第113話
ようは、中級支援魔法で初級支援魔法と同じことができればいいわけだ。
これまでのヒーシャは、初級支援魔法を使い分けてバフし、一番大事な部分だけ中級支援魔法使ってきた。
それを、全部中級支援魔法にしてしまおうということだ。
効果のアレンジ事態は、そこまで難しいことじゃないだろう。
効果時間を短くしたら、リキャストだって短くなる。
そう意識できれば、自然とリキャストも短くなっていくはずだ。
そのために煩わしさという導線を、わざわざ先達が用意してくれたわけだし。
俺達は、それを全力で活用するだけでいい。
とはいえ、そう簡単に行くわけでもないのだが。
「うわ、痛った! バフ間に合ってないよヒーシャ!」
「うわぁあん! ごめんナッちゃーん!」
――当然のごとく、アレンジはうまく言っていなかった。
ダンジョン内で襲いかかる魔物を相手しながら、ナフがボコボコにされている。
といってもほとんどはナフのDEFを越える攻撃はしてこないのだけど。
クローバットなんかは、そこそこATKがあるので防御バフが間に合わないとちょくちょくダメージを受けることになる。
それでも微々たるものだ。
HP三桁の俺ならともかく、余裕で四桁を越えている――どころか2000を越えているらしい。
タンク向きの人間は、レベルアップで伸びるHPが明らかに他の人間と異なるらしいが、ナフはそういうタイプなんだろう。
対して、クローバットのダメージなんて二桁行けばかなり効いている方。
百回くらっても、HPは半分近く残っているはずだ。
だから問題はない、ないのだが……
「えっとえっと、次は防御バフで、えっとえっと」
「ヒーシャ、ヒーシャは考えちゃダメだ! 自分の感覚に従って戦うんだよ!」
一見、それでいいのか? となるナフのアドバイス。
だが、見ていて思うが本当にヒーシャは何も考えていない時の方が圧倒的に強い。
多分、頭の回転がめちゃくちゃ早いんだろう。
しかし、意識すると逆に普通の思考をしてしまい回転スピードが落ちるという、なかなかピーキーな仕様をしている。
側でずっとヒーシャを見てきたナフが言うんだから、間違いない。
「っと、邪ノシシが出たぞ」
「あ、はい!」
で、基本的には中級支援魔法をアレンジするためにこうして練習をしているわけだが、邪ノシシが出た場合は例外だ。
こいつだけは、きちんとヒーシャがバフをしないと事故る可能性がある。
なので、邪ノシシが出た時は、俺も加わって普通に討伐するのだが――
「待って」
ナフがそれに待ったをかけた。
「どうした?」
「こいつも、ヒーシャの練習台に使おう。その方が、多分うまくいくはずだよ」
「ふぇえ!?」
突然の宣言、それは自分の身を危険に晒すものだ。
……なんだ、案外ナフもやる気になってるんじゃないか、と俺は勝手にそう思うのだった。
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