第82話

 暇になってしまった。

 森で薬草採取してもいいが、流石にそれで2日かけるのはコスパ悪いと思う。

 俺はレベリングがしたいのであって、効率の悪い作業がしたいわけじゃないんだよ!


 たとえ効率が悪くとも、時間をかけてレベリングをして無双するのも嫌いではない。

 だが、俺はどちらかというと最高効率で一気にレベルを上げていくのが好きだ。

 溜めて放出すると気持ちいいみたいな。

 何を言っているんだ?


 ともあれ、そういうことなら別のことをしよう。

 自室でゆっくりするのは昨日やったから、今日は別のことをする。

 目指すのは、ドワーフ工房だ。


 何をするのかって言うと――


「――防具の更新をしたいんだ」

「それでウチに? ツムラさん、何から何まで贔屓にしてもらってるね」


 そう言って俺を迎え入れてくれたのは、エプロン姿のナフだ。

 すっかり元気になったらしく、箒で店内を掃除している。


「にしても、ナフは店番もするんだな。親孝行じゃないか」

「いやいや、むしろ無理言ってる方だよ。本当ならもうとっくに、オヤジに弟子入りして色々作ってるころなんだから」


 なるほど。

 ここの商品は、半分が店主の作で、四割程度が他所から仕入れたものだそうで。

 ナフが冒険者になると言い出さなければ、この四割はナフの製作になっていたらしい。

 残り一割は、店主の奥さんの作ったもの。

 サーチハンドのような感じ。

 なので、普段は店に並んでいない代物のようだ。


「オヤジも母さんも、それなりに腕のいい職人同士だったんだ。だから、私も職人として期待されてるんだよね」

「それはまた、大変だな」


 そして、そんなナフが冒険者をしている。

 よっぽどヒーシャの事情ってのは、大変な事情なんだろう。


「ま、冒険者を続けるのもヒーシャが目的を達成するまでだし、オヤジはまだまだ現役だ。数年くらい冒険者してくれても問題はないよ」

「目的、達成できるといいな」

「頑張る」


 いいながらも、ナフは手際よく掃除をしていく。

 こうしているとしっかり者という印象なのだが、部屋は結構散らかってるんだよな。


『面倒見はいいけど、自分の面倒は見れないタイプ』

『流石に辛辣すぎるだろ』

『……その、親近感が』

『同族だったかぁ』


 クロも世話焼きなわりに、たまにズボラになるしな。

 そう考えると解る気がした。


「んで、防具の更新だったよね」

「ああ、ダイヤモンドオーガ討伐で20万G手に入ったからな。本当ならサーチハンドを買うんだけど、その必要がなくなったから」


 そして、サーチハンドの効果はかなり高い。

 それに対して、未だ一桁の防御ステータスというのはいささかどうかと思う。

 何より、この世界の防御ステは攻撃ステより重要だ。

 できるだけいいものを集めないとな。


「そうだね……じゃあ、こういうのはどうかな」


 いいながら、ナフは掃除をいい感じに切り上げて、俺に防具を紹介してくれた。

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