第2話 翌朝のラブホ、そして学校へ
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きし●ベッドの上で ……
優しさを持ち●り ……
(あれ、なんでこんなに懐かしいメロディが流れてるんだろう。僕はいま……。ああ、そうか僕はついについに……)
きつ●身体抱きしめ合えば……
(茜と、乳繰り合うこうとができたんだ!!!!)
『バキャバキバキャッオオ!!!!!!!』
(あれ、でもなんか。茜が僕のこときつく抱きしめすぎて、変な音なり始めたんだけど、あいたたたたたたたたったああああああああああああ!!!!!)
それか●また二人は目を……
(あいたあああああああああああああああああああああああああ)
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「なんだこれはあああああああああ!!!!!!!」
絶叫。
絶叫して、安達信二は目が覚めた。
信二だけが、目を開けて飛び起きた。
夢を見ていた。
知らない天井がある。そうだ。そうだった。
信二はいまラブホテルの部屋にいる。一人で。しかもなぜか全裸で。
ラブホテル一人入店、孤独全裸は正直きつい。かなり、きつい。
信二にとって過度のストレスは人格を崩壊させるみたいだ。いや、誰でもそうか。あまりにもショックな出来事があったとき、程度の差こそあれ、人は何かしら変わってしまうものだ。信二もそのうちの一人ってわけだ。
「はぁはぁ……。僕は昨日……」
信二もいろいろと思い出してきた。
昨日の夜、茜に一周年記念をすっぽかされたこと。
そして、さらにあろうことか、その日に茜は別の男と会って乳繰り合っていたこと。しかもラブホテルで。。。
「高校生がラブホテルで乳繰り合うとか……。どうなってんだ。今の時代、普通なのか。。。通報してやろうかと思ったくらいだけどさ。なんだかここ、風営法に引っ掛からないところみたいだし。。。茜、あいつ……きっと常習犯だな、これ」
昨日の夜、信二は気が狂ったようにスマホでそういうことを検索した。だが所詮ネットに転がっている情報だ。その信頼性なんて風が吹けば飛んでいくようなものだし……
それにもう、信二には、どういうことが正しいとか、間違っているとか。そういう理屈はどうでもよくなっていた。いや、考える力がなくなっていた、といったほうが語弊はない。
「あー、これが彼女を寝取られたあとの男の心情のリアルか。しかも寝取られたと分かったすぐに、一人ラブホテルで一夜を明かしたんだ。。。正直、自分でも気が狂ってると思うわ……。そういえば、寝る前に部屋のテレビでAV流して、『●INGヌー』の井口さんみたい全裸で奇抜なダンスしたっけ。あはは、僕、何してんだろ」
床に脱ぎ捨てられた、一張羅。それに袖を通すことは、もう二度とないだろう。いや、それだと帰れないじゃん。。。
「ふぅ……。これからどうすっかな」
どんなことがあっても。決まって朝はやってくる。
明けない夜はないんだ。
このフレーズ、今思い出すもんじゃないなと思いながらも、信二は朝の支度を始めた。
「今、茜はどうしているだろうか。まだ乳繰り合っていたら、さすがに堪忍袋の緒が切れる。って堪忍袋ってどこにあんだよ、クソが!!!あったとしても、もう切れてんだよ!!!尻の穴にでも突っ込んでやろうか!!サナダムシみたいだな!ダイエットしてたの?アハハハハハハ( ̄∇ ̄;)ハッハッハ!!!!」
信二は服を着る。一度家に帰らないと学校にはいけない。
でも今はちょうど8時を回ったころだ。これでは一限目には間に合わない。遅刻確定だ。
ドアを開ける。
しんとラブホテルの廊下は静まり返っていた。
廊下を歩く。誰にも遭遇しない。静かな朝。
エントランスに顔を出すと、昨日の夜に対応をしてくれたいい感じのお兄ちゃんが、ニコッとした笑顔を向けてくれた。
「よく眠れたかい?」
「ああ、一人でよく捗った、いい夜だった。」
「えっ……君は。一体。どういうことだ。俺は幻想でも見ているのか……」
信二はそのお兄さんを置き去りにしてラブホテルから出た。
外はすっきりとした青空で、昨日の夜とはうってかわって、喧騒は遠のいていた。
信二は駅の改札に向かうまでの道のりで、もう一度空を見上げる。
「本当に空が青色をしていてよかったと思う。もし緑色とかだったら、僕は生きていけないかもしれないな」
どこまでも青い空。
それは一時的にではあるが、信二の心をろ過してくれる。
東京のなかにある数少ない無料のストレス発散方法に、信二はこのとき『青空を見上げる』を正式に追加した。
「ふぅ……まあ、なんとかなるかな」
信二はそう言って、人込みのなかへと吸い込まれていった。
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信二は2限目の途中くらいに教室についた。
『すいません、久しぶりにお漏らしをしてしまって』
そういったら、先生は理由も聞かず、笑って許してくれた。教室にいるみんなは笑ってくれた。
茜は同じクラスだ。信二は教室を見渡した。しかし、まだ茜は教室にはいないみたいだった。
「いない……だと」
信二は一人だけ動揺しながら、自分の席に着く。
「…………」
その日。
茜が教室に現れたのは、昼前の数学の授業時間だった。
あと5分でお昼休憩というときにやってきた茜は先生に遅刻の理由を手短に伝え、そして信二の傍を通りすぎるとき……
こういった。
「昨日はごめんね。どうしても外せない用事があって。またあとでゆっくりね」
あまりにも残酷な言葉が、信二を襲った。
【続く】
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