第58話 京都・三条大橋③
同じ頃、ミケコは何をしていたかと言うと……。
「わっ、一茶さん!?」
自力で橋桁をよじ登ってきた、弥次喜多一茶とご対面してしまった。
「はあ、はあ……。ミ、ミケコさん!」
金のシャチホコに黄河流域まで連れていかれ、ようやく戻ってきたと思ったら、また鴨川で水浴びする羽目になって、もう散々である。
そんな彼がしがみついているものを見て、目ん玉が飛び出るぐらい驚いた。
それは、たった今、ミケコがはめ替えたばかりの、欄干の擬宝珠。
「あっ!?こ、これは!ミ、ミケコさん、ま、まさか!?」
「ええ、ちゃんと、替えときましたよ。もうこれでバグは出ませんから」
「あ、あ、あ……!」
と、一茶は頭を抱えてしまった。
「あら、どうなさったのですか、一茶さん?」
「ミケコさん、この擬宝珠は、実は……」
ガックリとうなだれる一茶。
彼はここに来る途中、配下の伊賀忍者に聞いて全てを知っていたのだ!
さすがは伊賀忍者、ユラの暗躍も、十返舎開発の陰謀も、くまなく調べていた。
「ああ、もう終わりだ。我が弥次喜多グループも、これで、終わり……。これで、ミケタマを嫁にする野望も……、ああ……」
「一茶さん、この擬宝珠がどうかしましたか?」
「ミケコさん、もう手遅れです。すでに十返舎開発が仕込んだ破壊プログラムが発動し、東海道ゲレンデは、ゴルフカントリーに変わってしまうのです。ほら、見る見るうちに、雪が芝生に変わってい…………、かないな。あれ?」
「一茶さん、擬宝珠をよく見てくださる?」
「擬宝珠はもう新しいものに……。新撰組の刀傷の上に、二つのサイン?えっと、これは……!?」
「気に入ってくださいましたか、私たちのサイン?」
「え?」
「一つだけ古いのもどうかと思いまして。新しく、サインを入れといたんです。私たちミケタマの」
「ミ、ミケタマの、サイン!?それでは、この擬宝珠は……!?」
「元の擬宝珠ですよ。破壊プログラム入りの擬宝珠は、こっち」
と、ミケコはユラから渡された方の擬宝珠を一茶に見せてあげた。
「これは、こうしちゃいましょう!」
ミケコは、それを鴨川に放り投げた!」
ドブン!
と、鴨川の流れに乗って行きかけた擬宝珠だったが、そこに金のシャチホコが待っていた。
パクッ!
エサだと思って、食いついてしまう。
その一部始終を見ていた、甲賀忍者のユラ。
「くっ、任務失敗か……!」
ピイーッと、指笛を鳴らした。
それまで伊賀忍者や新撰組ロボットと交戦していた甲賀忍者軍団は、一斉に引き上げていった。
気づけば、ユラの姿も見えなくなっていた……。
「さてと、これで一件落着ね」とミケコ。
「楽しい旅だったわね」とタマコ。
「これから、どうする?」
「京都でおいしいものでも食べていきましょうよ」
「そうよね」
「そう、そう」
と、三条大橋を後にするミケタマである。
「あ、ミ、ミケコさん、タマコさん!京都なら、僕がいいところにご案内します。金閣寺を借り切って、お茶でも飲みましょう!」
と、ミケタマの後を追いかけようとした一茶だったが。
「あら、一茶さん。あれはどうなさるの?」
「え?」
振り返った一茶は、驚愕した。
破壊プログラム入りの擬宝珠を食べてしまった、金のシャチホコ。
「うあ、あ、あ、あ、あ〜〜〜っ!!」
非常に栄養価の高い食べ物だったのであろう。
もはや名古屋城の屋根には乗れないぐらいに、巨大化してしまっていた。
パクッと、一茶を口に咥えると、悠々と鴨川の流れを下っていった。
まだ忍法・外来魚の舞が続いている。
お供にブラックバスやブルーギルを従えて、故郷に帰っていくのだろう。
「さあ、何を食べましょうか」
「湯豆腐で温まるというのは、どう?」
「いいわね。熱燗もキューっとね」
「冷たいビールでもいいわよ」
「ワインもいいわ」
「焼酎も!」
「この際、もう少し休暇を伸ばして、灘の酒蔵巡りするのはどう?」
「いいわね、賛成!」
男たちの狂想曲には目もくれず、次のお酒を求めて、去っていくミケタマなのであった!
(おしまい)
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