第4話 初めての【リバサガ】


 シンシアとの訓練とランニングを続けること数日。

 連日の鍛錬で俺の身体が悲鳴を上げたこともあり、シンシアとの訓練は3日ごとに1日休みを設けることになった。毎日クンクンしたかったのかシンシアはゴネていたけど。

 

 もちろんシンシアは毎日訓練しているが(さすが努力できる天才)、男の俺の体力でそんなことをしたらオーバーワークになってしまう。


 そして今日は待ちに待った初めての休日だ。


 シンシアとの剣の稽古は辛いときもあるが、前世でまったく経験のないことだったので意外と楽しい。


 ……まぁ毎日クンカクンカされるのはさすがにやめてほしいけど。俺も一応男である。シンシアのような美少女にくっつかれて嬉しくもあるけどいろいろ我慢するのが大変なのだ。


 さて、休みだからといってだらだらとするわけにはいかない。なんせ、数年後には破滅エンドが待っているからな……。


 今日はとあるイベントのために、街へ繰り出すことにした。【リバサガ】の世界がどんなものなのかも見てみたいしね。

 

 ……普通に家から出ようとすると周りのメイドたちに「おやめください!」と止められたので、バレないようにこっそり裏口から抜け出してきたのは内緒だ。


 そんなクロードの家、アルベイン家は、この【リバサガ】世界で主に軍事を担当する貴族。

 ただ、伝統的に政治が苦手な脳筋ばかりだったので爵位は子爵どまり。

 首都のルーインからいちばん近い街、城塞都市グラルドルフの警備を主に任されている。


 そんなわけで、さっそく俺はグラルドルフの街並みを楽しもうとしたんだけど……。


「うん、普通に迷った」


 前世で極度の方向音痴だったことをすっかり忘れていた。クロードの知識も屋敷周辺の地形しかなかったし。


「すみません、道を教えてほしいんですけど……」


「ひゃ、ひゃい!? え、なんで男の人がこんなところに!? もしかして逆ナン!? キャーーッ!」


 念のためローブを被ってきたが、道を聞こうとすると声で男だとバレてしまう。声をかけた女の子はみんなこんな感じでいまいち話にならない。


「うーん……どうしよう」


「こんなところでどうしたの、ボウヤ。男一人でこんなところにいちゃいけないわよ?」


 薄暗い路地裏を歩いていると、すれ違った女性に声をかけられる。

 ……ものすごい美人さんだな。

 

 漆黒のローブと、燃えるような長い赤髪で隠された片目がミステリアスさを醸し出している。俺より少し高い身長にスラっとした体型。まさにお姉さん系美人だ。

 ……そしてなにより、いろいろ


「ちょっと道に迷ってしまいまして……。『太陽の家オ・ソレイユ』というお菓子屋さんに行きたいんですけど」


 そこで売られているスイーツが、シンシアの大好物なんだよね。訓練のお礼に買いに来たというわけだ。

 

「なら私が案内してあげる。着いてきて」


 サラサラの赤髪をかきあげながらいうお姉さん。

 

「あ、ありがとうございます! えっと、あなたのお名前は……?」


「私? 私はアニエス。キミは?」


「クロードです。よろしくお願いします」


「よ、よろしくね」



 話のできそうな人とやっと出会えた。良かったぁ。見た目はクールだけど、とても親切な人だ。


 ……一応、【魔眼】で視ておくか。一応ね。


 【名前】アニエス・メイリーフ

 【種族】人間 女

 【年齢】25

 【職業】魔法錬金術師

 【レベル】25

 【魔力】28520

 【固有スキル】錬金

 【性癖】おねショタ


 ……うん?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る