聖女は女神の断罪にわらう

伊狛美波

1話

 太古の時代、『アテシエ』という王国が存在していたそうだ。

 その時代のアテシエについて書かれた書物、アテシエとされる土地……ありとあらゆる証拠がないため人々からはお伽の世界の国と言われている。


 ところで、話は変わるが。


 この世界には万物の始祖、女神アテシエがいる。

 慈しみ深く、信仰心の厚いものには死後なんでもいうことを聞いてくれるとすら言われている女神だ。

 信仰心の厚い最たる例である聖職者は布教活動も熱心であり、各国の教会には毎日人が絶えず訪れる。

 小神殿にいる聖職者はこう言う。


「熱心に活動すればするほど、女神アテシエに愛されるのだ」


 と

 しかし、大神殿にいる聖職者はこう言う。


「熱心に活動すればするほど、女神アテシエに嫌われないのだ」


 と

 後者のことを言った者たちは何処か虚な目をしていた。

 そして彼らは付け加える。


「アテシエを繰り返してはいけない」


 と


 大神殿の一部の聖職者者しか知らないこの言葉。


 それは、民衆にはお伽の国と言われている、アテシエ王国に起きた事を指す言葉であり、大聖女誕生と一国が滅ぶまでのたった15年間を指す言葉である。

 女神アテシエを崇める事を忘れた者たちに女神が行った15年にわたる断罪であった。

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