第88話
「一般的には、この世界は女神様が作った……と思われていますが、正確には女神様はこの世界と同時に誕生したんです」
なんて語りから、レベッカさんは“世界の成り立ち”を語りだす。
「この世界の人々にとって女神様はステータスを作り、人が魔物に対抗する力を与えてくれた創造主のような存在です」
「だから勘違いしやすいけど、この世界と女神はイコールであり女神が世界より上じゃないってことか」
「そういうことです。そして、もっと言えばイコールの中には魔物も含まれるんですよね」
この世界には女神と魔物が最初にいた。
それはつまり、人間は最初、存在していなかったってことか?
そんな俺の疑問に、レベッカさんは首を立てに振った。
「人がいつ、どのようにこの世界に現れたかは解りません。女神様がお創りになられた……というのが定説ですが」
「あー……なるほど」
人間は、多分普通に地球のそれと同じく生物が進化の果てに今の形にたどり着いたんだろう。
この世界、数は少ないが人間と魔物以外の動物も存在している。
同じように人間も、また。
「……愛子の方たちは、その説を話すと皆ツムラさんと同じ顔をしたそうです」
「だろうな。なんとなく人間がどこから来たか想像はつく。でも、説明するには俺は知識不足でな」
「あはは……あらゆる愛子が、世界を変革する力を持った天才というわけではありませんから」
なんでも、愛子は戦闘が強いタイプと、深い叡智を持つタイプの二種類がいるらしい。
俺は当然前者だな。
レベリング中毒が叡智とか冗談じゃないぞ。
「この話の面白いところは、女神様と魔物は敵対する存在だということです」
「世界と同時に生まれた、ともすれば“同種”とでも呼ぶべき存在なのに、だから?」
「ツムラさんは、結構鋭いですねぇ」
この世界の宗教観に関わるため、大っぴらには語られていないが、女神と魔物は同一の存在である。
どちらも“魔力”から生まれた存在という意味で、双方は同一だ。
違いは、人間に味方するのが女神で、敵対するのが魔物というところか。
「興味深いのは、女神様がどうして人間に味方するのか、未だに理解っていないことなんです」
「なぜだ?」
「女神に会った人がいないからですよ。愛子ですら、女神様に拝謁した人はいません」
なるほど。
現状、女神が善性の塊であるという点は疑いようがないだろう。
しかし、動機が解らない。
今更女神様の献身を疑うことはないが、それはそれとして理由は気になる。
人の性というか、好奇心というか。
『ちなみに、女神様が“女神様”と知られているのは、妖精たちが女神様と呼んでいるから』
『妖精は女神が女神であることを知っているってことか』
『会ったことはない』
なんてクロの解説もありつつ、話は進んでいくのだが……
それはそれとして、
「あの」
「はい?」
「……近くないですか?」
なんか、レベッカさんが近い。
具体的に言うと、同じ本を二人で読んでいる距離感。
本、読んでないんですけど。
「まぁまぁ」
「いや、あの」
「まぁまぁまぁまぁ」
……相変わらず、この人のこういう部分は何を考えているか解らない!
とりあえず、周りの視線が気になるので助けてほしいのですが。
図書館に来る冒険者は真面目な冒険者しかいないだろうけど、だからといって視線がきついのはどこでもそんなに変わらないんだよ!
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