第6章 王都編

第128話 王都、再び

 えっとー…修羅場?ってどういうことかな?


「えっと、その……わたくしが六大英雄を知ったきっかけがお父様なのです」

「へー。そうなんだ」

「はい…それで、わたしくしがロビン様に誘われたと聞き、一緒にいくと言いだしまして……」


 あ、何となく話の展開が読めてきた。


「それで、キャサリンと揉めた?」

「わたくしとではなく、お母様とですわ」

「お母さん?」

「はい……『なにをしているのですか!大の大人が駄々をこねるなどみっともない!』と……」


 あぁー……


「それで修羅場」

「はい……仲はいいので心配はしていませんが、一応お母様から連絡がくるまでは帰らないほうがいいかと…」


 なるほどね。てっきり離婚の危機とかそういうのかと思ったけど、仲がいいならそれはありえないか。よくある夫婦喧嘩だね。


「なら、来ればいいじゃないか」


 突然後ろから声がかかる。振り向くとやはりと言ったらいいのか、ロビンがいた。来ればって……そう簡単なことじゃないと思うよ?貴族としての仕事とかあるだろうし。


「そのお誘いはとても有難いのですが、それはさすがに……」


 キャサリンが本当に申し訳無さそうに答えた。言い出しっぺはロビンなんだから、そこまで申し訳無さそうにしなくてもいいのに。


「なら、行けばいいか?」


 …………はい?










 という訳で、王都に来ました。いや、まさか王都に行くって案にマリアが乗ってくるとは思わなくてさ……ロビンだけだったら普通にはっ倒してでも止めたけど、マリアが賛成しちゃったら、ねぇ?


「フィリアさんもやはり凄いですのね……この距離を一度に転移するなど」


 思わずと言った様子でキャサリンが言う。今回王都に行くのは、私が転移を担当した。……ちょっと魔力が増えすぎてて怖かったから、魔法を使いたかったんだよね。それでも一割と減っていない。消費軽減の影響かなぁ……。


「フィリア、無理してない?」

「大丈夫だよ」

「本当に?この前熱出したばかりでしょう?」

「大丈夫だって」


 さっきからマリアがうるさい。

 ……いや、心配してくれてるのは分かるし嬉しいんだけど、本当に大丈夫だからそんなに心配されると鬱陶しい。


「私まで来てよかったの?」


 ベルがそう呟く。本来は私、キャサリン、ロビン、マリアだけで行こうかと思ったんだけど、キャサリンが連れていくと言い出したので誘か……ゲフンゲフン!ちゃんと説明して了承を貰ってから、連れてきた。


「わたしくしがいいと言うのですから、いいのですわ!」

「あ、ありがとう…」


 キャサリンの暴論。いや、暴論でもないのか?まぁ、いいか。


「それで、行けばいいのか?」

「はい。本当にご迷惑を……」

「いいのいいの。ちょうど久しぶりに王都を観光したかったし。ついでよ」


 そう言えば王都には最近来てたけど、マリアやロビンはそんなにゆっくりしてた訳じゃないもんね。


「……では、お詫びにと言ってはなんですが、わたくしが王都を案内しましょうか?」

「そうねぇ……」


 そこでマリアが私を見る。なんで?


「……うん。お願いしようかしら。フィリアは知らなそうだし」

「………なんでそう思ったの」

「貴方、結構顔に出るわよ?それとも、違った?」

「………合ってます」


 そうなんだよね……私そんなに王都のこと知らない。だって見て回ろうとか思わなかったんだもの。



「着きましたわ」


 キャサリンが立ち止まる。目の前には見慣れた建物が建っていた。そう言えば、来るの久しぶりかも。


「キャサリンお嬢様、お帰りなさいませ……おや、お客様ですか?」

「ええそう。お父様とお母様は?」

「現在お出かけになられておりますが」

「そう……とりあえず、客間へ」

「はい、かしこまりました。では、どうぞこちらへ」


 執事?の人の案内で、豪華な客間へと案内された。


「後程お茶をお持ち致します」

「お願い。じゃあ、フィリアさん!」

「うぇ!?な、なに?」


 いきなり私の名前を叫んだから、ビックリして変な声出ちゃったよ……


「わたくしの部屋へ案内しますわ!」

「あ、うん」

「私も行っていい?」

「もちろんですわ!さ、フィリアさん、ベルさん、行きましょう!」


 な、なんかいつもより元気一杯だなぁ……とりあえずキャサリンについて行く。

 二階に上がってそのまま突き当たり。そこがキャサリンの部屋らしい。


「さ!どうぞ!」


 そう言われて招き入れられた部屋は………なんというか、お嬢様!って感じの部屋だった。

 だってさ、ベットに天蓋ついてるよ?壁にもところどころ金の装飾が施されてるし。

 勉強の机も高そうなダークウッド。これにも金の装飾が施されている。でも、部屋全体がギラギラしてるとかそんな感じではなくて、ちゃんと調和のとれた、落ち着いた部屋だった。


「「ほぇー…」」


 2人揃って間抜けな顔をしているのがよく分かる。

 でも……ちょっと意外だったかも。てっきり部屋はピンクとか、可愛い感じかと思ってたから。


「わたくしも可愛いものは好きですのよ?でも、それが落ち着くかと言われれば……」


 あぁ……なるほどね。可愛いものが好きということを裏付けるように、部屋のそこかしこにぬいぐるみが顔を覗かせていた。


「可愛い……!」


 ベルがそのうちの一体を抱き上げた。キツネっぽいぬいぐるみ。触ってみると、結構柔らかくて、ふわふわしてた。

 ………案外クセになりそう。


「よろしければ差し上げますわよ?」

「いいのっ!?」

「はい」

「ありがとぉ!」


 ベルがキャサリンへと抱きついた。


「わわっ!」


 いきなりだった為にキャサリンが転びそうになる。それを私は咄嗟に弱い風で受け止めた。ふぅ……


「ベル」

「あっ!ごめんなさい!」

「あ、いえ。大丈夫ですわよ………というか、フィリアさんそんなに簡単に使ってますけど、さっきのかなり高度な魔法ですわよね?」

「そう、かな?」


 私からしたら結構簡単というか……あぁでも、威力が強すぎて、そこから弱くするのは難しかったかも。


「はぁ……フィリアさんって本当に……」

「なに?」

「いえ。なんでもありませんわ」

「そう?」

「それより、面白い本があるのですけど、読みます?」

「どんなの?」

「えっと…これですわ」


 キャサリンが差し出してきたのは、この世界では主流なミステリー小説だった。


「面白そうだね、読んでいいの?」

「はい。わたくしは読みましたので、後で感想を聞かせてくださいな」

「分かった」


 それから私たちはしばらくの間、お互いに本を交換しながら読み、感想を言い合ったのだった。




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