【精神科入院37日目】金沢ボカロ部メンバーで歌う「千本桜」

週末の例によって「カオス」なカラオケ。

演歌やらおじさんおばさん達の未だに80年代アイドルやバンド。90年代の薄っぺらいポジティブソング。2000年代以降のものがほぼ出てこない。


1曲目だけ選曲を気にしていたので、古くもなく新しくもなく。

先日まで「明日何を歌おうか」と、多少なりとも盛り上がれば良いな⚫田←町たさん?名前確認。

と相談をしていた女性は他のフロアに消えてもういない。

⚫田さんは、今日はチェッカーズを座りながら、歌っていた。

仲良しのだァ君はカラオケの時はいつもいない。

だぁくん達若者は、「思春期プログラム」があり、時間が被るということもあるのだが、部屋に戻っているか、テレビのある共有スペースに引きもどる。

蓮くんも、部屋に戻るかいつもどおり絵を書いているかしている。

他にも何人か若い子はいるんだけど、だぁんくんと同じ名前の20過ぎの子も歌っているのを見たことは無いし、あの輩の隣で奴の手を握りうっとりしていた⚫⚫ちゃんも歌っていた記憶ない。

時折、フロアがちゃんと決まるまでなのか若い子がいても、彼らもまた歌っているのを見たことがない。

「何故だろう?」

ずっと疑問に思っていた。


多分に「下手なのだろうな」と、「あまりにも若い子が少ない中で、おじさんおばさん、おじちゃんおばあちゃんいるところで歌いにくいんだような。平成の曲でも生まれる前の曲ばかりだし」と。

ふたつの仮説を立てていた。

僕は全く上手くは無い。

音痴。

でも、何となく音の取り方は分かってきていた。

これでもボカロP。ボカロで曲を単に作ってるだけではなく、自分がボーカルとして歌うピッチの安定のさせ方やその為にする事。

車を運転しながら、意識して歌っていた。

音楽の趣味も年齢もバラバラ。なら、1曲目は、それなりに下手なボクが歌っても元からの曲が聞き心地のよい曲を選曲。


盛り上がるはずなんて有り得ない。

有り得ないが、そこにいる30~40代の中年のおはさんたちは嫌いだったし、「その曲いつの誰の曲?」を歌っていた。

が、それが例え他の誰であれ、流石に村八分の老犬にはしなったが、合いの手を入れたり、盛り上がらなくても。その雰囲気作りはしていた。

そして。もうひとつ。

僕がしたのは「下手でもいいから歌え」と、音痴な僕からの裏メッセージ。

(届くといいな。)

下手でも大きな声で、普段は口を横に開かずに同じ口の大きさでとトーンで話す自分だけど、歌う時は横に意識して開いてうたった。


フミは、割と最近と言っても、2000年頃の古い曲。平成の元気があった時代の曲。

「よく知っているね」

彼女は、まだ20歳過ぎ。

中島美嘉の「 」

本家同様、彼女も高音を出してしっとりと歌い上げる。

この曲は、彼女が生まれる間際の曲。

「お客さんの前で歌っているんだ。」

彼女は、夜の仕事。

お客さんに酒を勧めたり、一緒に飲んだり。

しつこい嫌な客は「あの客嫌です」と、ボーイに言えば断れるとの事。

仕事で覚えたのだろうけれど、

フミは普段明るい女の子なんだが、どこか影が落としているのも感じていた。

フミが歌う中島美嘉は、声も、歌っているその姿でさえ、大人になるにつれ人が失う「何か大事なモノ」を歌手でもない彼女から何か醸し出された。

奇抜ではなく、エッジの効いたデザインの服を精神科入院病棟で着て歌う、色白で細身の彼女が歌うその妖艶な姿が、南の光が大きく取り込める食堂フロアに両手でマイクを握って冬の歌を歌う「明るいのが嫌い」と言う彼女を陽が祝福している様だった。


蓮くんは、後に僕が歯医者か何かで出払っていた時にkingunuを歌い「そんな最初から高音で始まる難しい曲を選ぶなよ」通りすがりに耳にするのだが、「音痴の僕が言うのだから下手なんだけど、何か良かった。下手でも歌えばいいんだから。恥ずかしがっても良いのだから」と、普段は全く話さないだぁ君の横に座っりながら歌っていた。


「そして!」

デジモクが何故かなく、曲の番号を昔ながらのカラオケの本で拾わなければいけなかった。

毎回、歌う曲を探さないといけなかった。

番号を覚えてはいけない、番号のメモを残してはいけない謎ルールがあった。

しかも、歌いたい曲全て掲載されている訳では無い。同じミュージシャンの有名な曲でもない曲はない。

歌いたい曲を探すのはかなりの至難。

そう言えば誰か言っていたよな。

「千本桜がある」と。


千本桜を入れて歌った。

4人で。

2週間前だったか。

⚫⚫←名前確認 が居た時、いい歳をした大人が3~4人でぞろぞろと引き連れて、浜崎あゆみの曲を歌っていたよな。

中島美嘉よりもう少し古く20年は経っている。大人が1人で歌わず、何かみっともなかった。

カラオケ日は、人が沢山いる時といない時と綺麗に分かれ、その後、僕は1人で玉置成美の「give me up」を終わりかけに歌った。

本家とキーが違い、本家より明るいシンセで、まだボカロが出る少し前の電子音の曲。

軽快なダンスナンバーなのだが、歌っているこちらがケガをした。


ともあれ、マイクは2本。

「歌い手」は4人。

俺、マイク無し。

そう言えば後にも先にもユーは歌わなかったと記憶しているが、まあいい。


千本桜。


大胆不敵にハイカラ革命。

らいらいらくらく反戦国家

日の丸印の二輪車転がし悪霊退散ICBM


環状線を走り抜けて東西奔走なんのその

少年少女全国無双 浮世のまにまに


「千本桜」 黒うさP


1人図太い低い声で歌った。

下手で良い。下手で結構。

その「上手い」とか「あいつヘタ」とか、そんなの吐き捨てるくらい古今東西いる。

それよりも、下手でも一生懸命頑張って、そこにメッセージを入れて、観る者。聞いた者。

『大事な何か』が伝わればそれで良い。

それが、ヘイトでもアングリーでも負の感情で良い。キレイに生きる必要はない。 さりとて、汚れて生きる必要もない。美しく生きられればそれで良い。そこで咲けば。

花とはそんなもの。

さっきここで歌ったフミがそうであったようにー。

フミはある時学校に1度も行かなくなったんだけれど、聞いていれば行けなくなった。

我が身で考えれば「ゾッと」する。

ある時、ツマラナイオトナが知ったかぶり、何かツマラナイ事を吹聴したのだろうけれど、フミに何の罪があるか?

名は体を表す。

フミは親の込めた名前の通り、美しい子だった。

歌っている姿は夏に差し掛かった昼前の太陽が降り注ぐ2階フロアで冬の歌を歌うフミは、季節がシンメトリックと言うか、お洒落が大好きなボクから見ても、そのファッションが他の患者とコントラストを描き、本当に歌姫の様だった。

季節外れの曲だったけれど、その冬の華の曲のように、まだちゃんと「高嶺のー」にはなれてはいなく、その後、安い男が何人か集まり彼女だけでなく僕にもトラブルも起こるのだけれど、キミも今後困難があろうとも美しく咲ける「花」なんだからー。


(花は美しく、人は花を求めて、花になれなかった安いハエが群がる

それが嫌なら、「高嶺の花」になれば良いんだよ。

寄り付かなくなるから、追い払う必要も無くなるんだよ。)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る