第7話 スタンピード
フィリアにはああいったが…正直言って厳しい。
俺は周りから勇者だの英雄だの言われているが、俺はそんな凄い存在じゃあない。無論1対1での戦いで勝つ自信はある。周りの敵を仲間に押さえておいてもらって、本丸と戦うのが俺の戦闘スタイルだ。
…だが、1対多数の戦いは苦手だ。今回のようなスタンピードがそれだ。
だから正直言って厳しいのだ
しかし、そんな弱音は言っていられない。何せ今の俺には守るべき人が、場所ができたのだから!
「ロビン様、どうしましたか?…あの子のことですか?たしかフィリア…ちゃん?でしたっけ?」
おのれ!シャガル!俺の娘をちゃん付けだと!
…だが、今はそんなこと言ってる場合じゃないな。取り合えず肯定しておこう。
「ああ」
「大丈夫ですよ!なんたって勇者と聖女がいるんですから!…ところで、フィリアちゃんは養子なんですよね?なんとなくマリア様に似ているような気がします」
俺たちの子供なんだから当たり前だ!…と言いたいところなんだがな。
俺自身信じられないんだ。瞳の色や顔立ちは確かにマリア似なんだが…
なんか似てないのだ。さらに信じられないと思う理由はもう1つある。
それは瞳の色だ。フィリアはオッドアイで、片目はマリアと同じエメラルド色だが、もう片方は金色なのだ。俺の記憶が正しければ、親戚に金色の瞳をもっていた人はいない。それどころか、見た事すらないのだ。
この世界に置いて、瞳の色は魔力量を表している。マリアのようなエメラルド色は2番目に魔力量が多い証だ。3番目は俺のようなルビー色だ。そして、1番魔力量が多い色が、白色だ。一般的に考えれば、フィリアはマリアと同じく魔力量が多いはずなのだが…。
自分の子供のことを理解出来ないなんて親失格だとは思う。だが、フィリアは本当に分からないんだ。年齢はまだ3歳だというのにどこか大人びていて、落ち着いている。だから、あんなふうに怯えているのを見るのは初めてだったかもしれない。
「ロビン様!」
「…っ!」
そうだ。今はそんなことどうでもいい。フィリアと約束したんだ!絶対守ってみせる!
ーーーーーーー
私の夫であるロビンがシャガルとフィリアについて話しているわね。
…あの顔は、シャガルがフィリアのことをちゃん付けしたのが気に入らないって顔ね。でも、あの人にしては珍しく声は出さなかったわね。
私自身あの子を産んだ時、自分の子供か疑ってしまった。それくらい似てなかった。
…ある意味養子として周りに言うには、都合がよかったのかもしれないわね。
フィリアは賢い。おそらく、なぜ自分が周りに養子として紹介されているのか理解している。だから、そんな嘘をつくのはとても心苦しかった。そんな対応をしていたからなのか、フィリアは年の割にとても落ち着いている子に育ってしまった。
…これは、私たちの罪。私たちはあの子の笑顔を守ることぐらいしかできないかもしれない。けれど、それでも!親として、絶対に、それだけでも守ってみせる!
ーーーーーーー
「よし!じゃあやるぞ!!」
「「「「「おお!!!!!」」」」」
まず、マリアたち魔法使いが先制攻撃を仕掛ける。
「アイスニードル!」
「アースニードル!」
「サンダーランス!」
「ファイヤーウォール!」
氷属性のアイスニードル、地属性のアースニードル、雷属性のサンダーランス、そして、それらの魔法を抜けてきた魔物を、火属性魔法ファイヤーウォールで倒す。これはマリアの魔法だ。マリアは
ファイヤーウォールが消えると、俺たちの出番だ。
魔法使いは治療のために魔力を温存しておく。
どれくらいたっただろうか?
一向に敵の数が減った感じがしない。
「おら、こいやぁぁぁぁぁ!」
「右!押されてるぞ!」
こんな乱闘になっても連携ができているのはいい事だが、果たしていつまで持つか…
「こっちの治療してくれ!」
「こっちもだ!」
怪我人も増えてきた。
「もう!魔力がもたない!」
一応魔力回復ポーションは持ってきていたのだが、もう既に無くなってしまったらしい。…このままじゃジリ貧だな…。
「くっそー!全然減ってる気がしねぇ!」
「シャガル!無駄口叩かずに動け!」
「やってるっつーの!」
俺は周りを見渡した。が、だいぶ厳しい状況だ。
このままじゃ……
俺はその時完全に油断していた。だから、オーガの攻撃をモロにくらってしまった。
「ぐはぁ!」
左脇腹を棍棒で思いっきり殴られた。無論そんなことでやられるほどヤワじゃない。だが、立て直すのには時間がかかる。目の前のオーガが棍棒を振り上げるのが見えた。
…すまない…フィリア…
ドッカーン!
…あれ?
見てみると目の前にいたオーガが倒れていた。一体なにが…。
よく見ると、オーガの頭が爆散していた。
「一体、誰が?」
周りを見てみると、俺と同じような現象を見て固まっている人がいた。
その後も、危険な状況になった時、同じ現象が起きていた。
「なんか、よくわからんが、一気に決めるぞ!!」
「「「「「おお!!!!」」」」」
何者かの手助けによって、仲間の士気もあがり、目に見えて敵の数が減っていくのがわかった。
途中とんでもない爆発音が聞こえたが、なんだったのだろうか?
1時間ほど経ち、やっと敵がいなくなった。
長い長い戦いが終わったのだ。
「やった…勝ったぞー!!」
「「ウヮーーーー!」」
「「勝ったぞー!!」」
「「これで帰れるぞー!」
…最後のやつ、すまん。まだ帰れない。これから魔物の死体を焼かないといけないんだ。
とはいえ、皆とても疲労している。もう日も落ちているので、このまま野営をすることにした。食事はオークの肉を焼いた。
その後、結界石という、透明な結界を張る石を置き、明日しなければならない作業に気が滅入りながらも、そのまま意識を手放した。
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