけられた。

 呪言のレベルを最大化し、命令に近いレベルまで引き上げたのだ。


 初めて使ったが、些か使い勝手がいい。


 これはありブラック。


 そして死の宣告を付与。


 カウントは14秒。

 なるほど、結構強かったのか。


 そしてオオカミたちは無残にも絶命、魔力の破片となり消えていく。


「……ブラックさん、次からはもっと早くにお願いしますね」


 美琴は満面の笑みだが、ちょっと怒ってる気がする。


 確かにここはまだ一階だ。

 目的はボスの調伏。


 さて――なら、急ぐか。


 俺は、その場で地面に手をかざした。


 ”何するんだ?”

 ”陰陽五行だ”

 ”え、広がりすごくね?”

 ”全部覆われていくぞ”


「――『陰陽五行』――『跪・け・』――『死の宣告』」

 

 俺も強くなっているらしく、呪力の技術が向上していた。

 少し力を使うが、全方位に展開させる。


 そのままその場にいる魔物たちを捕まえると、呪力を流し込んだ。


 一斉にカウントが表示され、消えていく。


 十数秒後、魔物たちが倒れこむ音が聞こえた。


「さて行くぞ。あまり遅くなってはいけない」


 ギルメンに声を掛ける。

 だが、どうみてもドン引きしていた。


 美琴も、風華さんも、ローザすらもだ。


「さ、流石に怖いのぅ……」


 それから数十分、ちょっとだけみんなにヒソヒソ話された。



 ”やりすぎブラック”

 ”強すぎるんよw”

 ”強さの底がしれない”


 ”マジで一体何者なんだ”




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