『猫鳴踏切』あるいは『踏切で猫が鳴くと』

佐倉真理

猫鳴踏切について

 私の住んでいた家の近くには猫鳴踏切と呼ばれるスポットがある。

 ……おそらく呼ばれ始めたのは私の世代か少し前あたりからだろう。その頃、ネット怪談やそれを取り上げたテレビ番組が流行して、杉沢村や犬鳴村といった村に纏わる怪談が取り上げられることが多かったから。

 流行りの犬鳴トンネルや犬鳴村になぞらえて猫鳴。正直言って安直なネーミングだ。

 踏切は駅から5分ほどの位置で周辺には飲食店や美容院が立ち並んでいる。通学路にもなっていて人の出入りは多い。いかにも怪談の現場、というような場所ではなかったし、そもそものところ猫鳴踏切と呼ばれるに至った理由もそう大したものではなかった。

 夜、誰かが歩くと必ず猫の鳴く声が聞こえる。

 私の聞いた話では、ただそれだけの場所だった。怪談とも言えない。流行の怪談になぞらえて誰かが面白おかしく呼んだだけなのだと思う。

 しかし、私にはこの場所にちなんだ印象深い事件があった。それも小学生と大学生になってからの二回も。



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