05 勃起不全の呪い
「勃起不全の魔法だぁ? 聞いたことない魔法だな」
『ほとんど呪いみたいなもんで……呪術と重ねて作られた魔法で』
そう聞けば、確かにある種の強制力と永続力が感じられる。
元気か? と問いかけてみても小声でずっと「ムリ」って返ってきてる感じだ。
『一応、エルフの女性には全員使える魔法でして……親から教えられるモノで。本来ならば行為の前に解くのが決まりで……それをボクは忘れていたんです……』
「へー……」
エルフならではの習わしというかそういうのか。
そういうところまでとやかくいうつもりはないから、まぁ、いいか。
「呪いの件は分かった。で、そろそろ顔を上げてくれんか」
『いえ。これはボクの不始末だ。本当に申し訳ないと思ってます』
下着を脱ぎ散らかしたまま土下座してるフェイ。
服を着ろと言ってもさっきからずっとあの体勢だ。
まぁ、話をまとめると「フェイ自身が自分を襲おうとした者へ呪いをかける」ように魔法を施していた。それを見事に俺が踏み抜いて呪いをかけられたという訳だ。
まぁ、エルフだし。見た者を欲情させるっていうのは想像に難くない。
実際問題、フェイは可愛いしな。
「俺も神官だが治らんなコレは。聖剣が呪われた聖剣になってしまった」
『誠に──』
「今のは笑ってもらった方が良かったかも」
『(精一杯の笑みを浮かべています)』
「嘘つけ。で、これはどうやって治すんだ?」
『治せ──』顔を上げたフェイは思い出したように首を振った。『ません!』
「な、治せない? えっ……話が変わってくるぞそれは」
ガタッと座っていた椅子を蹴っ飛ばして立った。
治すことができる前提でこんな余裕な感じで話を進めてたんですが。
治せないってことは一生このままってこと……?
一生このままってことは……ずっとこのままってことで。
ずっとこのままなら……それは……嫌なんだけど。
『解呪は口でしないと駄目なので』
「……口で?」
カチャカチャとベルトを解こうとすると「それじゃない」手を止められた。
『これ、元々自分にした呪いだから自分で解呪しないと駄目で。それの解呪の仕方は、口で詠唱しないと駄目で。ボクは……喋れないから』
「待て。整理だ。治らない理由は口で詠唱しないとだめ。それは……えーと……」
『かけた時と同じ状態、方式で詠唱をすることで解呪をすると決めてるから』
「その時にはまだ喋ることができてたから、今の状態では解呪はできないと」
話をまとめると、フェイは頷いた。
「じ、じゃあ俺はもう駄目ってことか!?」
『喉が治ったら……ほんとうにそれだけで治るんだけど……』
「じゃあ、治しに行くぞ! 緊急だ! ちなみに喉はどうやったら治る!?」
『わかんない……ボクも色々試したけど治らなかった……』
「なら、結構ガチでなんでも治るのを探さないと! あといい加減服を着ろ!」
『だけど……』
「立てェい! フェイ副隊長ッ! 服を着ろ!」
仕事モードの声を出すとフェイは思わず立ち上がり、いそいそと服を着始めた。
「よぉし。我々の目標はなんだ。言ってみろ」
『わ、我々の目標は、隊長の勃起不全を──』
「ばかやろう! 違う! フェイの喉を治すことだ! 俺の聖剣は二の次だ!」
『はっ! 承知致しました! そして申し訳ありませんでした! すごく、なんか、そのいい雰囲気でしたのに!』
「全くだ! だがちょっと面白かったから良しとする! あと、フェイに認められた気がして俺は嬉しかった!」
『ははっ! ボクはかねてから隊長のことを慕っておりました! ただ……貧相な体ですので不安でした!』
「ばかやろう! 俺は体よりも気持ちを重要視している! その点、フェイ以上に興奮した女はいない!」
『た、隊長ッ!』
「だから自信を持て! フェイは最高の女であると! この俺が認めているのだ!」
張り上げていた声を収め、フェイのフードを被せた。
複雑な気持ちはあれどフェイはどこか嬉しそうに笑っている気がした。
俺の息子はも皺を寄せて笑ってるけどな。なーんて。辛くなってきた。
「よっしゃ、明日にでも仕事を辞めるって伝えにいくぞ」
『いいの!?』
「息子がいねぇ俺にいる唯一の息子の元気がないんだぞ!? 助けるに決まってるだろ! それに自分を大切にできねぇ奴が他人も幸せにできる訳ねぇだろ! まずは自分! だからフェイと俺は自分を大切にする必要があるっ!」
『わ、分かった! でも、大丈夫かな。うまくいくとは思えないけど』
「任せろ。俺の土下座には定評がある」
『それならボクも』
「お前の土下座は教育上良くないからさっきキリで終わりにしろ。二度とするな」
『ええっ』
任せろ、とお馴染みのサムズアップ。
とりあえず今日はその宿で寝ることにした。
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