やり直しの異世界生活 ~死ぬたびに神や悪役にだって身分が変わる無限コンティニューで得た知識と経験で陰ながら世界を救っています~

憂木 秋平

第1話 転生したら屋敷の中、獣人のメイド服の少女

「…え?」


 ここは、どこだ?周りを見渡してみるが、全く心当たりがない。


 今までの人生で見たことのないほど豪華な屋敷の中だった。


 必死に記憶を掘り出してみる。


 俺の名前は、神崎修斗。年齢は十八歳で、職業は高校生。


 大丈夫だ、記憶喪失ではない。だとすると、何があってここに居るんだ。


 しばらくの間、再び頭を抱えて記憶を掘り起こす。


 そして、ようやくつい先程の事を思い出す。


 …そうだ。そういえば、俺は家の階段から落ちたんだった。それで、意識が途絶えて…。


 もう一度周りを見渡す。そこは、豪華な屋敷の中で、頭に角の生えた少女や、獣の耳の生えた少女が、メイド服を着ていた。


 目を凝らしてみるが、見間違いではない。頬をつねってみるが、痛みを感じる。


 …つまり、これはもしかしたら異世界転生という奴ではないだろうか。


 そんな作品をたくさん読んだことはあったが、まさかこうして自分が異世界に来てしまうとは。死後の世界の事は誰にも分らないと言うが、こんなことになるとは予想外すぎる。


 しかし、一方で気分が高揚してもいた。異世界転生に憧れていなかったといえば嘘になる。それどころか、毎日のように夢見ていたくらいだ。


 自分にはどんな能力があるのか、ここはどんな世界観なのか、と考え出すと止まらない。


 だが、待てよ。異世界転生だとして、自分はどうしてこんなお屋敷の中にいるのだろうか。まさか、気絶していたところを運び込まれて、治療でも受けているのだろうか。


 近くに立っている、獣人の少女に尋ねてみる。


「あの、すみません、俺って今どんな状況ですか?」


 単刀直入に聞く。こう言うのは取り繕っても仕方が無いものだ。


 すると、獣人の少女は怪訝そうな顔をして答えた。


「何を言っているのですか、ご主人様。敬語なんてやめてください。」


「…へ?」


 この少女の言葉の意味を読み解くと、俺はこの少女のご主人様と言うことになる。近くに居た、もう一人の少女にも尋ねてみた。


「俺って、君たちのご主人様で良いの?」


「変なことをおっしゃらないでください。それ以外の何だというのですか。」


 …どうやら、俺はこの屋敷の主人として異世界転生したらしい。まあ、能力がもらえるようなこともあれば、こうやって身分が与えられていることもあるか。


 しかし、そうなると気になることが一つ出てくる。俺の過去はどうなっているのだろうか、というものだ。もちろん、俺にはこの屋敷の主人として過ごした記憶などない。そこは確かめておかねばと思い、先程の獣人の少女に聞いてみる。

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