第32話 説得ブラック

「――美琴、危なブラック!」


 謎の人影を追いかけている途中、摩訶不思議な出来事が起こった。

 鉄骨が近くに落ちたり、ピアノの音楽が聞こえり、物音がしたり。


「あ、ありがとうございますブラック」

「気にするなブラック」


 ”感動シーンだけど語尾ww”

 ”そこは普通にしてww”

 ”イイハナシダナー”

 ”しかし怖いブラック”

 ”まさか幽霊……”


「やはりこれは、幽霊じゃないな」

「え、どいういうことですか?」

「ああ、魔力の痕跡を感じる。間違いない。これは、だ」

「ええ!? でも、こんな学校に?」

「ああ、ちょっと釣るか」

「釣る?」


 ”何するブラック”

 ”人?” 

 ”なんだろう”


 配信を切っても良かったが、さすがにまだ俺がブラックとはバレていないだろう。

 そもそも自分が自意識過剰みたいで恥ずかしいのでやめておく。


 俺と美琴は中庭に出た。


 これは、姿を晒す為だ。

 

 俺の考えなら――。


「ぶ、ブラックさんあれ!」

「ああ」


 ビンゴだ。

 デカい炎の玉が飛んでくる。


 なるほど、分かりやすくて助かるな。


「――アマテラス」


 黒剣を取り出すと、そのまま魔法を叩き割る。

 真っ二つになった炎は離散していった。

 

 次の瞬間、屋上の視線に気づく。


「あそこだ。いけるか?」

「――もちろんです」


 俺と美琴は視線を合わせて笑みを浮かべると、そのまま力を溜めて――飛んだ。

 飛行というわけじゃない。呪力と怪力での力業だ。


 美琴の凄いところは、度胸だ。

 普通なら身体がすくむことも怖くない。

 

 視界の先に、ようやく見つけた。


 逃げようとする道を防ぐようため、屋上の扉の前に降り立つ。


「――君たちか、悪さをしていたのは」


 そこにいたのは、高校生ぐらいの子供たちだった。

 全員気合が入っている。

 ピアスにタトゥー、なんだったらモヒカンもいる。


 ――怖い。


「なんだてめェ!?」

「ここはオレらの縄張りなんだよ!」

「そうだ、消えやがれ!」


 魔力の痕跡で人だと気づいたが、彼らがここを根城にしていたのだろう。

 最近はコンビニでたむろうのは厳しく、魔物関係もあって警察も多い。


 かといってダンジョンに行くほどの気概がない彼らの居場所は、おのずと端に寄せられたということだ。


 炎の玉も見せかけだけで、威力は大したことなかった。


「てんめぇっ! 許さねえ俺たちの縄張りを!」

「――うんうん」

「なんだてめぇ?」

「うんうんわかるよブラック」


 話は変わるが、俺は金七先生が大好きなのである。


 間違いを正し、黒を白に変えていくような優しい説得。


 いつかそうなりたいと願っていた。

 

 今が、チャンスだ。

 

 美琴が前に出ようとするが、制止する。


 ”何をするんだ”

 ”粛清ブラック”

 ”相手もやる気だ”


「いいか、人という字は支え合って生きているんだ、わかるか?」


「……こいつ何言ってんだ?」

「いきなりわけわかんねえよ!」


 ……た、たしかにちょっと速かったかもしれない。

 お前たち、何をしている? ぐらいから始めたらよかった。


 ”こいつらが犯人か”

 ”気を付けブラック”

 ”だいぶ若そう”


 やり直すか。


「お前たちがこの学校で悪さをしてたのか?」


「ここは俺たちの縄張りだ。誰であろうと、侵入者は返さねえぜ」


 こいつめ、結構いい中二病台詞を吐きやがる。

 グッときたじゃないか。


 だが心を闇にしよう。


「いいか、人という字は――」

「大事なことみたいに、二回いってんじゃねえよ!」


 するとモヒカンが攻撃を仕掛けて来た。

 大事なことだとわかってくれているだけでもうれしい。


 俺はヒラリと回避する。


「いいか、支えあって…………」


 あれ、ここから何だっけ……。

 支え合ってるからなんだ……? 入るとかも支えあってないか?


 ん? 支えるってなに?


 ”動き止まってて草”

 ”ブラック、動いて!”

 ”無防備ww”


「消えやがれえええ!」

「――私が!」


 横からヒュンと飛び出した美琴が、敵のみぞおちに一発、悶絶しながら前のめりに崩れていく。


「お前ら、でてこい!」


 すると後ろから、ワラワラと黒いのが出てくる。

 鎖ジャラジャラしたやつも持ってる。


 ちょっと謎の軍団みたいでカッコイイ。


「ここは俺たちの唯一の場所だ。絶対に渡さねえ」


 なんだか俺らが悪いみたいになってきたな。

 君たち許可を得てないし、建造物侵入罪だからね!?


 とはいえまだ若い(多分同じ歳くらい)


 更生の余地はありだ。


「手荒真似はしたくなかった。だが――仕方ない」


「てめえ!ふざけやがって!」

「この黒野郎!」

「黒を殺せ!」


 最後の言葉まんますぎるだろう。


 俺は【あみだくじ】を発動させた。

 全員の身動きが止まる。


「ぐぐぐ、ぐぐ」


「美琴、後は俺に任せてくれ」

「は、はい」


 ”な、何するんだ”

 ”恐ろしいブラック”

 ”こいつら、終わったな”


「いいか、人という字は――」


 そのまま俺は、何度も同じことを聞かせた。

 暴力だけでは何も解決しないことがある。たぶん。


 そして気づけば、朝日が出ていた。


 覚えてなかったので同じ話を何回もループしたが、それでもわかってくれたように思う。


「いいか、わかったか?」


「はい……すいません」

「申しません……」

「も、もうやめてくれええ」


 ”起きてきたけどまだやってんのかww”

 ”これはブラックすぎる”

 ”鬼畜ブラック”


 ちなみに美琴は寝ていた。

 帰ってもいいといったが、最後まで見届けたいという。


「これにて一件落ブラック!」


 

 翌日、警察に突き出したが、厳重注意で終わったとのこと。

 理由は、「ごめんなさい」「もうしません」「人という字は~」「ブラックは嫌だブラックは嫌だ」

 と強く謝罪したかららしい。


 やっぱり説得は大事だ。

 力任せだけでは解決しないこともある。


 俺は、それを一晩で学んだ。

 時間にすると八時間くらい。


 これは評判もいいだろうと、久しぶりにスレを見てみると「ブラックの新技「説得ブラック」が最凶すぎる件」のが立っていた。

 ちらりと見てみると、人という字は~というレスが鬼のように書かれ、俺の怖さがつらつらと語られていた。


 おかしい……俺は説得しただけなのに。


 ただ謎の怪奇現象を止めたということでぷち炎上が終わり、また平穏な日々を取り戻した。


 動画の再生数は好評で、世界の摩訶不思議な出来事をブラックに解決しようシリーズの一つになった。


 そして明日は学園テスト。

 

 今度は黒羽黒斗としてだ。


 さあ、明日も、がんばブラック!


 ―――――――――――――――――――――――――――――


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「面白い」」

「この話の続きが気になる!」

「良いブラック!」


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