お空なぼくたち
モブ子の鈴懸
ポコロと青い鳥
ぼくはクマのポコロ。体はほかのクマに比べて小さくて、爪も小さい。見た目があんまりこわくないせいか、ぼくよりも小さな生き物が近づいてくれるんだ。
とくに、仲が良い子がいる。
オレンジ色の明かりがとてもきれいなぼくの家に、二階の小さな丸い窓をつついて、青空みたいに真っ青な鳥がいつもあそびに来てくれるんだ。
煮豆みたいにかわいい黒い目。
つん、としたくちばし。
ぼくの爪より小さな細い足。
その子の名前は分からない。
ちゅん、と鳴くだけで、なにを言っているか分からないんだ。
その子が窓をつつくたび、ぼくは窓を開けるんだ。すぅっと部屋の中に入って、くるり、くるりと一周してから、ぼくの頭にとまる。
そして楽しそうに歌うんだ。
春にはじめて会ってから、もう十ヶ月になる。
今日は雪の粒が窓にうちつける、とても寒い日。
あの子が来たら、あったかいミルクを飲ませてあげよう。
だけど、ぱったりと来なくなってしまった。
寒いせいかな。外に雪が降っているせいかな。
春になっても、夏になっても、その子が窓をつつくことはなかった。
ぼくはお父さんに聞いてみた。
いつも遊びに来ていたあの子が、急に来なくなっちゃった。どうしてかな。ぼく、探しに行きたいよ。
お父さんは、きっとお空で遊んでいるんだよ、と笑った。
お空? ぼくは首をかしげた。
ポコロ、手紙を書いてごらん。手紙を書いたら風船を飛ばして、お空に届けよう。
さっそくぼくは、手紙を書くことにした。
こんにちは。お空は楽しいかな。
雲にかくれて遊んだり、お日様に近づいて体を温めたりしているかな。
そうなら、うらやましいな。
さいきんのぼくはね、体がとても冷たいの。
ずっとベッドにいるんだけど、体がすごく重いんだ。しんぞうがね、石みたいなの。
ぼくの体が軽くなって浮くようになったら、きみと一緒にお空を飛んで遊べるのにな。
手紙を書いて読み返してみたけれど、ちょっとくらかったかも。だめだめ、やめた。
書き直して、一文だけ「お空に行って君と遊びたいな」と書いた。
つぎの日。
ぼくが目を覚ますと、いつものぼくの部屋のてんじょうじゃなくて、青空が見えたんだ。
あれっと目を真ん丸にしたら、ぼくったら、いつの間にか雲の上でねむっていたみたい。
つんつん、とぼくの頭をだれかがつついてる。
おやっと顔を上げると、青い鳥のあの子がいた。
やっと会えた!
ぼくはうれしくてたまらなくなった。
あの子はくちばしにくわえていた、赤い風船のひもをぼくにわたした。
ひもには、白い紙がくくりつけられていたんだ。
紙を広げると、ぼくの名前が丸い文字で書いてあった。
ポコロへ。
お空はどんな所かな?
ポコロの大好きな滑り台とか、ブランコはあるかな。
お友達の鳥さんと、会えたかな。
少しの間、お父さんはポコロと会えないけど、必ずお父さんもお空に行って会いに行くからね。
それまで、いい子で待っていてね。
お父さんより。
ぼくは手紙を読んでから、大切にポケットの中に手紙を入れた。
あぁ、とっても体が軽くていい気持ち。
お日様が近いせいかな。
でもどうしてぼくは、お空にいるのかな。
まぁいっか。
ぼくは、頭の上に広がる青空を見て、にっこりと笑って、鳥さんと一緒に歌った。
お空なぼくたち モブ子の鈴懸 @hareyakanasora
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