第128話

「珍しいな、ナフから話なんて」

「まぁ、年の離れた異性って、プライベートで中々会う機会作りにくいから」

「生々しい言い方をするんじゃない」


 手にしていた本で軽くナフを小突く。

 あいた、というノリのいいリアクションが返ってきた。

 ここは図書館、ギルド併設のあの場所である。


 休日にここで本を読んでいたら、ナフがやってきたのだ。

 レベッカさんから聞いてきたんだろう。

 俺に用事があるのだとか。

 なのでこうして、二人で本を読みながら話をしている。


 図書館はお静かにということで、小声でひそひそと。

 何故か周囲から視線を集めているのは、気の所為ということにしておこう。


 ちなみに、こういう時にうるさそうな出歯亀妖精は案の定寝ていた。

 あいついつも寝てるな……


「っていうか、ツムラさんの読む本難しいのばっかりだね。私じゃ全然頭に入ってこない」

「いや、そうでもないぞ。文字になってるから難しく感じるだけで、内容はナフもすでに知ってることがほとんどのはずだ」


 俺の読んでいる本の山から、一冊手にとってパラパラと読んでいるナフ。

 本人はこう言っているが、地頭は良いタイプだし、本気で勉強すれば理解はそこまで難しくないはずだ。


「例えば?」

「魔法のアレンジに関する論文とかな」

「理屈は理解っても、絶対に内容は理解できないよ、それー」


 とはいえ、本人はそこまで勉強が好きなタイプではない。

 こういう反応も納得か。


「ヒーシャなんかは、結構食いつく気もするが」

「え? ああ、ヒーシャはアレで私以上に勉強嫌いだよ。レベッカさんも勉強できると思ってたみたいだけど」

「マジかよ」


 レベッカさんもそう思うあたり、ヒーシャのなんとなく勉強できそう感はすごいな。

 ああでも、本人は考えるより感覚に従う方が強いタイプだから、勉強より身体動かしてる方が得意だよな。


「むしろ、考えてると考えすぎちゃうんだよね。ただ、ボードゲームはめちゃくちゃ強いよ」

「それはなんとなくわかる気がする」


 いかにもって感じだ。

 どっちにしろ、ふたりとも頭はいいんだよな。

 この世界が中世風世界だから、学校が近くにないだけで。

 学べば、それ相応に結果を出すはずだ。


 と、俺は思っていた。


「でも、勉強してもダメだね。アタシにはスキルがないから」

「……学問にもスキルが関わるのか?」

「そっか、ツムラさんは愛子だから、他の人のスキル構成とか見たこと殆どないんだ」


 俺が知ってるのは、俺自身とヒーシャとナフ。

 全員、持っているスキルが戦闘系のスキルだ。

 もしかして、



「結構レアなんだよ? 私やヒーシャみたいに、タイプって」



 俺が知っているのは、かなり例外よりの例だけだったのか?

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