第13歩 漁港にて
体験談を集めていて偶然、別々の人が同じ場所での体験を聞かせてくださいました。
それぞれの体験者は面識が、ありませんでした。
介護の仕事をされているTさんは少年の頃、漁港で素潜りをして遊んでいました。
水中メガネをして何度か潜っていると海の底から何かがこちらに向かって浮かんでくる。
何か白いものでした。
『何かな』と思い浮かんできた白いものを手に取ると、それは経文の書かれた紙だった。
『何これ気持ち悪い』と思った瞬間
水中メガネのガラスにビシッと、ひびが入り割れてしまった。
Tさんは気味が悪い経文を海に戻し割れた水中メガネも捨てて
一目散に、家に帰ったそうだ。
自動車工場に勤めているHさんから聞いた別の話。
Hさんの、おばさんは漁港の目の前に住んでおり、おばさんが中学生の時ひどく霧の濃い日があった。
時刻は夕方、外に居てなんとなく霧のかかった漁港を眺めていると漁港の中に黒い人が居るのが見えた。
ただし霧の中に浮かぶ、その人影は大きさが10メートルはあろうかという程、巨大な影だった。
見ていると段々怖くなってきて家の中に入った。
居間に、おじいちゃんがいて孫の顔色に気がついた。
「どした」聞いてきた。
「おっきい人影・・・・」
一部始終を話すと、おじいさんは、ちょっと舌打ちをして立ち上がった。
「でたか」おじいさんは黒い大きな人影の正体を知っているような口ぶりだった。
「今日は、もう、おもでに出るなや」と玄関の鍵をかけただけで
「あの大きな人影は、なんなの?」
何を聞いても、おじいちゃんは答えてくれなかった。
その黒い大きな人影が、どうなったかは解らないままだ。
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