第14話 スマホに残された1枚の画像
ある日の事。それは、肌寒い秋も終わりを告げ、世間はクリスマスシーズンを
迎えていた。街では昼間から明るい色彩のイルミネーションが
そして、クリスマスの定番ソングといえば『赤鼻のトナカイ』や『ジングルべル』
だろう。駅や施設、その他周辺、どこの店に行ってもお馴染みの曲が流れ、深く
耳につく。街中がクリスマスモード一色となり、浮かれているようだ。
そんなにクリスマスが楽しいもんかね。僕にはよくわからない。
クリスマスを特別の日なんて思ったこともないし、クリスマスに何かをしてもらった事も、プレゼントをもらった記憶もない。実際、あまり覚えていない。
いつからクリスマスが若者たちの間で特別の日になったかは知らないが、
高校生ともなると廊下や教室のあちこちでカップル達はイチャつきまくっている。
まあ、僕にはクリスマスなんて永遠に来ないだろうけど……。
まっすぐ家に帰った僕は玄関を上がり、相変わらず暗くて冷めたい廊下を歩いて
自分の部屋へと向かっていた。
『トゥルルルル…トゥルル…』と微かに聞こえる電話の呼び出し音が
リビングの前まで来ると、その音は次第に強く廊下まで鳴り響いてきた。
いついたみたいですし、ポイントも合わせると全額
補償できます」
「つまりタダですか?」
「まあ、そうですね…」
「じゃ、それなら…」
僕は有難くスマホを受け取る。なんか、得した気分だ。
「それと、データベースに残された基本情報や電話番号、画像データなどは
ごく一部だけ移行することができました」
「そうですか…ありがとうございました」
別にたいした画像は入ってないと思うけど……
それより水沢さんが言った【猿渡】という名前が気になる。
猿渡さんは僕の壊れたスマホを直そうとモバイルショップに僕のスマホを
持って行った。万が一修理できない場合は同じ物を取り寄せてもらえるように
頼んでくれたんだ。でも…なんでだ?
僕の脳裏に一つの仮説が立てられた。それは、このスマホが壊れた時、僕は
自分で壊れたスマホをモバイルショップに持って行くことができなかったと
いうことだ。
「この壊れたスマホはどうしましょうか?」
「処分してください」
「はい、わかりました」
僕は新しいスマホを手に取ると、席を立ち店内を出て行く。
そして、脇道に止めてある自転車に跨り、スマホの電源を入れてみた。
アルバムに登録されていたのは数枚の風景写真とブーメランの写真…
風景画はあの土手から眺める景色が殆どだった。
それと風景画の中に1枚だけ混ざっていた人物画像の写真……
ゆっくり伸びていった指先が人物画像をタップする。
画像は大きく表示されはっきりと顔が映し出された。
男の子は僕だ。その隣で笑っている少女は…誰だろう…
モンチッチのような天然パーマがとても印象深く残る。
「!?」
その時、僕は写真に写る少女の面影に…前にどこかで会ったような感じを
重ねていた。
慌てて自転車のぺダルを踏んで家に帰った僕は自分の部屋へ直行する。
その後、スマホにUSBメモリを取り付け画像データを保存し、
USBメモリからパソコンにデータを取り込むと1枚印刷する。
僕は引き出しからマジックを取り出し、髪の毛を黒く塗りつぶし頭の上の方で
アップさせ結うように書いていく。
「あっ……この子は……」
その写真は夏祭りで出会った彼女だったーーー。
猿渡空良―――ーーー 僕の想い人だった――――ーーー。
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