まものづかん
えす
スライム
草原には霧が立ち込めいた。その中を進むと、不意に足元がとろけるような感触に襲われる。ああ、この感触は知っているぞ。
見れば、そこにはやはりスライムがいた。透明感のあるゼリー状の体を持ち、地面を滑るようにして移動している。
スライムは単細胞生物の集合体のようなモンスターだ。食性に関しては雑食で、植物の葉や小さな昆虫、時には土壌の有機物を食べる。驚くべきことに、スライムは自分より大きな獲物を捕らえることも可能で、その柔軟な体を利用して獲物を包み込み、消化液で溶かしてしまう。
この生き物には、驚くべき能力がある。敵からの攻撃を受けると、その体は小さなスライムに分裂する。しかし、これは単なる防御機制に過ぎず、分裂した各々はやがて再び一つに戻ろうとする。スライムは、そのシンプルな生命形態のために、切断されても死に至ることはない。体の一部が失われても、なくした部分を再生することができる。
まぁ、物理攻撃には強いものの、炎などにはからっきし弱いのはお約束だ。
環境に合わせて体色を変える個体もいる。草原に生息するスライムは、しばしば緑色をしており、これは周囲の草に溶け込むための保護色となっている環境や気温、湿度に応じて変化することが確認されている。食するものによっても体質が変化する個体もいる。
スライムの最も興味深い特性の一つは、謎の光を放つことだ。夜間や暗い場所では、彼らの体からは幽かな輝きが放たれる。これが交信手段であるのか、はたまた何らかの誘引のサインなのかは、未だによくわからない。
スライムは繁殖に関しても独特だ。体内で結晶化した核が形成され、それが成長すると体外に放出されて新たなスライムへと成長する。
彼らは単に分裂により数を増やしているものとばかり思っていたのだが、それは新たな発見だった。
原初の生命ともいわれるスライム。この不思議で神秘的な生態は、興味深い研究対象だ。研究するたびに新たな発見があり、面白い。
私はスライムを三分の一程度切り取ると、小瓶の中へと入れた。
草原の露に混じりながら、彼らの生活をずっと観察したい衝動に駆られる。しかし、行かなくては。『あのモンスター』が、私を待っている。
私は他のモンスターの気配に後ろ髪をひかれながら、歩き始めた。
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