第64歩 教えてない
会社員K君の話。
思いがけず彼女ができたK君は二人で良く
街中ドライブデートをするのが好きだった。
観光名所や夜景をデートして夜中まで走るのが楽しかった。
ある日K君の仕事仲間が急に倒れて亡くなってしまった。
その方は天涯孤独で会社の社長が喪主を務め葬儀が行われた。
それから会社の水場で
―チーン という
無人のトイレで勝手に水が流れるという事が起きるようになった。
K君自身は水の流れる音も鈴の音も聞いたことは無かったが
仲間の話では社長が
「何度でも供養します」と言っていて
「四十九日の法要が済むまでは騒がないように」と通達があった。
K君は自分の彼女を怖がらせてはいけないと思い
仲間が亡くなった事と不思議な現象の事は何も伝えていなかった。
あるデートの最中、彼女がK君の会社の場所を教えて欲しいというので
夜中、会社に行ってみた。
営業車が駐車場に何台もあるのだが、そのうちの一台に人が乗っていると彼女が言い出した。
「えー、そんなはずないよ、どれ、どの車?」
泥棒かもしれないと彼女の指差す車を見てK君はギョッとした。
その車は、先日亡くなった人が使用していた車だった。
「あの車、ほら運転席にいるじゃん」彼女が言う。
K君には見えなかったが、そそくさと車を出して走り出した。
彼女はK君の態度に納得が行かず、あれこれ聞いてきた。
「ちょっと、あれ会社の人?なんなの・・・」
「・・・」
「なに、黙ってないで・・・ちょっと車止めてっ!」
観念したK君が初めて事情を話すと彼女は意外にも怖がったりせず
「久々にハッキリ見たわ」
聞けば彼女は
小さい頃からずっと幽霊を見て育ってきたというエキスパートだった。
それから会社で法要が行われ不思議なことは起こらなくなった。
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