第10話

「あっ!あん!あっ!ああんっ!」




二人に責められて沙織は快楽の波に耽溺しているようだ。見知らぬ老人が参加して自分の胸を、乳房を、乳首を触って刺激している事が、かなり良い刺激になっているようだ。




「恥ずかしい!あたし!あっ!こんなこと!ああっ!恥ずかしい!あんっ!ああんっ!」




しきりに「恥ずかしい」と口にしながら喘いでいるが、身体の反応はまったく違った。与えられる快楽が羞恥というアンプで増幅されているようだ。正直、今までで一番の反応だった。バンザイをするように両腕を上げ、のけぞって快感にのたうち回っている沙織の白い身体は、暗闇のなかチカチカ光る映写機の光に照らされ、妖しく美しくうごめき白く輝いて見えた。それは見る者の心を捉えて離さなかった。『なんと美しい・・・・』責めながら、心から忠信は思った。




「かわいい・・・・」




老人がたまらず呟いた。溜息のように心の声が漏れ出たようだった。


激しくあえぐ沙織の声と、そのしなやかな姿態のくねる様子に、忠信は益々興奮した。陰茎の根本までがっちり挿入した状態で、沙織の腰の方を力強く動かす。奥のコリコリした部分に鬼頭の先が当たってこねくり回しているのがわかる。結合部には、「ぶしゃ!ぶしゃ!」と時々愛液が勢いよくあふれ出していた。忠信も物凄い快感にあえいだ。




「あっ!?ああっ!!ああっ!!ああっ!!」




沙織の声色が変わった。音程が一つ高くなった。ここか、ここが気持ちいいところなんだな。察して忠信は今、鬼頭が’擦っていた場所に集中した。沙織の腰を上下に動かした。ちょうど、騎乗位で女性が腰を前後に振るように。沙織の両足が忠信の腰に巻き付き、少しの快感も逃さない、とでも言うように強くしがみついた。忠信が動かす方向に沙織も自ら腰を振り始めた。




「ああっ!!あっ!!だめ!だめっ!いやっ!こんなっ!!ああっ!!すごっ!!ああっ!!」




気づくと、いつの間にか後ろの老人が前に回り込んできていた。沙織の隣に腰掛け彼女の胸にガバっと吸い付く。左手で沙織の右胸をもてあそび、左胸乳首に吸い付きベロベロ舐め回している。沙織が拒否せずそのまま喘いでいるのを確かめると、今度首筋をベロベロ舐め、その快感にのけぞる沙織の耳元でささやいた。




「かわいいねえ、かわいいねえ、ほんとにきれいだよ、ほんとにきれいだよ。」




「ひあっ!!ああっ!!ああっ!!ああっ!!だっ!あっ!あああっ!!」




「こんなにきれいな子がこんなエッチな事して。いいねえ。かわいいねえ。」




「あうっ!ああっ!!ひゃうっ!!あああっ!!いいっ!!ああっ!!」




沙織の左腕が老人の頭を抱え込んだ。ささやきながら老人は忙しく両方の乳首を舐め回し、左側の方が反応が良いことを悟ると、また右側は指で、左側は舌でベロベロ舐め回し始めた。沙織は両腕を軽く老人の頭に回した。老人も脇から手を差し込んで軽く沙織を抱きしめた。その間、忠信は沙織の締め付けに耐えながら同じ動きを続けていた。そして、一心不乱に沙織の腰を動かしながら、ここらでフィニッシュだと判断した。沙織の腰の動きに合わせて自らも腰を前後に振り始めた。膣の入口付近がギュッギュッと強く締まるようになってきた。沙織はもうすぐイキそうだ。コンドームをつけていなければ、あまりの快感と興奮に、忠信の方は先にイってしまっていただろう。




「あっ!!あっ!!ダメ!!イク!!こんな!!あたし!!!こんなことっ!!!あああっ!!!いい!!気持ちいい!!!」




「いいっ!ああっ!!!いいっ!!!ああっ!!!ああああっ!!!」




「あっ!!イクっ!イクっ!!あっ!!あっ!!イクっ!!ああっ!!」




「イクっ!!!!!!!!」




「クっ!!!!!」




この瞬間、老人がさっと離れてくれた。沙織と忠信はガバっと強く抱き合った。ほとんど同時に忠信もイッた。どくっどくっどくっと強い射精感に忠信も「うぐっ!!」と声が漏れた。頭が真っ白になった。ビクンビクン震える陰茎の脈動と、ギュッギュッとうごめく膣の収縮をお互いに感じていた。二人とも全身を痙攣させながら強く抱き合ったまま動かなかった。同時に達した幸福感が波のように押し寄せた。沙織は忠信の首に抱き着いていたが、そのあまりの強さに忠信も驚いた。しばらくそのままで二人は離れなかった。




『ここは箱の底だ。』




彼女の身体のぬくもりを、その呼吸を、心臓の鼓動を感じながら忠信は思った。




『本来は映画館という閉じた空間だが、ここはエロい箱の中だ。僕たちはその淫靡な箱の中、底にたった二人で横たわっているようだ。』




『おっと、それと、ゲストが一人(笑)』




老人にはちょっと申し訳なく感じたが、忠信は沙織とまるで二人きりのような光景を想像した。エロの空気に満ちた箱の中で、あられもない姿の二人が箱の底に二人、抱き合ったまま動かない。そんな光景を想像した。




どれぐらい経っただろう?2分か?20分か?二人とも痙攣がおさまり、呼吸がゆるやかになり、表情も穏やかになったころ、ゆっくりと忠信は身体を離した。離れ際に沙織がパッとキスをしてきた。忠信はなんだか照れて笑ってしまった。沙織はまたパタっと座席に頭を戻してぼーっとした顔で中空を眺めた。


老人は、沙織の乳房を名残惜しそうにじーっと眺めていたが、忠信と沙織の方を交互に向いて、




「ありがとうね。ごめんね、じじいが邪魔して。ごめんね。ありがとね。楽しかったよ、ほんとに楽しかった。」




と、繰り返した。老人はいち早くウェットティッシュを取り出し、沙織の胸を拭きながら感謝していた。沙織はまた少女のような表情でされるがままになっていた。首筋、胸、と何度も何度も拭いてもらっている。その間に忠信は手早くコンドームを外し縛ってティッシュにくるんでしまいこんだ。




「いや、こちらこそすみません。上手にやさしく触ってくれてありがとうございました。すみません突然こんなこと始めてしまって。」




むしろ、沙織の興奮具合を思い返すと、上手に参加してくれたことに忠信は感謝していた。




「いやいや、割り込んでごめんね。彼女きれいだね。ほんとにかわいいね。こんなにきれいな人がエッチするとこ初めて生で見たよ。触ったり舐めたりさせてもらってありがとうね。良い思い出になったよ。ほんとにありがとね。」




老人は、自分が舐めまわしたところを拭き終わったティッシュを丸めて手にすると、そのまま自分でどこかに捨てるつもりだろう、手に持ったままペコペコ頭を下げながら席を立って館内から出ていった。忠信も笑顔を返し軽く手を振り見送った。忠信は、きれいなハンカチとウェットティッシュを取り出し、老人が舐めたり触ったりしたところも改めて拭いた。そして沙織の股間まわりもきれいに拭いた。ショーツを手に取り、足を通して履かせた。彼女のハンドバッグからブラジャーを取り出し、沙織の右腕からシャツを脱がしブラを通しシャツを着せ、反対側も同じように腕を通した。フロントホックを止めてシャツのボタンも留めた。沙織はその間、ぼーっとしたまま動かなかった。




「さ、終わったよ。大丈夫?」




呼び掛けると、沙織はゆっくりと反応し上体を起こした。そして上気しまだ冷めやらぬ目で忠信を見つめた。




「あ、ありがとう。」




やっとの事で立ち上がると、フラフラと上映室の出口へ向かった。忠信は心配で寄り添うように付き添った。まだ映画は上映中だった。今かかっている作品はかなり長い映画のようだった。暗闇と、チラチラとうごめく明かりのなか、二人は退席した。ロビーに出ると、やはり沙織はかなり疲れたらしく、




「ト、トイレ・・・。」




とだけ言うとフラフラと女子トイレへ向かった。忠信は近くのベンチへ腰かけて待った。何度も潮を吹いていたし、疲れたのだろう。気分を害したりしてなければいいが。時間が経つにつれ忠信はだんだん心配になってきた。実際には10分も経っていなかったが、沙織が出てきた時にホッとした。沙織はおずおず、といった態で笑顔を見せた。




「すみません、今日はここで解散でもいいですか?疲れてしまって・・・。」




沙織は照れながら笑顔で言った。先ほどまでの痴態が思い出されるのだろう。とても恥ずかしそうだ。それは忠信も同じだった。暗闇の中尻を出して腰を振っていたのだ。思い出すとかなりみっともない。




「え、ええ。そうですね。かなりエネルギー使いましたからね、お互い。ここで解散しますか。」




「ありがとう。じゃあ、今日はどうもありがとうございました。とても楽しかったです。」




「いえいえ、こちらこそほんとに楽しかったです。お付き合いいただいてありがとうございました。」




「とんでもない、付き合ってもらったのはこっちですよ。ありがとうございました。」




さびれた映画館の誰もいないロビーで、仕事の取引でも終わったかのように二人とも挨拶を交わした。


沙織が先に歩き始めた。




「では、お先に失礼します。」




「はい、お疲れ様です。失礼します。」




「では。」




「では。」




彼女の後姿を見送り、しばらくこの映画館の上映予定ラインナップのチラシをチェックした。10分ほど待って忠信も映画館を出た。この映画館、今度は普通に映画を見に来よう、と思った。今は忠信も疲れていた。若い女性の性欲はすごい、と思った。しかし、こんなに楽しい事もない。沙織は大丈夫だろうか。もうこれっきり、ということも考えられる。忠信はまだ心配だった。嫌な思いはしなかっただろうか。楽しんでたとは思うが、こちらが気づかなかった可能性もある・・・・。




SNSに連絡が来た時はホッとした。『うさ吉』、沙織からだ。




「今日はほんとにありがとうございました!すみません急に帰ってしまって。実は、あんなに自分が乱れるとは思ってなかったので、恥ずかしくて恥ずかしくて・・・・。朝森さんの顔をまともに見れなかったです。」




そうだったのか。忠信は納得した。




「最高に気持ち良かったです。クセになりそうです。」




ふふっと忠信は笑った。そして最後の二文を見て更に、ニンマリした。




「また必ず連絡します。また一杯イカせて下さい♡」










END


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