#2-4 大久保 忍
3年B組。18歳。A型。
身長160センチ。
家族構成:父・母・妹・イヌ
私はいつもどこででも中心にいるような子だった。
中学では運動も勉強もできる方だし、明るいし、分け
それにちょっとモテた。細身で大人びた顔は少しキツめだが悪くない方だと思う。学校の男子が告白してくることもあったし、私から告白すれば断られることはなかった。
しかし高校に入って上には上がいる事を知った。
入学早々に同じクラスに目を見張るほどかわいい子を発見した。近くの席のその子は
この子がこのクラスの中心になるだろうと入学当初に確信した。
私は彼女みたいな女子高生になりたいと思って、雑誌を買ってメイクを研究し、いつも一つにまとめていた長い髪を短いボブにした。スッキリした顔にボブが似合うと美容師に提案された通り、大人びたクールな女の子になった。性格もどちらかといえばサッパリしているので、内面と外見が釣り合った気がした。
瑛莉華と仲良くなりたかった。
一緒にいれば中心にいられるし、かわいい彼女が友達だと自慢できるし、それに不思議な事に自分もかわいくなれるような気がした。
後ろに一つ結びにして、買ったままの制服を着て、中学生の延長の飾り気のない当初の私では瑛莉華は相手にしてくれないだろうと思って、自分を磨いた。
入学して2ヶ月くらい、やっとおしゃれが身に付いた私は瑛莉華と仲良くなろうしていた。今なら彼女は友達になってくれるかもしれないと話しかけるタイミングを伺っていた。
「大久保さん、その髪型似合うね。かわいい」
瑛莉華の方から話しかけてきた。
「あ、ありがとう。石川さんこそいつもかわいいね」
「うれしい!瑛莉華、女の子にかわいいとか言われないからぁ」
それは彼女がかわいいから女の子は嫉妬して言わないだけだ。その逆に男にはたくさん言われているのだろう。
彼女はよく笑うし人懐っこく話してくれる。かわいい子には実は裏表があると言われるが、ここまでかわいいと逆に性格も良くなるのか。
彼女が茶色の髪をかき上げた時、耳たぶがキラリと光った。
「石川さんピアス?開いてるの?」
「うん。1年くらい前かなぁ」
やはり彼女はおしゃれに余念がない。
私もピアスを開けたいというと、彼女が自分が施術してもらった地元の皮膚科を紹介してくれることになり、休みの日に会う約束をして私達は仲良くなった。
放課後はいつも一緒にいて
「瑛莉華、女友達いなかったから忍と仲良くなれてうれしい」
女の私でもキュンとするような事をかわいい笑顔で言う。私こそ素直な瑛莉華と仲良くなれてうれしかったし、楽しかった。
予想どおり、──予想以上に、瑛莉華はクラスではなく学年の中心となった。女子も男子も彼女と仲良くなりたがっていた。
いつの間にか仲良くなった女の子は5人、学年の中心の女子6人組だった。その中で放課後ヒマな私と瑛莉華と
そして同じように放課後ヒマな男子3人、
私の目当ては智也だった。
2年の時、密かに智也を思っていた私は、同じクラスの草太に話しかけた。草太が智也と仲良くしているのは知っていたので、草太を通じて智也に近づけるかもしれないと思ったからだ。予想外に草太とは気が合って楽しく、ノリもよくて、すぐ打ち解けた。
「俺達と一緒に遊ぼうぜ、友達連れて来いよ」
と、彼の方から誘ってくれたので、早速望みは叶い、智也と仲良くなれた。
しかし智也の表情や行動はあからさまで、瑛莉華を好きな事がすぐわかった。
智也は瑛莉華が微笑むと、とびきりの笑顔になる。私にはそんな顔をしてくれない。
瑛莉華や真帆とは遊びたいし、草太とも陽介とも気が合う。6人で遊ぶのは楽しいのだが、そんな智也を見ていたくなかった。
6人での遊びの誘いを断る口実を作ろうと、私は少し前にナンパされた大学生と付き合い始めた。
その大学生をどこまで本気で好きだったのかはわからないが、年上の男は女の扱いがうまくて楽しかったし、頼りがいもあったし、車を持ってたし、少し大人になった気分を味あわせてくれた。それに智也を忘れさせてくれた。
瑛莉華は3人の気持ちに気がついていないようで、先輩と付き合い始めた。見事に3人落ち込んでいた。もしかしたらチャンスが巡ってくるかもしれないと、大学生の彼をほったらかしにして6人での遊びに戻った。
夏祭りに6人で行こうという話が出たが、瑛莉華は付き合っている先輩と行くと言って断った。結局5人で夏祭りに行くと、先輩に寄り添った浴衣姿の瑛莉華を見かけた。
男3人は浴衣の瑛莉華に興奮しつつも、更に落ち込んでいた。
仲良さげに歩いていた瑛莉華と先輩は、その2週間後くらに別れた。1ヶ月くらいの付き合いだった。落ち込んでいたはずの3人は息を吹き返し、また瑛莉華に夢中になった。
結局私にチャンスはないし、大学生の彼氏は大学の他の女とも付き合っていたし、何もかもがどうでもよくなって彼氏とは別れた。当分恋愛はしないと思った。
陽介とは地元が隣で、同じ駅を利用していたのでよく一緒に帰った。
彼は賢く冷静で聞き上手なので、私はよく電車の中で自分の事を話して聞いてもらっていた。
大学生の彼氏と別れた事も、智也の事が好きだった事も、陽介だけは知っていた。
「忍は、明るくて男子とも気さくに話すし、見た目だって悪くないし、絶対イイ恋人が見つかると思うよ」
優しい彼は私の愚痴や不満を聞いてくれて慰めてくれた。
これも予想通り瑛莉華と智也は付き合い始めた。まだ智也をきっぱり忘れられてはいないが、それほど苦しくはなかった。瑛莉華なら仕方ない。
でも心も身体も淋しい。大学生の元彼に甘やかされ、いろいろ教えてもらった私は独りでいることに淋しさを感じ始めていた。仲の良い瑛莉華と智也を見るとなおさらだ。
瑛莉華と智也と草太とで花火を見に行った日、私は草太を誘った。
瑛莉華を好きだった草太もきっと同じ気持ちで、誘えば来ると思った。一晩だけでもいいから一緒にいて欲しかった。心に開いた穴を草太で埋めたかった。
「ウチら付き合おうよ」
と、言ったが草太は返事をしなかった。
だけどその日のうちに草太は私とセックスをした。
そして行為を終えて彼は言った。
「本当に付き合う?俺ら」
草太とは趣味も合うし、気も合うし、一緒にいて楽しいので付き合うことにした。
これでやっと智也を忘れられる。淋しくもなくなる。
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