第19話 約束

「さあお客さん………こいつは一点物の珍品さ……目に嵌めたらなんと『鑑定』が使えるようになっちまう!」

「……ほほう」


街に出た僕はアシュリーのお見舞いに行く為に歩いていた。

そんな中、市場で強引な商人に捕まってしまったのだ……

けれどそれは僕にとって幸運だった。


「『鑑定の魔眼』か……」


商人の言う通り、装備すれば誰でも鑑定が使えるようになる。

先日拾った魔導書と同じタイプの装備だ。

正直、鑑定を使えるようにはなりたい……

それに金色のカラコンみたいてカッコいいし……


「どうやらお客さんはコイツの価値が解ってるみたいだな……いよし!

特別サービスとして金貨七十枚の所を金貨五十枚で譲るぜ!」

「!? よっしゃ買ったぁ!」


僕は昨日もらったギルドからの報奨金を袋ごと商人に渡し、鑑定の魔眼は購入した。

これでまた出来ることが増えたぞぉ!



「……それで? まんまと乗せられて全財産差し出したと」

「はい……」


どうしてこうなったのだろうか。

病院でアシュリーに鑑定の魔眼を自慢したのだが、

今僕は金銭感覚について真面目な説教をされている。

おかしいな……こういう反応は想像して無かったぞ。


「……なんかほっといたら借金してそうで心配になってきた」

「いや流石に借金はしませんよ……」


アシュリーは呆れた様な表情でこちらを見つめている。


「でもほら、これ便利だよ? 『鑑定』」


僕をそう唱えると目の前にステータスウィンドウが浮かぶ。


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名前:リバティー

種族:人間

年齢:13歳

HP:22/20→22

MP:19/18→19

腕力:10→11+7

↳攻撃力:18

体力:9→10

魔力:4→5

敏捷:21(18+3)

頑丈:13+15

↳防御力:28

スキル

格闘術Lv2

回復魔法Lv3

補助魔法Lv2

ナイフ術Lv1

縮地法

斬耐性Lv2

麻痺攻撃

光魔法Lv1

鑑定

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「ほら、こんな風に何時でも確認出来る訳だし……」

「……」


アシュリーが呆れ顔からジト目になって見つめてくる。

「もはや何も言うまい」そう言いたげだ……


「……えっと。これからは軽々しく大きい買い物はしません」

「ん」


彼女は満足気に頷いた。


「まあ、僕の事はこの辺にしておいて……聞きたい事があるんだよ。

君の住んでる村の事だ」

「……」

「あの村は……良い所だと思う。

優しくて、親切な人ばかりで。でも、明らかにおかしい奴が一人いるよね?」

「……」

「ソエラ。ソエラ・シージ。

あいつは何なの? なんの権利があってあんな風に……」


僕がその名を出すと、アシュリーは下を向いて顔に影を作った。

名前すら聞きたくないって感じだ。


「私が今言えるのは……彼は外からやってきた人で、本当はなんの権利も無い。そのくらい……」


アシュリーは重そうに唇を動かし、それだけ言うと顔を逸らしてしまった。

……村や彼女の様子からただ事じゃないことだけは分かる。

出来ることなら、力になりたい。


「やっぱり……話してくれない?」

「……前にも言ったと思うけど、秘密が有るのはお互い様」


そして僕が動く為には、まずこの言い分をどうにかしないといけない。

まずは僕が正直に全てを話さないと……


「お互い様……」


だけど今は駄目だ。

何も解決出来てない今話しても、

無駄に背負わせたり巻き込んだりしてしまうだけだから。


「分かった。僕なりにどうにかケリをつけてくる。

そしたら全部正直に話すからさ……アシュリーも全部話して欲しい」

「……なんでリバティーはそこまで気にかけてくれるの?」


おいおい、君がそれを言うか。


「うーん……どっちかと言うと僕が方がそれを言いたいな。

服装の事とか昇格試験とか……先に気にかけてくれたのは君の方じゃん。

僕はその恩を返したいの。それに……」

「それに?」

「友達の力になりたいんだ。その子が自分を疎かにしがちなら尚更ね」


「……分かった。約束する。リバティーが話してくれたら全部話す」


「その言葉が聞けて良かった。じゃあ早速頑張って来るよ」


僕は病室を出た。


「これでもう後には退けないな……」


パチン! 自分の両頬を叩いて気合いを入れる。


「ハウンド家の事情を解決してやる、絶対に」

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