第20話 炎魔術
ダンジョン探索を初めて30分。
俺たちは何度か襲いかかってくるダンジョンラットを処理しながら足を進めていた。
「……トーマさん、いました!」
ミリネアの地図に表示されていたのは「レッドキャップ」の文字。
ダンジョン最奥へと向かいながらも、ミリネアの【マッピング】でレッドキャップの居場所を探し続けていたが、ようやく発見できた。
ミリネアのスキルを使えばアラクネとの遭遇を避けることはできるが、いざというときのために、やはりレッドキャップの炎魔術は欲しかった。
アンピプテラとの戦闘中に近づいてきたアラクネに襲われて死んでしまいました、じゃあ目も当てられないからな。
ミリネアの地図を頼りに、レッドキャップがいる場所へと向かう。
入り組んだダンジョンの中にある小部屋。
物陰からそっと中を見ると、赤い肌をしたゴブリンが何かを食べているようだった。
あれはダンジョンラットを食べているのか?
よくあんなモノを食う気になるな。
だが、食事中なら気づかれることなく近づけそうだ。
「ミリネアはここで待っていてくれ。あいつのスキルを奪ってくる」
「わ、わかりました」
ミリネアを残し、ゆっくりとレッドキャップに近づいていく。
食事に夢中のようで、こちらには全く気づいていない。
このまま仕留めても良かったが、更新できるステータス値もあるかもしれないので背後からレッドキャップを羽交い締めにする。
「……ッ!? ギャギャギャッ!?」
「ふんっ!」
暴れるレッドキャップを持ち上げ、壁に向かって投げ捨てた。
筋力30オーバーのステータスがあるからか、全く重さを感じなかった。
「ギャニッ!」
壁に叩きつけられたレッドキャップの口から、潰れたカエルのような声が漏れる。魔晶石に変わらないところをみるに、死んだわけじゃなさそうだ。
今のうちにステータスを奪取しておこう。
―――――――――――――――――――
名前:オルォ・ガン・デュフ
種族:レッドキャップ
性別:オス
年齢:16
レベル:11
HP:300/330
MP:120/120
SP:10/10
筋力:4
知力:32
俊敏力:11
持久力:16
スキル:【MP強化(小)】【知力強化(小)】
魔術:【フレイムⅠ】【フレイムアローⅠ】
容姿:オルォ・ガン・デュフ
―――――――――――――――――――
フム。知力が高いが、これはパッシブスキルでブーストしているせいだろう。
MPの最大値が高いのでステータス値はこいつだけ頂いておくか。
炎系の魔術は、この【フレイム】と【フレイムアロー】だな。
とりあえずこのふたつを……いや、スキルも全部頂こうか。
―――――――――――――――――――
名前:トーマ・マモル
種族:人間
性別:男
年齢:28
レベル:13
HP:480/480
MP:120/120
SP:19/26
筋力:37
知力:23
俊敏力:28
持久力:21
スキル:【解析】【不正侵入】【痛撃】【追跡】【投石Ⅰ】【体力強化(小)】【俊敏力強化(小)】【体力自動回復(小)】【光合成・魔】【花粉飛散】【ドレインエナジー】【軽足】【毒耐性(中)】【MP強化(小)】【知力強化(小)】
魔術:【フレイムⅠ】【フレイムアローⅠ】
容姿:イリヤ・マスミ
状態:普通
―――――――――――――――――――
「……よし」
奪取は完了。
知力強化のおかげでステータス値も上がったし、早速、炎系魔術を試し打ちさせてもらおうか。
「……グギギ」
のっそりと立ち上がるレッドキャップに手のひらを向けた。
「いくぞ! 【フレイムアロー】!」
手のひらから炎が噴出したかと思った瞬間、弓矢のような炎の塊がレッドキャップに向かって射出された。
凄まじいスピードで放たれた炎の矢は、レッドキャップの胴体に命中する。
「……グギャッ!?」
命中したと同時に炎が大きく爆ぜ、レッドキャップが吹っ飛んでいった。
すごい。
これは炎の矢というより、ロケット弾だな。
その一撃で絶命してしまったようで、レッドキャップは黒い煙に変わっていった。
魔晶石を拾って、ミリネアの元に戻る。
「……ん?」
なにやらミリネアが唖然としていた。
「ど、どうした?」
「す、すす、すごいです。【フレイムアロー】一発でモンスターが……」
「そんなに驚くようなことなのか?」
「何を言っているんですか! 驚くようなことですよ! だって、普通の【フレイムアロー】って、爆発なんてしませんからね!?」
「え? そうなの?」
元々こんな魔術だと思っていたが、違うのか。
しかしステータスを見たところ、普通の【フレイムアロー】っぽいしな。もしかして【知力強化】で強化されているのか?
「でも、炎系魔術が奪えてよかったですね」
「だな。これでアラクネに遭遇しても問題ないし──」
と、そのときだ。
突然ダンジョンが大きく揺れた。
地震か──と思ったが、この世界に来て地震に遭遇したことはない。
ということは、このダンジョンになにかが起きたのか?
「今のは何だ?」
「マ、【マッピング】で調べてみます!」
ミリネアの【マッピング】スキルはモンスターやアイテムの位置だけじゃなく、周囲の地形を書き起こしてくれる。
周囲に異変が起きていたなら、すぐにわかるはずだ。
地図を開いて周囲を調べるミリネア。
「地形に大きな変化は無いようです。それにモンスターも……あっ」
ミリネアが指さしているのは、少し先にある水源地帯。
多分、何かの拍子で遺跡の壁が崩壊して、水脈が露出してしまったのだろう。先程の振動は、壁が崩れた音だったか。
そして、その空間に黒い星がひとつあった。
「見てくださいトーマさん! ここの黒い星!」
「……アンピプテラか!」
黒い星にふれると、その名前が表示された。
間違いない。
アンピプテラがこの先にいる。
「行くぞミリネア! ターゲットはすぐそこだ!」
「はいっ!」
そうして俺たちは、アンピプテラがいる水源地帯に向かって走り出した。
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