現界での生活

魔族のローブと現界への扉

 ログインすると城の入り口にフィンが俺のことを待っていた。


「お待ちしてました、フィンさん。次の訓練はヴェラとの訓練よりも厳しいものになります。そのため訓練を受ける前に現界へと行きレベルアップをしてきてもらいます。そのままの姿だと魔族だとバレてしまうため渡すものがあります。ついてきてください」


 そういうとフィンはスキルで城の門を開けた。フィンが城の門を開けた瞬間、城内から強大な魔力の波動が迎えてきた。その魔力はまるで生き物のように、力強く脈動し、俺の体を包み込むように感じた。俺はその強力な魔力に圧倒された。


「これが城の中から漂ってくる魔力か......恐ろしいな」


 フィンもその魔力を感じ、微笑みながら言った。


「この城は古の魔王の魔力が詰まっているんです。さあ、中庭へ行きましょう」


 中庭までの道のりは城内の壮大な内装を堪能できる素晴らしいものだった。広い廊下には壁に飾られた美しい絵画や、魔法の光で輝く宝石が埋め込まれたようなモザイク床が広がっており、俺はまるで別世界に迷い込んだような感覚に陥った。


 壁には壮大な彫刻が施され、高い天井には美しい装飾が施されていた。巨大なシャンデリアが明るさを運んでおり、その煌びやかな輝きは魔族達の魔力の輝きと調和しているように見えた。


 途中で出会った魔族たちは鮮やかなローブをまとい、優雅な笑顔で挨拶を交わしていた。彼らは城の住人で、魔法や知識に秀でた者たちだとフィンから聞いた。


 やがて、俺達は中庭に到着した。中庭は美しい庭園で、色とりどりの魔法の花々が咲き誇り、小川が静かに流れていた。庭には立派な噴水や、休憩スペースが設けられており、見たこともない生き物たちが自由に飛び交っていた。


 フィンは中庭について言った。


「こちらが中庭です。ここでしばしお待ちください」


 そう告げるとフィンは城の中へと消えた。俺は中庭でひとときの休息を楽しむことにした。中庭は美しい花々で飾られ、静かな空気が流れていた。俺は噴水のそばに座り、その水しぶきが涼しさを運んでくれるのを感じていた。


 花々の香りが心地よく、風が穏やかに吹いていた。俺はその瞬間、まるで花園にいるかのような幻想的な雰囲気に包まれていた。

 中庭でのひとときは、次の訓練に向けて体力を回復し、気持ちをリフレッシュするための重要な時間となった。


 やがてフィンが何かを手に持って帰ってきた。フィンが何かを手に持って帰ってきたとき、俺は好奇心に胸を膨らませ、フィンを注視した。その手には黒いローブが握られたいた。


「これは魔族専用のローブです。これを使ってハルトさんにしていただくことがあります」


 俺が魔族のローブを受け取ると、フィンは説明を始めた。


「このローブは魔族であることを他のプレイヤーやNPCから隠すためのものです。魔族の特性や力を持ちながら、外見は他の種族と同じに見せることができます。これにより、魔族が現界に多く存在してます。このことを知る者は極小数です」


 俺は驚きと好奇心でフィンを見つめ、さらなる説明を待った。


「魔族の中には、現界に行き訓練をして魔族としての力を極限まで引き出す者もいます。このローブはその選択肢を持っている者たちにとって重要なアイテムです」


 俺はローブを手に取り、その生地の質感や細部まで注視した。魔族の存在が現界にも広がっていることに、俺は興奮と驚きを感じていた。


「どうして今これを俺に渡すんだ?」


 俺は疑問をフィンにぶつけた。フィンがその疑問に答えた。


「魔族としての力を引き出すためには、訓練が不可欠です。しかし今のハルトさんでは次の訓練をクリアすることは難しいでしょう。だから現界に行きレベルアップをしてきてもらいます」


「そんなに次の訓練は難しいのか......ヴェラとの訓練でもあんなに難しかったのに......」


「ハルトさん、次の訓練は本当に難しいものになります。ヴェラとの訓練の比にならないと思ってください。魔族の力を十分に引き出すためには、訓練が不可欠なのです」


 俺は深く頷きながら言った。


「わかったよ、フィン。現界に行ってレベルアップしてくるよ」


 俺はフィンとともに中庭を出て、ゲートへ向かった。中庭を出ると、俺達は城の壁に沿って進み、高い壁に囲まれた城の外へと歩みを進めた。中庭からゲートまでの道は風光明媚で、緑のトンネルのような道を進んでいく。歩きながら、俺は中庭の平和な景色と、今後の冒険への不安と興奮が入り混じった気持ちに包まれていた。


 ゲートの前に立つと俺は、その門が輝くように輝いているのを見ました。ゲートは神秘的な力で満ち溢れ、現界への入り口を守るようにそびえ立っていた。俺はこの新たな挑戦が待っている現界への歩みを進める覚悟を持って、深呼吸をしてからゲートに足を踏み入れた。


 やがて、道はゲートに通じ、その前に立つこととなった。ゲートは大きく、神秘的なエネルギーが漂いた。

  俺はその神秘的なゲートを見上げた。


「ここが現界へのゲートです。ハルトさん、決してローブを脱いで魔族とバレてはいけません。先程も言いましたが他の種族にとって魔族は敵なのです。今のハルトさんでは太刀打ち出来ないでしょう」


 フィンは俺に語りかけた。


「わかってるよ、フィン。行ってきます」


 俺はフィンにそう告げるとゲートへと足を踏み出した。

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