意識高すぎるJKと目指す!学歴の最高峰!
川崎俊介
第1話 金のための勉強
勉強とはつまり、金を稼げるようになるための行為だ。
金を稼げるようになるのは、将来美女と付き合うためだ。
教養だの、文化の継承だのというのは大義名分だ。社会貢献のためというのは偽善者の言葉。
下らない御託を並べ立てる奴はダサい。格好つけたいのか、聖人ぶりたいのか知らんが、勉強する理由を誤魔化しても仕方がないだろう。
というスタンスで、高校在学中に公認会計士試験合格を目指していたら、普通に留年した。肝心の会計士試験にも落ち、周囲からは白い目で見られ、彼女にもフラれた。
親にも呆れられた俺は家を追い出され、親戚の管理するアパートで、資格浪人をすることとなった。もちろん、進級も絶対果たすよう言いつけられている。いわば監視付きの一人暮らしというわけだ。親は共働きなうえ海外出張も多いので、面倒を見切れないということだろう。
進級のため、仕方なく英語の勉強をする。学校の勉強なんて帰宅時間にやれば十分だろ。それ以上時間を割きたくない。というわけで、俺は歩きながら単語帳をめくっていた。
「eudaimonism……幸福主義ね。なんでこれが幸福主義なんて意味なんだよ。ハッピーイズムとかでいいだろ」
なまじ進学校に入ってしまったため、勉強の進度・レベルも相当高い。高2だというのにこんなマイナー単語を覚えさせられているのがその証左だ。
こんな一銭にもならなそうな知識を蓄えるくらいなら、会社法の条文の一つや、引当金の四要件を暗記した方が将来のためになるな。
そんなことを考えながら、アパートの廊下を歩いていると、誰かにぶつかった。
「あ、すみませ」
謝ろうと顔を上げると、目を見張るほどの美少女だった。物憂げな目といい、白い肌といい、スタイルといい、カールした毛先といい全て俺好みだ。
「eudaimon……私の好きな言葉」
「え? あぁそうですか?」
どうやら、俺の持っている単語帳に興味を持ったらしい。
「あなたは守護霊って信じる?」
いきなりスピリチュアルな問いだな。もしかして不思議ちゃんなのか?
「いえ……」
「そう、残念。古代ギリシャ人は、一人につき一体、守護霊が憑いていると考えていた。そしてその守護霊のことを、【ダイモン】と呼んでいたんだよ。『eu』とは、『良い』という意味。つまり、『良い【ダイモン】』を持つことで幸せになれると信じていた。だから、eudaimonが語源となって、eudaimonismが幸福主義って意味になったわけ」
「へぇ、覚えやすいな」
「覚えやすいでしょ。やっぱり背景を深堀りこそ、勉強の醍醐味だよね」
目の前の少女は、そう言って笑ってみせた。
直感で分かった。この子とは、住む世界も、見えている世界も、違い過ぎると。
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