第145話 表があれば裏もある
ひとまず周りに敵が居ないことを確認し、つかの間の休息をとる。無論結界を張っておくことは忘れない。
「今何時かすら分からないもんねぇ……」
生憎時計を私は持っていないので、今が朝なのか昼なのか。はたまた夜なのかすら分からない。外が見えない分、ダンジョンでは時たまそういう弊害が起きてしまう。
その為一般的なダンジョンは休憩所などで時間を把握できるよう、朝、昼、夜で色が変わる魔石が設置されていることがある。
……まぁ、今のこのダンジョンにはないだろうが。
「はぁぁ……つかれたぁぁぁ」
地面に寝転がる。流石に疲れた。
……一応地面は魔法で浄化して綺麗にしておくことを忘れない。さっきまで戦っていた場所だし。
「ご飯は…食べる気にならないけれど…何時食べる時間があるか分かったもんじゃないし、食べといたほうがいいかな」
まだこうして連続して戦うことになるのなら、今食事とか休息を取っておかないと不味い。
とりあえず、アイテムボックスに何かないか確認していく。
「…………食べ物少なっ!?」
いや、あるにはあるんだよ?あるんだけど……誰がこんなとこで生野菜丸かじりしたいのよ。
あ、パンあった。ジャムとかもある。
「ちょっと炙るか」
パンを(何故か)アイテムボックスに入っていたバーべキュー串に突き刺し、火魔法で炙っていく。
程よく焦げたら止めて、ジャムを塗って齧り付く。
「んーっ!」
単純な食事ではあるけれど、温かい食事がとても嬉しい。調理道具もあるので作れなくはないのだけれど……流石にここで作る気にはなれん!
「…んー」
食べ終わってから手を組み、それを上に向けて体を伸ばす。お腹が満たされたからなのか、少し眠い。
「…
私が言ったのは、白い木の葉のこと。そういえば、フロア全体を浄化してからあの木の葉が降ってきたんだっけ?
『確かそうだったと思うよ』
「……でも、親玉の眼を燃やした時、燃え広がらなかったよ?」
先程の階層では、最後のパラサイ・カラモスの聖火がそのまま燃え広がり、階層全体の浄化が完了した。でも、今回はそんな事がなかった。
なら最後の敵を燃やした時の火力が足りなかったのかもしれないと考え、とりあえず翡翠を突き刺して燃やそうとしてみる。
……けれど、燃えない。
「…ものすご〜く嫌な予感」
『…うん。私も』
階層の敵を全て討ち滅ぼしたからこそ、前は浄化が始まった。そして、この階層は未だ浄化出来ない。
………つまり。
「まだ何処かに居るってことよねぇ…」
しかし、気配察知には反応しない。
「面倒な敵の予感…」
光学迷彩を使って見えない敵だったとしても、気配までは消せない。けれど、気配隠蔽を持ち合わせているのなら、面倒なことこの上ない。
「…無理やり上に上がる方法とか無いかな」
今いる階層の敵全てを倒さないといけないという気持ちに苛まれるが、やはりめんど……無駄な戦闘は避けたい。
とここで、私の目が抉れた壁を捉える。
『正確には
うるさいやいっ!
ひとまず近付いてみる。すると、短刀の破片らしきものが木肌にめり込んでいるのが確認できた。
……うん、見事に砕けてるね。ていうかむしろよく破片残ってたね?!
「……あ、脆い」
触れるとポロポロと崩れてくる。シロアリに食べられてボロボロになっちゃった木みたい。
ちょっと楽しくなっちゃって、どんどん崩していく。
……すると、いきなりズボッ!と腕が埋まった。
「うわっ!?」
どうやら貫通してしまったらしい。まぁそれはそれでいいので、グリグリと穴を広げていく。
……しかし、広げた穴から覗いたのは外の景色ではなかった。
「ふぇ?」
思わず間の抜けた声を出してしまう。でも、仕方ないと思う。…壊して抜けた所は、全くもって先程まで居た場所と瓜二つだったのだから。
「え?…え?」
転移でもされたのかと後ろを振り返るものの、後ろにも同じ部屋。前を向いても同じ部屋。
「………えっとさ。これってつまり」
『全く同じダンジョンが2つあるってことだねぇ』
……そんなことってあるの!?
『ない』
翡翠が即答する。まじかぁぁ……。
ひとまず気配察知……うわぁぁぁぁ。
「やっばい」
察知出来るだけでも50体以上。
……これ全部親玉だとか言わないよね?
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