転:箕輪結華梨(セクシーハロウィンのすがた)~共鳴~

「じゃあ再会を祝して――」

「乾杯!」

「うーぃ」

 まあ細かいことは気にせず飲むことにしよう。成人して一年弱だがあたしは特別な時しかお酒は入れない、頭の働く時間は減らしたくないからね。ユア・マイ・スペシャルズなんだよ二人とも。


「――みたいなことしてるから、康信やすのぶさん……義花のお父さんにも相談乗ってもらったりしてるのよ」

「そ、パパは理系大好きマンでね」

「へえ、防大ってあんなに体動かしながらガッツリ勉強やるんだもんね……」

 という感じに、最初は割と真面目な近況報告だったのだが。


「ねえ仁くん~ピザ食べさせて~」

「はいよ……ほら、」

「あんっふとももにサラミ落ちちゃった」

「悪い、熱かったか」

「よく見ろよ仁よ今のは指でひっかけて落としたんだよ」

「仁くん取って?」

「…………」

「いや仁はあたしを見んなよ」

 ティッシュ箱を結華梨へ投げつけると、難なく仁輔が片手でキャッチした。はいはいナイスキャッチ。


 ――という感じで、できあがってきた結華梨が仁輔にちょっかいを掛けるゾーンに突入した。もうAVなんだよ構図が。

 ちなみに酒の強さはというと、あたし<<結華梨<<仁輔である。あたしは薄いチューハイをさらに炭酸で割るくらいがちょうど良い。対して仁輔はクソ強い、今だって多分アルコールじゃなくて結華梨の色気に酔ってるんだよねバーカバーカ。


「ほら美味しいとこ食べちゃうもんね! 放置してる君らが悪いんだからね!」

 あたしは結華梨特製サラダ(おいしい)から生ハムを重点的にピックアップして自分の皿に盛っていく。これがアップデートされたシン・サラダ取り分け女子じゃい。ついでにピザを口に放り込み、シャンディガフ(ジンジャエール8割)で流し込む……なんかちょっと胃がもたれてきたぞ……


 とはいえ食べ物も減ってきた、後はカップルを寝室に押し込んで一発やらせればおとなしくなるのでは――などと考えてきた頃。

「それではお待ちかねのハロウィンプレミアム写真撮影タイムです!」

 結華梨が立ち上がって叫ぶ、待ってるのお前だけだろそれ。

「いいよ、何してほしいの?」

 とはいえ仁輔は完全に結華梨を甘やかすモードになっている、もう邪魔すまい。

「じゃああたしはシャワー浴びて寝ちゃ」

「えっ義花が撮るんだよ」

「……マ?」


 結華梨は満面の笑みで「お願い?」とばかりに手を合わせている。いやそんな虚しい役回りあるかい……と逃げようとしたが。

「いいでしょ義花~~こんなこと頼めるの義花だけなんだよ~~」

 紅の差す白い肌を惜しげもなく晒した結華梨に絡まれると、別の感情がふつふつと湧き上がってくる。


 いやだってさ……こんなエロカワな格好をこんな間合いで見られるチャンス、なかなかないじゃん? しかも見せつけられる機会ってもっとないじゃん?

 一生を添い遂げると決めた最愛の女性が居るとしてもさ? ガチ百合女としての血がね、騒ぐじゃん?


「――いいよミユカ、撮ってあげる」

「ありが……と?」

 あたしの異変に気づいてか、結華梨が若干ビビっている。

「その代わりだ――絶対に恥ずかしがるんじゃねえぞ、徹底的に本気に真剣に被写体やれよ」

「待って義花なにそのテンションは」

「あ? 今さら人並みの恥じらいが残ってんのかそんなドスケベコーデ見せつけやがって」

 言い回しが竿役のそれになってきたが、ともかく結華梨は乗ってきた。

「――そうだよ見せつけたいんだよ本気の結華梨を! めっちゃ頑張って仕上げてきたから残したいんだよ!」

「ああそうだろしっかり撮ってやらぁ! いいな仁!!」

「いいよね仁くん!!」


「れ、れんじゃー……」

 返事の良さには定評がある仁輔にとって、きっと生涯最弱の返事だっただろう。

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