第40話 知立

 翌朝、ゆっくり岡崎城を出発した二人は、愛知環状鉄道線を横切り、矢作川やはぎがわを渡った。

 ここに架けられているのは、東海道三大橋の一つ、矢作橋やはぎばしだ。

 江戸時代には、東海道で最長の木橋である。


 橋を渡り終えたところに、当時日吉丸と名乗っていた豊臣秀吉と、蜂須賀小六が出会ったと伝えられる「出会之像であいのぞう」がある。

 しかし、史実は、矢作橋が架けられたのは、秀吉が亡くなった後。

 これは江戸時代にベストセラーとなった絵本、太閤記の名場面の再現である。


 それはそうと、二人は遅い朝食を食べに喫茶店に入ることに。

 名古屋地域の喫茶店と言えば、モーニングが有名だ。

 ドリンク名の後に続いてモーニングと言えば、他地域で言うところの、モーニングセットになる。

 しかもドリンク代のみでだ。


「ホットコーヒー、モーニング」

「私も」

 ゆで卵と半切りトーストがついてくるのが、クラシカルな形。

 トーストはこの地域らしい、小倉トーストを選んだ。

「トーストにあんことバターの組み合わせって、最強だわ」

「朝から、元気出るわね」


 思わず長居をしたくなる雰囲気の喫茶店であったが、まだ旅の途中。

 遅めの朝食を終えた二人は、次の知立ちりゅうに向けて、名鉄線沿いをぐんぐん進んだ。

 岡崎から知立までは、約15キロ。

 東海道の宿と宿の間では、長い方だ。


 岡崎を出てからは、基本的に市街地を進む。

 名古屋に近づいていくにつれて、だんだんと人も家も多くなる。

 名鉄三河線を横切り、知立駅に近付けば、そこは知立の本陣だ。

 近未来に復元された知立城が、二人を出迎えてくれた。


「ねえ、そろそろお昼にしない?」

「朝遅かったのに、もう?」

 不思議と、時間通りにお腹が空くものである。

 しっかりスキーをしてきているということもあって、二人は知立城でお昼ご飯にすることに。


「きしめん、それと、味噌カツ!」

「名古屋の定番よね」

 定番、定番と来たら、デザートも定番で攻める。

 名古屋名物・ういろうだ。


「ねえ、タマコちゃん。ういろうって、どんな味?名古屋出身の人に聞いても、ういろうとしか言えないって言うのよね」

「うーん、ういろう、としか言えないわね」

 知立城を出て、さらに先へ向かうのであった。

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