第144話 勝利と浮かぶ疑問
「うわっ!?」
転がりつつその攻撃を躱す。
……明らかに私を認識できている。つまり、眼は本体にはないということか。
「どこにあるの、よっ!」
続けて襲いかかってきた触手を切り飛ばしつつ、苛立たしげにそう叫ぶ。本体に眼がないことが分かったところで、その眼がどこにあるのか分からなければ意味が無い。
「…っ!?」
触手の攻撃がより一層激しくなる。あちらもだいぶ焦りがあるようだ。激しくなりつつも、攻撃には隙が見え始めた。
「ちっ!」
追加で現れたパラサイ・カラモスを聖火の矢で撃退する。魔力消費がだいぶキツい。このまま膠着状態が続けば、負けるのは私だ。
「眼…眼に効くのは…あっ!」
その時、私の頭にあるアイデアが浮かんだ。
使えば私までダメージを食らうかもしれない…けどっ!
「フラッシュっ!」
私は意を決して、その呪文を口にした。
途端。目の前が真っ白に染まる。
…しかし、目の前が光で見えなくなるその刹那。私の瞳が捉えた。
━━何かを
「っ!?そこかぁっ!!」
聖火の矢の射程内。しかし、触手が守っている以上、その向こうにいるであろうソレを撃ち抜くことは難しい。
その事に気付いた私は、咄嗟にアイテムボックスから短刀を1本取り出し、それに聖火を纏わせる。だが、短刀は聖火に耐えられなかったらしい。ピシッとヒビがはしる。
(あまり、長く持たない…っ)
これをただ投げるだけでは間に合わない。
どうする。どうすれば……っ!
身体強化して飛ばす?…いや、短刀が持たない。
……まて。じゃあ短刀を強化すればどうなる?
(一か八か、やるしかないっ!)
まず短刀に魔力を流す。女神サマが創ったものだからか、通りは凄くいい。
付与するのは…硬化。短刀を、耐えられるだけ硬くする。
その次に私の身体に、部分的に身体強化を強める。
「いっっっ!」
体に、主に腕に激痛が走る。けれど、ここで諦める訳には、いかないっ!
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
ブチブチと嫌な音が聞こえる…けれど、それら全てを根性で無視していく。
私の捨て身とも言える攻撃。私自身、閃光によってほぼほぼの視力が失われていたが、その僅かな視界から狙いを定め、正確に手から放たれた短刀の速度は、音すら置いていく。
そして短刀は、ソレを守っていたであろう触手を呆気なく吹き飛ばし………
「………やりすぎた」
壁に大きく抉られた様な、大穴。
……うん。明らかやりすぎたな。けれど、目的は達成できたようだ。
キシャァァァ……
弱々しい叫びをあげ、ダランと親玉の触手から力が抜ける。そしてそのまま黒い塵となり、跡形もなく消え去った。
敵の反応は……よし。もうないね。
「ふぅぅ…あぐっ!?」
気を抜いたことで、より痛みが主張してくる。うわぁ…我ながら腕がやばい。血みどろだし、手首があらぬ方向向いてるし。
……土壇場でやったけれど、治るか?これ。
「…………治った」
治っちゃったよ。魔法凄い。
……とまぁとりあえず私のことはここまでで、さっきの親玉について考察していこう。
親玉がフラッシュの魔法…まぁ、強力な閃光から咄嗟に守ろうとしたソレ。もう跡形もなくなっちゃったけれど…多分、それがあれの眼だったのだろう。
……だが、私の瞳が捉えたのは、小さな眼ではなかった。
探しても見つからなかったことから、私は壁のどこかに小さな眼があると睨んでいた。
しかし…それは裏切られた。
「……見えない、パラサイ・カラモス…」
そう。閃光によって目が焼けるほんの一瞬だったが……風景が歪み、一体のパラサイ・カラモスが現れたのだ。
そして私は、その現象を
「……あれは、光学迷彩が解けた時と、同じ」
思えば、あちらとて歪んだとはいえ、この世界の生物。ステータスを持っていてもおかしくは無い。
……だが、まさか光学迷彩を持っているとは予想もしなかった。
光学迷彩というスキルは、ほぼほぼ私のオリジナルだと言ってもいい。これは、私の前世の知識を色々と応用したものだからだ。
だからこそ、おかしい。
「……あのパラサイ・カラモスは、親玉とリンクしていた。親玉はそれなりに知能があるから、そこからスキルを共有していても不思議はない…けれど…」
少なくとも、私ほどの知能は持ち合わせていないはずだ。
……私は、底知れぬ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます