第7話 藤沢

 戸塚宿を出て、しばらくなだらかな坂を登っていく。

 それがJR藤沢駅近くからは、下り坂。

 道場坂どうじょうざかと呼ばれるところだ。

 気持ちよく滑り降りていく。


 藤沢の本陣を過ぎると、源義経首洗い井戸。

「何で昔の人って、すぐに首を洗いたがるのよーっ」

 と、霊感の強いタマコは早くこの場を離れたい。

 スキーのエンジンを吹かして先に行く。


 お化け屋敷のときのようなことは、二度とごめんである。

 もっとも、ここにはアトラクションは用意されていない。

 ただの史跡である。


 小田急線の線路を越えて、引地川ひきじがわを渡る。

 これからJR大磯駅の手前で線路の南に出るまで、JR東海道線のすぐ北側を、線路と並走するように滑っていく。


 藤沢と言えば、景勝地で知られる江ノ島もある。

 この辺り、カラッとした気持ちのいい空気感だ。

「でも、夏に来たかった〜」とミケコ。

「あら、冬も素敵よ〜」とタマコ。

 夏はサーフィン、冬はスキーが、近未来の湘南スタイルだ。


 しばらく緩やかな道のりが続くが、逸る気持ちを抑えて、途中休憩しないと、先が思いやられる。

 茶店に入って、一休みである。


「えーっと、お馴染み東海道饅頭の他にも、東海道最中に東海道三色団子もあるのね」と、メニューを見てどれにしようか悩むミケコである。

 これらの東海道とつくお菓子は、全て弥次喜多グループのオリジナル商品。

 近未来の旅人たちに親しまれている。


「これは?東海道カチカチアイス」とタマコ。

 昔、東海道新幹線の車内販売に、よく似たものがあったそうだが、それとは別物である。

「ふーっ、一服、一服」

「一服は旅の醍醐味よね」

 と、海の方を眺めながら、身も心も充電。

 英気を養う。


「さて、行きましょうかね」

「そうそう、私たちがまだ若いうちに」

 一度、腰を下ろすと、そのまま根が生えてしまいそうだが、いつまでもここにいるわけにはいかない。


 特に歴史マニアのミケコは、気持ちが昂っていた。

 それというのも、今宵の宿の予定は小田原宿。

 小田原では、なんとあの小田原城に宿泊することができるのだ!

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