第10話 洗礼

 スタンピードがあったり、祭りがあったりと、結構色々なことがあったけど、それからは、いつもと変わらない平和な日々が続いた。

 あれからあのスタンピードについてエルザに聞こうとしたんだけど、なんか薄い膜のような物で拒まれてる感じがして、会えていない。結局なんだったのだろうか?


 …でも、今日はそんなことはどうだっていい。なぜなら、私は今日5歳になったのだ!ここまでどれほど待ったか…。もしかしたらエルザに会えるかもしれないし、洗礼が楽しみだ。


「ふふふっ。フィリア、嬉しそうね」

「もちろん!」


 エルザがどんな特典をくれたのかよくわからないけど、悪いものじゃないと信じたい。


「今日の洗礼はベルちゃんも一緒なのよ」

「そうなの?」

「ええ…。フィリア?別にどんな祝福ギフトを持ったって、私たちはあなたの味方よ?」


 おそらく、英雄の娘だからなんかやばい祝福ギフトを持つんじゃないかって心配しているんだろう。

 …まぁその心配は合っているとも言える。転生者だからね?どうなるかはエルザが選んだ特典による。でも、その言葉を聞けただけでも安心できた。


「うん。わかってる」

「あ!フィリアちゃん!こっちこっち!」

「ベルは相変わらず元気だねぇ?」

「だってずっと楽しみにしてたんだもん!」


 この世界に置いてスキルは絶対的存在で、そんな中でも特別なスキルである祝福ギフトは重要視される。それだけで、将来が決まってしまうかもしれないほどだ。まぁ女の子はあまり強制はされないと思うけどね。


「はいはい、2人とも?早く教会に入りなさい」

「「はーい」」


 洗礼は聖女であるマリアが行う。まず女神エルザに感謝を捧げ、お祈りをする。それで、洗礼は完了だ。

 私とベルは目を閉じて祈る。


「ひさしぶりね」


 この声はエルザ?


「ええ。ごめんなさいね、こっちに来れないようにしたりして」


 やっぱりあれはエルザの仕業だったのか。でもどうして?


「前のスタンピードのこと、覚えているわよね?」


 もちろん。


「その時に世界樹の根っていったのも覚えてる?」


 あーなんかそんなこといってたような。


「まず、世界樹について説明するわね。世界樹はこの世界に4本あるの。それらはそれぞれの大陸に1本ずつあるわ。そして、世界樹っていうのは、この世界のシステムの補助を担っているの」


 補助?


「ええ。主に情報についてね。世界中に世界樹の根がのびていて、それらを使って情報を収集するの」


 ほぇー。そんな役目があるのね。


「で、その世界樹の根に流れているエネルギーを無理やり利用したのが、あのスタンピードだったの」


 だからあの時世界樹がどうのって言ってたのか。


「ええそうよ。そして、無理やりそんなことをされていたもんだから、システムにかなりの負荷がかかってしまってね、世界との接続が不安定になってしまったの」


 え!?それってかなりやばいんじゃ?


「そうなの。だからあの時止められて本当によかったわ。で、世界との接続が不安定な状態であなたが来てしまうと時空の狭間に落ちてしまう可能性があったからこっちから止めさせてもらったの」


 ほー、なるほど。でも時空の狭間に落ちたらどうなるの?


「運が良ければ元の世界のどこかに飛ばされるの」


 …悪ければ?


「別の世界に飛ばされるか、そのまま消滅するかのどっちかよ」


 怖!なにそれ怖!よかったー。こっちにこれなくて。

 でもさ、エルザあの時チェックをサボった的なこと言ってなかったっけ?


「…さあ!特典の話をしましょう!」


 誤魔化したー!


「もういいじゃないですか。システムももうチェックしましたし、直しましたし」


 …まぁ、いっか。


「はい!でですねー祝福ギフトとしてアイテムボックスをつけておきましたので、その中に色々役に立ちそうな物を入れておきましたので確認しといてね」


 なんか口調がめちゃくちゃになってるんですけど?


「あーなんかね、友達だし?砕けた方がいいかなーって」


 まぁ確かにそうなんだけどね?なんかドジっ子要素が強くなったような?


「ひど!…まぁドジっ子なのは認めますけどー…」


 あ、認めちゃうのね。


「とにかく!他には『無詠唱』とか、魔法を使うのに役に立つ祝福ギフトも付けといたから、ためしてみてね?」


 おー!それはありがたい。魔法は使いたかったんだよねー。


「だよねー。私もそうだったよー」


 え?どういうこと?


「あ!なんでもない!」


 いやいや、なんでもないって…


「あー!もう時間だからまたね!」


 あ!ちょっと!



 目を開けるとそこは洗礼を受けた教会だった。


「これで、洗礼は終わりよ。あとでステータスを確認しておいてね」

「どうやるの?」

「それは…っ!」


 うん?なんかママの顔が赤いんだけど?


「どうしたの?」

「…は!な、なんでもないわ。ステータスはね、心の中で(ステータス)って呟いたらわかるわよ」


 へー。うん?なんかママの横にプレートが見える。これかな?


 名前:マリア Lv.78


 種族:高位人間ハイヒューマン


 職業:聖女


 称号:聖女 英雄 スタンピードを倒せし者 癒し手


 HP:2170 魔力:31500 防御:2000 魔法抵抗:2230 攻撃:1600 魔法攻撃:2650 速さ:2040


 スキル:Lv.8 気配察知 魔力操作 魔力制御 治癒魔法 聖属性魔法

 Lv.6 火属性魔法 水属性魔法 格闘術 料理 家事 鑑定 状態異常耐性

 Lv.4 雷属性魔法 氷属性魔法 土属性魔法 光属性魔法 空間属性魔法 気配隠蔽 収納魔法 風属性魔法

 Lv.2 闇属性魔法


 祝福ギフト:無詠唱 魔法行使力強化



 お、おう。これが高いのかわからんが、英雄ってだけあってスキルの数が多いな。多分こうやって見れるのは、私が鑑定系のスキルをもっているからだろうな。…でも格闘術って…


「さぁ、帰りましょうか」

「「はーい」」


 私はベルを家まで送ってから帰った。ただ、ベルもマリアみたいに顔を赤くしていた。なんで?


「ただいまー!」

「おう!おかえり!フィリ…ア?」

「?どうしたの?」

「なんかさっきよりも…いや、なんでもない!」

「?そう?」


 やっぱり変だ。スキルの影響か?


「さ、さあ、フィリアは自分の部屋にいってステータスを確認してきなさい」

「う、うん」


 とりあえず、自分の部屋にいって確認しよう。

 私は階段を駆け上がった。


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