地獄
診断が確定したあと、大学の入学を辞退した。
それ以来私は自室に引きこもり、すべてを拒絶した。
部屋にあるグランドピアノも大きな布で被せて見えなくした。
ピアノがすべてだった私にとって聴力を失い、生きる希望も失った。
地獄の始まりだ。
神様はなぜ大切なものを奪うのか。
順風満帆だった私の人生が憎かったのだろうか。
不幸な子が報われてほしかったから奪ったのだろうか。
私にとって他人は関係ない。
私はただずっと、お母さんになっても、おばあちゃんになっても死ぬまでピアノを弾きたいだけなんだ。
ただピアノが大好きなだけなんだ。と訴えてももう戻ってこない。
医師に人工内耳の手術を提案されたが断った。自分の耳じゃなきゃだめなんだよ。
それからしばらく、なんとか高校は卒業できた。卒業式は出ず、終わった後に担任から卒業証書をもらった。
家に帰っても家族と一緒にいると気まずくなってしまい自室に逃げる。
もう一生ピアノは弾けないんだろうなと悟った。
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