第53歩 だめですよ
工場勤務のHさんが十四歳の時、一人、海水浴を楽しんでいた。
波が静かな日で他に人影もなく海辺は貸切状態で、のんびり海を楽しんでいた。
ほんの少し沖に出て浜に戻ろうと泳いでいると背中に何かが当たった。
泳ぎながらチラっと見ると後ろに流木があった。
なおも浜に向かって泳いでいると、その流木もついてくる。
『ん、何か変だな』と思った時、後方から
「ボォー、ボォー」何かが吠えるような音がした。
後ろを振り返ると茶色い頭に真っ黒い目が二つ頭には角が二本生えている得体の知れないものが追ってくる。
「ウッボッ、ウッボッ、フガ」明らかに呼吸をしている怪物が追ってくる。
『うわぁー怖えー!!』心の中で叫び必死に浜まで泳いだ。
走って砂浜に上がって海の方を見ると妙なものは
―ジャボン と海面から下に引っ込み姿を消した。
話を聞いた私は
「アザラシか何かですかねぇー」と聞いてみた。
「うーん、その海はアザラシ居ないはずですけど何か見間違えたのかなぁ、でも角があったのは見たんですよ」
私は
「ひょっとしてお盆時期ですか?」聞くと
「あ、それで浜に誰も居なかったのかな・・・・」
「だめですよ、お盆に泳いじゃあ」
その生物は茶色く穴のような目が二つあり頭には長い角が二本あったという。
「怖かったなぁ、あんなに、あせって泳いだ事はないです」
「いや、それは怖いですよ・・・・」
「今でもボォー、ボォーという声が耳に残っていて思い出すとゾッとします」
と話してくれた。
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