第6歩 続・心霊スポットには行かない

 ひやかし気分で件の墓地に行った後、車で大事故を起こした頃から会社の風当たりの強さに、やる気をなくした未熟者の私は退社することになった。


『なにか働かなくては』と思い仕事を探すとコンビニの夜勤が目にとまり腰掛のつもりで務めることになった。


ナイト番というやつです。


私は年齢が上の方だったので夜勤ではあったが店長代理の状態で雇って頂いた。


 仕事仲間は主婦や高校生、夜は大学生なんだか私にマッチしてしまい割と永く勤務することになった。


 発注、品出し、清掃と仕事は多かったが深夜には少し余裕のある時間帯もあったりと慣れると苦にならなくなっていた。


そして私の癖でバイト仲間に「怖い話はないか」と、よく訊いていた。


 大学生K君が新しくバイトに入ってきた。


彼は真面目なのだがバイト慣れしておらず、おでんの鍋を空焚きしてみたり

洗面所の水をあふれさせ床を水浸しにしたり、

ちょっと失敗の多いバイトだった。


東北訛りで人懐っこい彼に悪意は無く憎めない性格でトラブルも、

まるでコントを見ているようだった。


 K君の長所は他人の話をよく聞くところで自分自身の事も、よく私に話してくれた。


 ある日、私はコンビニに出勤すると昼のバイトリーダーの女性が変わった報告をしてきた。


昼間、トイレに、お客様が入ってなかなか出てこなくてドアは中からロックされたままで、不審に思って工具でカギをこじ開け確認したら誰も居なかったという。


「勘違いじゃないの?」


だが他に、お客様の居ない時で確かに誰かが入ってドアを

『バタン』

と閉めたのだという。

一応、了解して仕事にかかった。


 夜10時、大学生のK君が出勤してきた。


挨拶を交わし店番を続けているとK君が、こう切り出してきた。


「あのー心霊スポットの墓地、知ってますか」


ギクリとした・・・遠い昔、私が怖い思いをした場所の事を聞いてきた。

私の顔色が変わったのを見て

「そこ、危ないですか」と聞いてくる。


 その日K君は大学の仲間に一緒に心霊スポットに行かないかと誘われたがバイトがあるからと断ってきたという。


 私は熱心に「絶対に行ったらダメだ」と過去に私の経験した話や聞いた話を聞かせた。


「病気や事故など不幸な目に遭うから興味本位で、のん気に出かけて行く場所ではない」と真剣に話すと彼は、それを了承した。


 実際そこに行って、すぐに全身に蕁麻疹じんましんと高熱が出て命を落としたとか、

墓地にあった十字架の備品を持ち帰り部屋に飾っていた輩が精神に異常をきたし病院に入院して10年たっても退院できていないとか、

車が故障して大変なことになったとか、噂だけではなく私は実際に、どこの誰がと詳しく聞いていた。


 次の日、私は夜勤だった、その日、バイトは休みのはずのK君が血相変えてやって来た。


な事になりました」手に新聞を持っている。


 話は、こうだった・・・

 

 昨日、私とK君が、あそこには行ってはいけないと夜中、話をしていた頃、

同時刻にK君のクラスメイト達は件の墓地を既にひやかしに行っていたのだという。


 メンバーは4人、車で墓地の敷地内に侵入して、ずけずけと夜中に乗り込んで行き怪異も事故もなく無事帰宅したのだが・・・

 

 翌朝メンバー4人のうちの一人が朝、通学途中バイクで歩道に乗り上げる事故を起こし大怪我を負ってしまい救急車で運ばれる騒ぎとなり・・・


 さらに別の一人は同時刻に車を運転中、飛び出してきた自転車の子供と軽い衝突事故を起こしたが幸い子供に大きな怪我は無く


「だいじょうぶ」と言い残し子供が去ってしまった迄は良かったが・・・


話を聞いた子供の親御さんと事故の目撃者が警察に通報し運転していたK君のクラスメイトは、ひき逃げ犯として逮捕された。


 さらに別のメンバーの一人はバイクで走行中、道を塞ぐ形で道路にバックで飛び出してきたトラックのコンテナ部分に突っ込み

バイクごと大破して重症となり病院の集中治療室に入ってしまい

墓地に行ったメンバー4人のうち3人が大変なことになったという事だった。


「残りの一人は、どうしてるの?」


「次は俺の番だと言って布団かぶって部屋で震えてました・・・・こんな事って、あるんですね」

と事故と逮捕の記事が同時に載った新聞をK君は握り締めた。


「お前、行かなくて良かったな」私は声をかけたが


 K君は虚空を見つめ何も聞こえていない様子だった。

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