ゲーム世界の悪役貴族は自由人キャラになりたい〜全然知らないゲームの悪役に転生しちゃったので原作は無視して好きに生きます〜
芽春
第一章 縛られない
第1話 シナリオ知識ほぼ0の悪役転生
「……どうして?」
姿見の前に立つ僕の口から出たのはそんな言葉。
鏡に映っているのは灰色で整えられたミディアムヘアーの、見覚えのある少年。
今の状況を一言で表すのなら、ラノベに良くある悪役転生物。
昨日まではこの世界の住人として生きていた僕が、前世を思い出した。
一つあまり無い事があるとすれば……
「どうすんだよこれ……僕は僕の事全然知らねぇんだけど……」
全然知らないというのは少し言い過ぎかもしれない。
僕の名前はアローン・ハウンド。
RPGゲーム「エターナル・ブレイド」の悪役キャラである。
しかし僕はこのキャラ……
というかエターナル・ブレイドのストーリーを良く知らない。
「なんで?なんでエターナル・ブレイド?
だって僕姉貴に脅されてレベル上げとアイテム回収やらされてただけよ?
思い入れとか0……むしろ恨みすら抱いてるよ?」
そう、僕はゲームにおいて苦行になりがちな
レベル上げとアイテム図鑑埋めをやらされていただけだ。
アローンを覚えているのは彼が最終盤のボスキャラであり、
ドロップ武器の
「『執念の狼牙剣』攻撃力+220。
装備キャラが戦闘不能になると一度だけバフを得て復活。(ドロップ率1%)」
を貰う為に150回はぶっ飛ばす羽目になったからである。
「いや待て……
確か姉貴が鼻の穴広げながらコイツについて語ってくれてたような」
えーと……なんだっけ?
確か……序盤でヒロイン誘拐して人質にとって不平等な決闘したけど、主人公にぶっ飛ばされて。……中盤で黒幕……いや黒幕の父だっけ? に改造兵士にされて
主人公の親友誘拐して拷問にかけ……やっぱりぶっ飛ばされた。
けどなんか生きてて……終盤に聖剣作るのに必要な鍛冶師の人誘拐して……
そう、それで最終的に谷底に突き落とされて、
尖った岩に串刺しになって死んだんだよな。
「クソ野郎じゃん。つーか誘拐好きすぎるだろコイツ。
登場の度に誘拐してるとかジャンキーか?」
とりあえずクソ野郎でろくな末路を迎えていないという事は思い出せた……
「でも僕明日からコイツとして生きていくんだよな」
え?どうしよう。アローンの運命はわかったけど、
性格とか喋り方とかが全然わからない……正確には思い出せない。
前世を思い出した影響で、人格と記憶が統合されてしまったのか、昨日までの自分が別人としか認識できず、何を思い生きていたのか分からないのだ。
あ、でもそうだ。戦闘中にちょっと喋ってた気がする。
そのセリフは思い出せるぞ。150回も聞いたし。
「もう、どっちかが死ぬまで終わらねぇぞ……」(戦闘開始時)
「その程度かぁ!?」「くたばれよ!!」「クソっ……」(攻撃時、被弾時)
「まだだ……! お前を殺せば、俺だって猟犬として認められ……」(敗北時)
いや分かんねえよ! どーいう
この数セリフだけで読み取れってのは無理があるだろ!
「はぁ……もぅマヂ無理フテネシヨ……」
僕はベッドに横になり、目を閉じる。
瞼の裏に浮かぶのは未来の自分のクソみたいな死に様。
あんな死に様ゴメンだぞ……!
「……ん? じゃあもういっその事好きに生きればいいんじゃね?」
逆転の発想である。
アローンとして生きれないのなら、
原作も何も気にせず好きに生きればいいのではないか?
幸いにも、レベル上げの方法やレアアイテムの場所等は頭に入っている。
好き放題生きる方向に考えれば、むしろ最高の状況と言って差し支えない。
「そうと決まれば明日から……」
突然だが、人には必ず憧れというものが有る。
例えば主人公、親友キャラ、昨今の流行りな影の実力者。
そして僕が憧れていたのはいわゆる自由人キャラだ。
圧倒的な実力があり、何にも縛られない。
ずっと僕はそんな生き方をしてみたかった。
だから今、この瞬間決めた。悪役貴族アローン・ハウンドではなく、
自由人アローン・ハウンドとして生きていこう。
「よし……せっかく現実的なしがらみ(就職や姉)から逃げられたんだ!
セカンドライフ楽しむぞー!おー!」
……自由に生きる権利は能力が無きゃ勝ち取れないんだ。
能力にも種類はあるが、この剣と魔法の世界において最もわかりやすいもの。
やはり強さ、武力こそが正義だろう。
「仮にも最終盤のボスになる男だし……
ポテンシャルはあるはず。無くても引き出す」
まずは自分の事を知らないとな……
「ステータスオープン」
別に声を挙げなくても、右手の甲を触ればステータスウィンドウは開く。
でもこう言うのって唱えてこそだよね?
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名前:アローン・ハウンド
種族:人間
年齢:13歳
HP:20/20
MP:18/18
腕力:9
体力:7
魔力:3
敏捷:15
頑丈:13
スキル
格闘術Lv2
回復魔法Lv3
補助魔法Lv1
縮地法
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なるほど。レベルが存在していなかったり、攻撃力や防御力のステータスが腕力や頑丈に変わっていたりと、ゲームとは結構な差がある。
まあステータスは幾らでも伸ばせるだろうから気にしないでおいて、
このスキル達を確認しておこうか。
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