第15話 2人の決断

 朝目が覚めるといつもの天井があった。


「レミナ遅いな…あ!」


 そうだ、自分で着替えるって言ったんだっけ?

 枕元を見ると着替えが綺麗に畳まれていた。


「いつの間に…」


 そういえば、レミナのステータスは鑑定してなかったな。それとロビンも。こうやって気づかれないようなスキルを持ってるのかな?


「まぁ、それは後」


 今は着替えよう。今日は、いつもより少し遅いくらいの時間に起きたらしい。太陽が、いつもより少し高い気がしたからだ。


 私は難なく着替えを済ませると、下に降りた。


「おはようー」

「「「おはよう「(ございます)」」」

「ちゃんとお着替えが出来ましたね」

「当然」


 いつもの朝ごはんを食べる。そういえば、米について調べるんだったっけ?


「ねぇ?フィリア?」

「うん?」


 マリアが話しかけてきた。気のせいかいつもより真剣な表情だ。


「学校に行きたい?」

「学校?」


 そうか、この世界にも学校があるのか。どうしよう?知識として、計算とかは完璧だろうし、言葉についてもスキルがある。学ぶとしたら、魔法か、歴史、地理とかになるだろうけど、それもスキルでなんとかなりそうなんだよね。


「うーん…」


 迷っていると、マリアが話してきた。


「別に学校っていうのは、勉強するだけじゃなくて、友達とかを作る場所でもあるのよ?」


 まるで私の心を読んでるみたいな提案だな。でも、友達か…私にできるかな?


「でも、私に友達できるかな?」

「それはフィリア次第よ」


 そうだよね。私次第だ。前世では、そこら辺全然分かんなくて、話しかけることすらしなかったものだから、友達がいなかったのよね。


「そうだね…分かった!学校いく!」

「ふふふっ。そんなに急がなくてもいいのよ?学校の入学試験を受けられるのは7歳からなんだから」


 なーんだ。そこらへんは小学校と同じか。でも、入学試験?


「入学試験あるの?」

「ええ。主に学力と魔法についてね。だから、あと2年の間にみっちり指導するから覚悟しときなさいよ?」

「ええー」


 まぁ、学力は問題ないだろう。問題なのは魔法かな?


「勉強はあまり心配しなくていいわ。あなたは私と同じで魔法が得意な体質なんだから、そこで点数を稼げばいいわ」

「はーい」

「じゃあ、明日から特訓するわよ」

「うん」


 私はまだ知らなかった。特訓すれば、自分の特異性がより明らかになることに…


 ーーーーーーー

 ベル視点。


「ベル、学校に行かないか?」


 朝起きるとすぐにお父さんからそんなことを言われた。

 学校か…確かに行きたくないといえば嘘なんだけど、お母さんがいなくなってから、ずっとお父さんが育ててきてくれた。だから、うちにはあまりお金がないことも知ってる。そんなお父さんに大変な思いをさせるくらいなら私は…


「行きたく…ない」

「…っ!」


 お父さんがとても驚いた顔をした。


「だって、お金が必要なんでしょ?」

「あ…そうか、子供にそんな心配をされるとはな…。大丈夫だ!お金はロビン様達がだしてくれる」

「え!?」


 なんで、ロビン様が?


「お前はフィリアちゃんと仲がいいだろ?」

「うん」

「だからだよ」

「でも、フィリアちゃんってロビン様の子供じゃないんでしょ?」

「…ベル、あまりそういうことを人前で言ってはいけないよ。確かにフィリアちゃんは養子だと聞いている。でも、それでも、あのおふたりは実の子のように育てている。だからこそだよ」

「あ、ごめんなさい…そっか、フィリアちゃん楽しそうだもんね」


 お金の心配がないなら、学校に行きたい。だって、そこで文字とか計算とか学んだら、いっぱい仕事できて、お父さんを楽にしてあげれるもん!


「…わかった!私、学校に行く!」

「…そうか。ベルの決めたことだ。俺は最後まで応援するよ」

「うん!」


 学校に行ったらお父さんに会えないかもしれないけど、その方が私も甘えないで済むと思うから、そっちのほうがいいと思う。


 …学校かー、楽しみだな!


「…言っておくが、明日からとかじゃないぞ?」

「え!そうなの?」

「はぁー…まったく。学校に行くのは2年後だ」

「2年…」

「その間、マリア様がみっちり指導してくれるらしいぞ」

「え!?…行くのやめよかな?」

「そんなんで、猟手は務まらんぞ?」

「うっ!…分かったよー」

「分かればよろしい」


 はぁー。指導って…厳しくないといいなー。

 あ!もうこんな時間!フィリアちゃんのとこ行かないと!


 私は急いで準備を済ませて、家を出た。


「…もうちょっとうちの子は落ち着きを持てないかねー?…」


 そんなお父さんの言葉なんて耳に入らないくらいに。


 ーーーーーーー

「え、ベルも一緒に行くの?」

「うん!」


 まじか!でもこれは当然といえば当然といえる。ベルの祝福ギフトはとても強力だ。そのことを理解させるため、もしくは制御させるため、または、その両方の理由だと思う。どっちにしろ、この判断は正しいと思う。


「そっかー…じゃあ一緒に特訓頑張ろ?」

「うん!」


 私たちはそんな会話をしながら今日1日を過ごした。


 …明日から始まる特訓から現実逃避するかのように…

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