伊400外伝:大怪獣 VS 連合艦隊&伊400

@vizantin1453

第1話:災厄の始まり

「ふう、さっぱりしたな」


 シャワー室から出て来た伊400艦長『日下敏夫』少将は身支度を整えて艦長室に戻ろうと食堂を通過しようとした時、二名の乗員が食堂に設置されているモニターで何かの映像を見ているのを認識する。


「何を見ているのだ?」


 日下が声を掛けると振り返った乗員が吃驚して立ち上がり敬礼しようとしたが日下は食堂にいるときはしなくてもいいという暗黙の了解があるので無用だと言う。


 恐縮する乗員に再び何を見ているのだ? と聞くと昭和時代に日本中を熱狂させた怪獣映画を見ていましたと言う。


「ほう……怪獣映画か。どれどれ」


 日下がモニターを見ると本当に懐かしい映像が流されていた。

「……ゴドラか、懐かしいな。もう何百年前に見たはずだが今見ても色褪せてないな」


 機関科『朝倉新名』水兵長がそういえば艦長達は無数の並行世界を旅していましたが怪獣と戦った世界はあったのですか? と聞いてくる。


 朝倉は20年前に伊400に乗艦した未だ真新しい新米の存在である。


「ふむ……75年前のある並行世界に漂流した時、怪獣に遭遇して当時の連合艦隊と共に倒したことがあったな」


 懐かしそうに日下が思い出していると航海科『水野宗孝』一等水兵がもしよければ聞きたいですと言ってくる。


「……そうだな、君達二名は知らないのだったな。よし、我々が経験した怪獣退治を話すとしようか」


 そういうと日下は椅子に座ると懐かしそうな表情をしながら話す。


♦♦


「艦長、新たな世界に到着したようです」


 日下の隣にいる橋本先任将校が伝えると不動状態の日下が頷く。

 先日、弾薬の補給を終えることが出来たので一安心であった。


「直ちに“晴嵐”二号機を射出して偵察に入れ」


 当時の“晴嵐”三機の内、有人機は一機のみで残りは無線誘導の無人機であった。

 射出機から轟音を上げてとびだった“晴嵐”は偵察行動に入る。


 15分後、航空科から連絡が入る。


「ウルシー環礁に米国機動部隊が集結している? マリアナ諸島は確認できる限りでは日本国旗がはためいているか。ふむ、どうやらこの時代はマリアナ沖海戦前の世界だな」


 日下は引き続き、日本の方を偵察するように命令する。

 “晴嵐”は機首を翻して日本の方角に消えていく。


「艦長!! イースター島南方50キロ海底で大規模な海底地震をキャッチしました! 推定マグニチュード10以上! 測定不可能の規模です! これから間隔を置いて次々と連続で地震が発生するかと」


 航海科から突然、緊急無線が入る。


「被害想定及び日本本土に影響するかどうか計算しろ!」


「既に実施中……出ました! まずいですね、このまま地震が続けば昭和初期に起きたチリ地震規模以上の被害が日本沿岸を襲います! 震源地下には測定不能の歪みが溜まっていますので後、2回目の地震が発生した時の威力が破局噴火クラスです」


 司令塔にいる日下以下の乗員達の顔色が変わった時、吉田技術長が会話に参加して話す。


「つい先日、改造終了したのですが莫大なエネルギーを吸収する装置が付いた魚雷がありますがそれを使いますか? 試験を飛ばしていきなり本番ですが?」


「その威力はどれぐらいですか?」


「ツアリーボンバー級の威力数千億倍のエネルギーを相殺できます。この魚雷を震源地に打ち込んで起動させれば。まあ、最も前の世界からの頂き物をちと改良しただけですけど威力は保証します」


 日下は直ぐに実施するように命令すると吉田が頷いて船内電話で装填するように伝える。


 数十秒後、“MC400魚雷”が一番管に装填されると共にスーパーコンピューター“桜花”により瞬時に情報が魚雷管制室に送られて魚雷に情報が入力される。


「発射準備完了!」

「よし、発射口開放!」


 船首魚雷発射口が開くと信号がCICに送られていき青ランプが点灯する。

 武器管制装置解除のシルエットをタップすると魚雷発射許可のランプが点灯する。


「発射します!」


 徳田が目の前の機器に付いている発射ボタンを押すと圧縮された空気が一気に解放されて魚雷を押し出す。


 伊400から放たれた魚雷は自動で目標に向けてマッハ2の速度で向かっていく。


「完全な人工知能搭載ですので一度、インプットすれば自動で目標に到達します。マイクロ小型核融合炉を搭載していますのでほぼ無限に」


 無言で頷く日下であった。

 魚雷はそのまま爆走していくが第二回目の海底地震が発生する。


「三回目の破局噴火クラスのエネルギーが放出されれば巨大津波が日本各地の沿岸を襲います」


 日下はスクリーンに映し出されている魚雷のシンボルを眺める。

 順調に目標地点まで爆走していく。


「後、約一時間か……」


 日下が腕時計に目を向けて確認すると航空科から連絡が入り横須賀港に大艦隊が出港準備に入っている事を報告してくる。


「映像に切り替えます」


 スクリーンに展開する映像には無数の連合艦隊が停泊していて出港準備だということが分かる。


「おお……大鳳・瑞鶴・翔鶴がいるぞ! いつ見てもいいな」


 暫く映像を眺めていると一時間は早く過ぎて航海科から間もなく着弾しますとの報告が入る。

 魚雷はそのままマッハ2の高速で震源地に突っ込んで爆発する。


「……成功です!」


 5分後、完全に地震エネルギーを吸収した事が確認されると艦内の至る所で歓声が沸き起こる。


 艦内の全員がモニターから目を離して拍手していたがモニターには、脆くなっていた海底地殻を何かの物体が突き破って海底に踊りだしてそのまま去っていくがそれを誰も認識していなかったのである。

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