第57歩 拝んでくる

 Aさんが海岸線道路を車で走っていると、

いつの間にか前方にバイクが走っていた。


バイクには袈裟けさまとった、お坊さんが乗っていて

バイクを走らせたまま後ろを振り返り

Aさんの車に向かって手を顔のところに当て何度も頭を下げてくる。


『ん、何かな?』


何かのトラブルかと思い少し車間を縮めてみた。

すると、また、お坊さんが振り返り手を顔の前にあて拝む動作を

Aさんにしてくる。


『結構スピード出てるのに危ない、お坊さんだなぁ』

しばらくしても、お坊さんが拝む動作を止めないので

段々気持ち悪くなってきてAさんはハザードをあげ停車した。


『ったく、何なんだよ・・・』

お坊さんのバイクは、そのまま走り遠く見えなくなりはじめた。

 

 その時、反対車線から走ってきた大型トレーラーが

ノーブレーキでAさんの車線にはみ出して突っ込んできた。


「あ!」

トレーラーは崖に激突して大事故になった。


―ドーンッ!ギャッギャーーーーー

フロント部分がグシャグシャになり後部コンテナが横滑りしてきた。


道を塞ぐ形でトレーラーは止まったがAさんは事故に巻き込まれずに済んだ。


車の運転席から一部始終を見ていたAさんは、すぐに警察に通報した。


「あっもしもしぃー!・・・・」


 もし、あの、お坊さんのバイクが前におらず、そのまま走っていたら

恐らく、その事故に巻き込まれている所だった。

 

 Aさんはバイクの、お坊さんに、まったく心当たりが無いのだという。

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