第23話 確かな決意
「それで……仕事というのは?」
僕が尋ねると、ファルスはパチンッと指を鳴らす。
すると横で控えていた従者がこちらに近づいてきた。
従者は胸元から紙を取り出し、僕に渡す。
「あ、どうも」
紙を広げると真新しい地図だ。
……森の方に✕マークがつけられている。
「これは……」
「ホルシド教は隠蔽が得意だけどね……
だからと言って私達も完全に負けているわけじゃない。
印がついている所には奴らの仮拠点がある。
君がそこを調査してくれたら、君の頼みを聞いてあげよう」
「……僕なんかで良いんですか?」
正直、そんな重要そうな案件をただのEランク冒険者である僕に任せるのは違和感を感じる。
「ま、そもそもこの辺は奴らが出るまで平和な一帯でさ……
人材があまり育ってないんだよね。
しかも元々居た優秀な冒険者はもっと儲かる場所や自分が活かせるような場所に出て行っちゃったから」
「人材難って奴ですか……」
「君なら大丈夫だと思うけどね。
自覚が無いかもしれないけどあのスケルトンは相当に強い部類だったんだよ。
本来なら高度な光属性魔法を扱える優秀な冒険者がやっと相手取れるような存在だった」
「ふーむ……」
「肩書きはどうでもいい。君が強いからこの仕事も頼めるんだ」
「……分かりました」
僕は渡された地図をクルクルと丸めて懐にしまう。
「終わったら直接ここに来て報告してね。
それと……もし信者達に抵抗されたら殺しても構わないから」
……一応人なんだし殺しはしないつもりだけど。
変に逆らっても意味は無いしな。
「……はい」
僕の小さな返事を聞いて、再びファルスさんが指を鳴らす。
すると従者の人が僕を外に案内し始めた。
*
「では私はこれで……」
門の外まで歩かされると、従者は一礼して屋敷に戻っていった。
「……」
自由になった僕は、さっきまでの自分の行動について考えていた。
「なんか……雰囲気に流されて普通に従っちゃったな……」
自分にメリットがあるとは言え、偉い人の言う事に二つ返事で従うのは……
あまり自由人らしいとは言えないだろう。
「……クソ、こうせざるを得ないのは僕が弱いからだ」
そう。今の僕に彼に頼る以外の、現状を解決する選択肢を選べないのが悪い。
これじゃ昔と変わらない……もっと強くならないと。
「まあ、今回はまだ取引に近い形だったからマシかもしれないけど……そうだ」
もし次から、前世や今までの実家でのそうされてきたように、
本当に嫌な事を強制された時は何をしてでも逆らってやる。
「強さもそうだけど……
なにより僕の心に染み付いた奴隷根性を直していかないとな」
僕は密かにそう決意したのだった。
*
地図に示されていた場所に、
主要な道から大きく外れた道なき道を進んだ末に辿り着いた。
ここは森の中でも一層木々が多い場所で、木漏れ日すらないせいか
陰鬱な雰囲気が漂う。
それにしても道が獣道ですらなかったから足に負担が……
こんな所に拠点を構えるとか正気か? いや、正気なら邪神崇拝なんてしないか。
「……だいぶオンボロな建物だけど……本当にここが拠点なのか?」
本当に拠点なら間違い無く激しい戦闘になるだろう……
僕は覚悟してドアに手をかけた。
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